僧侶のかっけいです。
私の住む香川県はここ数年、訪日外国人(インバウンド)が急増しています。伸び率は全国最多で、5年間で11倍以上も増えています。しかし地方の一寺院や知名度の劣る観光場所では、その訪日外国人の恩恵を全く受けていません。
香川県に来る外国人の8割近くが東アジア諸国からです。なかでも中国・台湾・韓国・香港からが訪れる人が多い状況です。
少し前に「インバウンドの増加から地方のお寺ができること」と題して、地方の各寺院ができることを考えました。英語よりも中国語や韓国語のホームページを作成し、ガイドブック以上に寺院や地域のニッチな魅力をアピールしていくことができるのではないかということを紹介しました。
しかしいざ中国語ホームページを作ろうとしますと、他の多言語サイトよりも非常に難しいことが分かってきました。
なぜ中国人に向けた中国語のホームページ作成が難しいのかを説明します。
- 中国語には言語種類が複数ある
- 中国では日本のウェブサイトが検索しにくい状況
- 中国からの表示速度は遅いこともある
- まずは繁体字での公開に取り組むべきか
中国語のホームページが失敗する理由
日本人が多言語サイトを作る時、まず一番気になるのが自身の語学力が不足していることでしょう。
でも正直なところ、語学力が不足していても簡単な文章でもいいので、詳しく単純に説明すればギリギリ伝わります。
実際、私は英語が満足に使えませんが、とあるブログ記事で検索順位7位ぐらいになり一日60PVくらいあります。1位から6位までの記事よりも詳しく書けていると自負しているのですが、この順位になっているのはおそらく違和感だらけの英語の文章なのでしょう。
中国語ができなくても、最近は翻訳サイトの精度も向上していますので、語学力不足はカバーできます。
問題はもっと別のところにあります。
中国語には複数の言語コードがある
私はいまある日本語のページを中国語に翻訳しようとしました。
しかし中国語には複数の言語コードがあることがわかりました。
有名なのが簡体字と繫体字の2種類ですね。簡体字は中国大陸で標準的に使われている文字です。一方で繫体字は台湾や香港で使われている文字です。これを言語コードにすると次のようになります。
- 繫体字向けウェブサイト:html lang=”zh-TW”
- 簡体字向けウェブサイト:html lang=”zh-CN”
zhとは中国語のこと。CNとは中国大陸、TWとは台湾ということです。
ここをしっかりと指定しないと、中国語で文章を書いても正しく中国語のウェブサイトと検索されません。
もっと詳しく設定するならば、
- 台湾向けの繁体字国語サイト:html lang=”zh-cmn-Hant-TW”
- 中国大陸向けの簡体字国語サイト:html lang=”zh-cmn-Hans-CN”
となります。cmnは公用語のことで、HantとHansは繫体字と簡体字のことです。
一概に中国語に訳すと言ってもただ翻訳するのではなく、言語コードと地域コードをきちんと決めなければなりません。これが香港やシンガポール向けになると、また別の中国語として設定する必要があります。
中国大陸からは日本のホームページは検索されにくい
言語コード・地域コードが正しく設定できたとします。
これで安心して自分のホームページが中国大陸から検索されると期待するでしょうが、実際にはうまくいきません。
理由はいろいろあります。
- 中国はGoogle検索が使えない。独自の検索エンジンがある
- 金盾という独自の検閲システムがある
中国はインターネット規制が厳しい国です。自国にも厳しいですが、外国のホームページも閲覧するのが難しいです。
世界各国の検索エンジンはGoogleが主要です。アジア諸国でも韓国と中国を除くと9割以上の使用率です。特に中国ではGoogleの検索エンジンが使用できず、独自のBaidu(百度)がメイン検索エンジンとなっています。
中国版の検索エンジンで言葉を検索すると、諸外国と比べて少ない検索結果が返ってくることがあります。
金盾は中国政府にとって悪影響を与える情報を監視遮断しているとされます。例えば政治的なこと・宗教的なことに関する言葉が対象となることもあります。また動画サイトも対象となりやすいそうです。
またBaidu(百度)はあまり日本のホームページを優遇していないように感じます。
例えば「香川県」で調べてみます。
Baiduで香川県を調べますと、1番上に中国版ウィキペディアのような百度百科が表示され、2番目に香川県の公式ホームページが出てきます。
これがGoogleだと、1番に香川県の公式ホームページ、2番目にウィキペディアになります。Googleはきちんと公式ホームページを優遇していますが、Baiduはそうではないように感じます。
また検索結果の数を見ても、Baiduは35万3000件の検索量に対して、Googleでは2億近くも検索しています。
香川県よりもニッチな丸亀市の観光場所「中津万象園」で検索すると、Googleは公式ホームページを一番に表示しますが、Baiduではかすりもしません。(当然私のホームページ・ブログもヒットしません)
中国大陸からは日本のホームページは検索されにくいでしょう。一方で、香港や台湾ではGoogle検索が使えますし、金盾の検閲システムもありません。
そのため中国大陸向けの簡体字サイトよりも、台湾・香港向けの繫体字サイトを作るのも手でしょう。ただし簡体字使用人口は13億人もいるのに対して繫体字は3000万人ほどです。およそ40倍も言語利用者に差があるので、なかなか繫体字でホームページを作成しようという気持ちにはならないかもしれません。
