真宗興正派僧侶のかっけいです。
浄土真宗の基本的な仏壇のお飾りを紹介します。ここでは興正派を例に挙げますが、基本的なお飾りは浄土真宗各派よく似ています。
平常時と法要時の仏壇の飾り方をイラストで紹介
次に示す仏壇の飾り例とイラストは真宗興正派勤式研究会が監修したものです。
基本的な仏壇の飾り方ですので、絶対の飾り方ではないです。これを元にアレンジしてください。
- 日常のお飾りは三具足(花瓶・香炉・ロウソク立て)の配置。
- 法事法要では打敷+五具足(花瓶・ロウソク立て・香炉・ロウソク立て・花瓶)の配置。
浄土真宗では三具足と五具足を使い分けます。具足の意味についても書きました「具足の意味とは。配置についても説明」
平常時の仏壇の飾り方。3具足が基本
①華鬘(けまん)
②戸帳(とちょう)
③火舎(かしゃ)
④華瓶(けびょう)
⑤仏飯器(ぶっぱんき)
⑥上卓(うわじょく)
⑦瓔珞(ようらく)
⑧金灯籠(かなどうろう)
⑨輪灯(りんとう)
⑩華束(けそく)
⑪高卓(たかじょく)
⑫花瓶(かひん)
⑬蝋燭立(ろうそくたて)
⑭土香炉(どごうろ)
⑮金香炉(かなごうろ)
⑯香炉(こうろ)
⑰香盒(こうごう)
⑱打敷(うちしき)
⑲経卓(きょうじょく)
⑳鈴(りん)
㉑過去帳(かこちょう)
㉒御勧章(ごかんしょう)
仏具の名称は興正派での呼び名ですので、派によっては名称が異なることもあります。(例えば御勧章は御文・御文章とも。また御勧章をお飾りしない派もあります。)
法要時の仏壇の飾り方。5具足+打敷で豪華に
①華鬘(けまん)
②戸帳(とちょう)
③火舎(かしゃ)
④華瓶(けびょう)
⑤仏飯器(ぶっぱんき)
⑥上卓(うわじょく)
⑦瓔珞(ようらく)
⑧金灯籠(かなどうろう)
⑨輪灯(りんとう)
⑩華束(けそく)
⑪高卓(たかじょく)
⑫花瓶(かひん)
⑬蝋燭立(ろうそくたて)
⑭土香炉(どごうろ)
⑮金香炉(かなごうろ)
⑯香炉(こうろ)
⑰香盒(こうごう)
⑱打敷(うちしき)
⑲経卓(きょうじょく)
⑳鈴(りん)
㉑過去帳(かこちょう)
㉒御勧章(ごかんしょう)
平常時と法要時のお仏壇の飾り方の違いは、より豪華にご仏前を彩ることです。
果物やお餅、乾物といったお供え物のボリュームを増すことは当然の事、「花瓶・香炉・蝋燭立て」の3具足から「花瓶・蝋燭立て・香炉・蝋燭立て・花瓶」の5具足に変化したり、打敷をお飾りしお浄土の荘厳を表現します。
ちなみにですが、経卓(経机きょうづくえ、とも)はお経文を置くための場所ですので、お花や蝋燭や香炉は本来置くことができません。
お飾り(荘厳)の各種解説
【御本尊(正面に掛ける仏さま)】
- 御本尊は阿弥陀如来のご絵像、もしくは六字名号(南無阿弥陀仏)
- 脇掛は向かって右に十字名号(帰命尽十方無碍光如来)、もしくは親鸞聖人御影
- 向かって左に九字名号(南無不可思議光如来)、もしくは本寂上人御影(他派ならば他派の中興の祖)
- 御本尊は仏壇屋ではなく本山からお迎えすること。
【お仏飯】
- 絵像に朝お供えし、昼までにお下げして私たちが食べます。
- 名号にはお供えしません。
【ろうそく】
- 平常時(日常のお勤め)では白い蝋燭を用いますが、法事法要では朱蝋(赤い蝋燭)をお供えします。
- 真宗興正派では一周忌から赤い蝋燭も使いますが、派によっては3回忌や7回忌からと異なる。
【花】
- 四季の花をお供えするように心がける。
- トゲや毒、悪臭のある花は仏花には用いない。
- 華瓶(けびょう、御本尊前の小さな花瓶、一輪挿しとも)には、樒(しきみ)などの青木の小枝を用います。
- 造花は駄目です。
