かっけいです。著者瀬川一郎の「猫の数勘定」という本を読みました。
この本は著者初の随筆集(エッセイ集)であり、四国新聞読書文芸に入賞された作品43編を中心にまとめてあります。
本の帯紙には次のようにあります。
「そこはかとないユーモア」
「瀬川ワールド」
「読んで楽しい随筆」
四国新聞で何度も掲載されていますので、目にしたような作品もありました。それに加えて読みやすい内容でもあったので、あっという間に読み終えてしまいました。
本の構成
前書きによると、筆者は父が亡くなったことを機縁に新聞の読書文芸の随筆に興味が湧いたようである。
それ以来、毎月一編の随筆を続け15年間に180編を四国新聞読書文芸に応募したようである。
きつい言い方をすればプロのライターやエッセイストが書いた本ではなくアマチュアの書き物ではありますが、180編の内で入賞作品と準入賞作品が計86編もあるのは、なかなかの読み物であることが言えるのではないでしょうか。
本の構成は筆者が入賞した年月順(2000~2016年)にまとめらており、筆者の心情や環境の変化を感じやすくなっています。
また一編は1200文字で完結されており、それぞれにテーマが決められていますので、どこからでも読み始めることができます。
読み終えての感想
実は私は進んでこの本を読んだのではありません。
私の知っている人から「今度、知り合いが本を出すそうだから読んでみて」と勧められたからです。
聞くと著者も私と同じ香川県に住んでおり、また多度津と非常に近くに住んでいました。
本には香川の地名・場所がふんだんに登場してきます。同じ香川で生活している者同士、読みやすい内容でした。(著者の書き方が優れているからかもしれませんが。)
本書は随筆(エッセイ)です。
そのためこの本を読むことによって、効率的に知識を得るものではありません。
しかし著者瀬川一郎が父の死を経験し感じたこと(体験談)をこの私が読むということは、筆者の感じた貴重な体験を心情を絡めながらこの私にも何か共感であったり、考えさせることを与えてくれます。
例えば本書第1編「無言のメッセージ」には次の文があります。
無言の行為は時として言葉以上に印象深いメッセージになるのだと思う。
「無言の行為」については本書を読んで確認してほしいのだが、父の死を通して著者が感じた強い思いが感じられます。
特に私たちは言葉・文字を使って他人に伝えようと努力します。
しかし必ずしもそれ以外の手段、無言の行為によっても、強烈な意思を相手に伝えられるのではないだろうかと考えさせられる。
続けて第2編は本書タイトルの「猫の数勘定」が題となっています。
内容は猫がどれほどの数を数えられるだろうかというものである。正直内容はまったくない。
しかしこれが帯紙に書かれていた「瀬川ワールド」であり、母親猫と子猫のエピソードを通して、読み手に考えさせらることがあります。(人によって感じ方は違うでしょうが)
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さいごに
本書は非常にボリュームがあります。
掲載作品集は67編もあり、イラストも込みですが200ページ以上もあります。
どこからでも読み始めることができスラスラと読み通すことができる内容ではあるのですが、いざ著者の伝えたかったことを考えますと時間があっという間に過ぎていきます。
随筆集であり、筆者の身の回りの出来事がコンパクトにまとめられています。
そのため得られる知識は少ないでしょう。
しかし著者の思い・考えがそのまま表れた文章を読むことで、知識だけではない共感や知恵というものを得られるかもしれません。
話変われば、私は浄土真宗のお坊さんです。著者の行動や心情が私の中での常識とは違うところがあり、それを感じることができたのが面白かった点でもありました。