中国からのホームページの表示速度が激遅い
中国から外国のホームページにアクセスしようとすると、表示速度が恐ろしく遅いことがあります。
日本へのホームページの表示速度が遅いのは、別に中国に限ったことではありませんが、中国では独自の検閲があるので、遅く表示される可能性が高まります。
じゃあどうやって中国からアクセスされるように、表示速度を改善すればよいのだろうか。
- サーバーを中国におく
- ホームページにAMPを導入する
自社のホームページを作成する際、サーバーが必要になります。
サーバーというのは自分のホームページ・ウェブサイトのデータ情報を預けている土地のようなところで、インターネット利用者はこのホームページの情報を見たいなあとリクエストすると、サーバーから必要なデーターが送られます。
そして重要なのが、ホームページの表示速度も「サーバーの物理的な位置に左右される」ということです。
例えば日本人なら日本のレンタルサーバー会社に登録するのが一般的でしょう。それは閲覧者・利用者が日本人なので、日本からの表示が最も早くなるからです。わざわざアメリカや中国に設置されているサーバー会社とは契約しません。
利用者(中国)とサーバーの物理的な距離(日本)が遠い場合、それだけ通信の中継点などが増えることにより、速度が遅くなります。
表示速度を改善する一番の方法は、サーバーを中国本土に置くことです。
しかし現実的には不可能とも言えます。理由は中国でサーバー契約を結ぶには、中国人身分証番号や現地法人の登録が必須になるからです。日本人ではほぼ無理です。
じゃあどうすればよいかと言えば、私はAMP(Accelerated Mobile Pages)を導入することを考えています。AMPとはモバイルページ(携帯電話やスマートフォンからのウェブページ)の表示を高速にすること。
日本は世界でもトップクラスに通信速度の速い国なので、表示の遅さは気になりにくいでしょう。しかし世界の国々では2Gや3G回線がまだまだ多く、通信速度も通信量もいまいちです。
AMPを導入すれば表示速度が改善される可能性があります。
例として、私のホームページから、もっとも外国からのアクセスが多いAMPと非AMPの同一のブログ記事の平均読み込み時間を示します。
検索している国のメインがアメリカからのページです。(日本からは5%ほど)
AMP対応していると約2秒で読み込んでいますが、AMPに対応していない場合は約10秒で読み込んでいます。
多言語サイトを作成する時は、表示速度の改善のために、その言語利用者の国にサーバーを設置するのがベストでしょうが、AMPに対応すれば日本国内のサーバーであっても高速表示できるかもしれません。
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多言語サイトを作るのは一苦労
多言語サイトを作るのはかなり労力がいります。
私は中国語のホームページを作りたいなあと最近思い立っており、これまでに英語版のブログ記事をちょっとずつちょっとずつ作っているので、同じようにできるだろうと高をくくっていました。
実際英語のサイトでも、文法が正しくなかったり表現力が乏しかったりと、思った以上のアクセス数は見込めません。
中国語ではそれ以上に、中国独自の検索システムや閲覧制限や表示速度の遅さがあり、成果を感じられない可能性も大いにありえます。中国語のホームページは前途多難な状態です。
小さな一個人、地方の一事業が多言語サイトをつくり、インバウンドの恩恵にあずかろうと思ってもなかなか難しいのかもしれません。
また日本に訪れる外国人ら(特に東アジア諸国の人)が、いったいどんな疑問・興味をネットで調べているのかもわかりません。自分の好きなことをただ書くだけでなく、インバウンドが興味をもっていることを伝えることも重要でしょう。
なお私が利用しているブログソフトウェアはワードプレスです。ワードプレスには多言語化対応できる無料のプラグインが数多くあるので、多言語サイトを作る手段には困りません。私はBOGOというプラグインを利用しています。日本人にとって扱いやすくて助かっています。
多言語サイトは業者に依頼すると、高額になったり自由な運営ができなくなったりするので、苦労したとしても自分の手で少しずつ多言語に対応していくべきでしょう。今思えば学生時代にもっと語学を真剣に学んでいたらなあと感じます。
追記。簡体字よりも繁体字から取り組むべきか
中国のインターネット利用人口は8億人以上と言われます。
であれば多くのアクセス数を見込むために、中国本土で使われている簡体字でホームページを公開したいと考えたくなります。
しかし中国のサーバー会社や中国のウェブサービスを利用しなければ、なかなか中国の検索システムでは検索上位に表示されにくいです。(特にグーグルフォントやグーグルの各種サービスを導入しているとかなり不利)
むしろ繁体字の台湾や香港に向けて公開したほうが、何倍もアクセス数を見込めそうです。
有名なウェブサイトを例にすると、伊勢神宮や久能山東照宮では外国人参拝者の増加に伴い、中国語(繁体字)ホームページを公開しています。これらは簡体字では公開していません。
台湾(繁体字)と中国(簡体字)から「東京」を検索すると10倍以上、繁体字の方が検索されているようです。
多言語化を目指すなら、まずは繁体字を取り組み、次いで簡体字の方がいいかもしれない。