【香】
- 線香は土香炉に、立てずに横に寝かせます。
- 線香の長さが土香炉に納まらないときは、線香を折って横に寝かせましょう。
- 抹香(粉末状のお香)は金香炉に炭を入れて、額にいただかずに2回焼香します。(派によって焼香の回数は異なります)
【供物(お供え)】
- お飾りの調和を乱さないようにお供えします。
- 平常時はお供物の量を抑えても問題はありません。
- 法事法要時には豪華にお飾りしましょう。
- お水はコップに入れて供えない。「水を供えない理由」
【打敷】
- 打敷は法事法要といった無くても改まった丁寧なお仏事の時にお飾りしましょう。
- 平常時には無くても問題はありません。
【過去帳】
- 浄土真宗では亡くなった人の法名・俗名・命日年齢などを過去帳に記します。
- 地域によっては繰り出しの位牌を用いています。
- 浄土真宗では位牌ではなく過去帳が正式です。
【早見表】場面ごとの飾り方と水引の色
各お勤めの場面ごとのお飾りの仕方を表にまとめました。宗派や地域ごとによって差はあるでしょうが、だいたいこんな感じです。
葬儀や中陰の時は、白色または銀色の打敷を使います。(しかし多くの場合、打敷を裏返して代用されています)
また朱蝋燭は主に年忌法事といった大切なお勤めで用いますが、宗派によって違います。例えば本願寺派では7回忌より朱蝋燭を使います。一方で興正派や大谷派は一周忌より使います。年忌法事の場合は、赤と白のロウソクを両方出していればお坊さんが使い分けてくれるでしょう。
水引の色は宗派の規定がないことが多いです。多くの場合、その地域の慣習でなんとなく色が使い分けられています。
真宗興正派では弔事の時は「黒白(銀白)」、その他は「赤白(紅白)」とされていますが、実際には黄色の水引を使っている人が多い印象です。
各番号、仏壇のお飾り(荘厳)について説明した私の記事
①②仏さまに一番近い仏具「華鬘」と「戸帳」について
あまり知られていない仏具。【華鬘】と【戸帳】についての説明。(2017年7月5日記)
内容:華鬘は「華で飾られた髪飾り」という意味がある。戸帳には金襴があしらわれており、華鬘と戸帳は二つセットで須弥壇の一番上に安置している仏さまの空間を表現している。
⑤お仏飯をお供えする数についてと、お仏飯の盛り方・作法について
真宗の御本尊には御仏飯を2つ(1対)供えるのを知っていますか。(2017年4月2日記)
内容:正面に安置している阿弥陀仏の木像や絵像にお仏飯はいくつお飾りするでしょうか。一般家庭のお仏壇では一つでしょうが、お寺では仏飯器が2つ用意されています。それはなぜか。
浄土真宗における正しいお仏壇でのお仏飯の作法・盛り方などを紹介。(2017年8月8日記)
内容:お仏飯の盛り方には円柱形の蓮実形と山なり形の蓮莟形の2種あります。宗派によってどちらを使うのか決められていますが、真宗興正派ではどちらの盛り方も用いています。ここでは蓮実形と蓮莟形の使い分け方と、盛り方、そしてどこにお仏飯をお飾りすればいいのかを説明します。
⑱打敷はいつ飾るのか。法事法要の時だけ飾ること
打敷の飾りは法事法要の時だけ!普段は片づけとこうね。(2017年12月16日)
内容:一般家庭のお仏壇では打敷は一年中飾りっぱなしのことがあります。しかし打敷は法事や法要をより厳粛な雰囲気にする仏具であり、仏さまのお浄土の様子を表すものです。そのため正しくは日常時は仕舞っておき、法事法要の時だけお仏壇にお飾りします。
⑳鈴(りん)を鳴らすのはお勤めの時だけ。合掌礼拝時には鳴らさないこと
浄土真宗では仏壇のお参りの時に「おりん」を鳴らさないよ。(2016年12月6日記)
内容:例えば皆さんが法事にお参りに行きますと非常に多くの人がお鈴(おりん)をチンチ~ンと鳴らして手を合わします。
しかしこの行為は浄土真宗的には間違いです。なぜならお鈴とはお勤めをするときにだけ音を響かせる仏具なのですから。
㉑位牌の代わりに過去帳を使うのが正式
浄土真宗では過去帳をお仏壇にお飾りする(2018年5月2日記)
内容:お仏壇にはしばしば位牌が飾られています。故人の法名(戒名)などが記されていますね。
しかし浄土真宗では位牌や故人の霊魂に対して拝むことはしません。位牌の代わりに過去帳に故人らの記録を残します。
㉒お仏壇横の箱には蓮如上人のご法話のお手紙が納められてます
浄土真宗のお仏壇横には黒い箱がありますね。非常に大切な物が入っているんですよ。(2017年8月23日記)
内容:浄土真宗のすべての派共通のお飾りではありませんが、浄土真宗本願寺派や真宗大谷派、真宗興正派などでは本堂の余間にお飾りしていたり、一般家庭のお仏壇でも向かって左側に黒色の箱が置かれていることがあります。この箱の中には本願寺8代目住職の蓮如上人のお手紙が収められています。浄土真宗の一部の派では、お勤めの後に拝読をして蓮如上人からのご法話として聞きいただきます。
その他、お仏壇に関することを説明した私の記事
報恩講の時のお仏壇の飾り方について
報恩講さんのお仏壇のお飾り・準備(2017年10月31日記)
内容:報恩講とは浄土真宗の宗祖親鸞聖人のご命日を偲ぶお勤めです。お坊さんは報恩講の時期になりますと各御門信徒のお仏壇にお参りしていきます。ここでは報恩講の時のお仏壇のお飾りの仕方と報恩講のお参りがどんな進行で進むのかを紹介しています。
お仏壇にお参りする時には正座じゃないと駄目なのか。椅子に座ってもいいのか
法事と正座と足のしびれ(2017年11月30日記)
内容:「法事=正座」というイメージが非常に強いと思います。しかし最近ではお参りの高齢化のため骨がこすれて痛く正座ができない人や、若い人では正座に慣れておらずそもそも正座とい座法ができない人もいます。ここではなぜ法事の席で正座が勧められているのかという理由と椅子でのお参りについても説明します。
お坊さんのために仏壇に用意するのは座布団がよいのか椅子がよいのか(2017年8月9日記)
内容:お寺の法要にお参りしますと最近は参拝席側だけでなく、お坊さんの座る内陣側にも椅子席が用意されていることがありますね。またご門徒さん宅のお仏壇にお参りに行きますと椅子が用意されていることがあります。お坊さんには座布団がいいのでしょうか、それとも椅子が良いのでしょうか。私なりの考えを書きます。
お寺の法要で椅子を用意するメリット・デメリット。畳との相性は悪いように感じた(2017年9月9日記)
内容:自坊円龍寺でも椅子席を徐々に増やしています。2017年の秋季永代経法要に合わせて椅子を増やしました。その結果感じたメリット・デメリットについて記しました。
お仏壇にお参りする時はお香を焚くのはなぜか。ロウソクをつけるのはなぜか
仏様参りの時にお香をお供えしていますか。お香の役割を紹介(2017年5月17日記)
内容:お仏壇にお参りする時にはお線香に火をつけますよね。また葬儀や法事では焼香をしますね。なぜ仏さまにお参りする時はお香を焚くのでしょうか。お香の役割について説明します。
仏壇のローソクに炎を灯していますか。なぜ明かりが必要なのでしょう(2017年5月15日記)
内容:最近ではお参りに行ってもロウソクを用意していない家がちらほら見受けられます。中には電気のロウソクに変えており、電球が切れており明かりを灯せないこともあります。仏さまにお参りする時には「お香・お光・お花・お供え」のお飾りが基本です。
法事に赤色のロウソクを忘れている家が多いこと。どんな時にお飾りするのか
法事には赤いろうそくを準備しましょう。真宗僧侶が赤の意味を説明します(2017年10月19日記)
内容:お蝋燭(ろうそく)の色は白いロウソクが一般的ですよね。ですが浄土真宗では赤い色のロウソクもしばしば使います。ここではどのような時に赤い色のロウソクを使うのかを説明します。ただし派によって使うタイミングが違っていますので、そこだけは注意してください。
お仏壇のロウソクや線香は誰がつけるのか
仏壇の蝋燭や線香はお坊さんか家の人、どちらがつけるか知っていますか(2017年8月5日)
内容:お参りに行きますと、お勤めが始まる前に家の人がササッと仏さまへのお光を灯しにいこうとしてくれます。しかし家によってはお坊さんが代わりにつけることもあります。
お仏壇にお飾りするロウソクは短すぎるのはやめてほしい話
お坊さんにとって法事や祥月命日に短いローソクだとちょっと困る話(2017年7月6日)
内容:浄土真宗のお勤めって結構時間がかかるんですよね。もちろん地域によっては読経時間が短いこともあるでしょうが、私の住んでいる所では法事だと一席30分くらいはかかります。短いお蝋燭だと20分~30分程度で消えてしまうので困ってしまいます。
造花を仏さまにお飾りしてもよいのか
仏花に造花は駄目なの?真宗お坊さんがお答えします(2016年10月22日記)
内容:お仏壇には生花をお供えするものなのですが、最近では造花をお飾りする家が増えているように感じます。お坊さんに造花でもいいのかどうか尋ねられる人はまだお気持ちがあるのでしょうが、黙ってさも当然のように造花を置きっぱなしの人もいます。なぜ仏さまにお供えするお花が生のお花でないといけないのか説明します。
浄土真宗ではお仏壇が必要なのか
真宗におけるお仏壇の必要性(2017年6月12日記)
内容:お仏壇を持っていない家庭は5割~6割程度あるようです。実際、家に亡くなった人がいないとお仏壇を用意しようという気持ちにもならないのでしょう。お坊さん的にはお仏壇をぜひ設置してほしいのですが、ここでは要不要について書いてみました。
さいごに。お仏壇は家庭の中心
現代ではお仏壇を設けている家庭が少なくなってきています。
年忌でもないのにお仏壇を家に設置すると、家族に不幸があったり死人が出るといった根も葉もない迷信があるほどです。
正しくは家を建てた時にお仏壇を迎えてください。そして御本尊はご本山より迎えてください。
お仏壇とは仏さま(御本尊)を安置し、お寺に行けなくても毎日の生活の中で仏さまに向き合い感謝する機会をいただける空間です。
お仏壇は仏さまを安置しているお寺の本堂内陣の空間を表現し、お寺の本堂内陣はお浄土の様子を表しています。
ここではお仏壇のお飾り方法を真宗興正派勤式研究会の図と私の補足説明で紹介しました。しかしこれはあくまで基本的なお飾り例ですし、派によって微妙な違いがあります。
正しいお仏壇のお飾りを知るという気持ちも大切ですが、忘れてはならないことは、仏壇は家庭における信心の拠り所であり、亡き人や仏さまを偲ぶ空間であるということです。お浄土の空間を目に見える姿で表現したお仏壇に埃がかぶったり、ごちゃごちゃした乱雑な雰囲気の空間にならないように注意しましょう。(細かい作法が分からなくなっても問題ありません。仏さまにお給仕させていただいているという気持ちを持っていただけたらなあと思います)