香川県の有名な観光地と言えばどこがあるだろうか。
- 栗林公園
- 金刀比羅宮(こんぴらさん)
- 小豆島オリーブ公園
- さぬきこどもの国
- ニューレオマワールド
などが挙げられるだろう。特に栗林公園は年間70万人もの人が訪れる、香川県でトップクラスの観光名所となっている。高松市の街中にありアクセスしやすく、大名庭園を味わえるのが人気なのでしょう。
一方で、丸亀市にも中津万象園という大名庭園があるのをご存知でしょうか。讃岐(香川県)の西部を治めた京極家の庭園です。

ここでは、中津万象園の魅力を紹介していきます。
栗林公園と中津万象園の比較
栗林公園 | 中津万象園 | |
場所 | 高松市栗林町 | 丸亀市中津町25-1 |
年間入園者数 | およそ70万人 | およそ5万人 |
築庭者 | 高松初代藩主 松平頼重 | 丸亀2代藩主 京極高豊 |
築庭 | 1745年 5代藩主松平頼恭 | 1688年 5代藩主京極高中 |
庭園の広さ | およそ16ヘクタール 中津万象園の約3倍 | およそ5ヘクタール およそ1万6千坪 |
駐車場 | 有料のみ | 無料の駐車場 |
定休日・開園日 | 年中無休 | 毎週水曜日 |
開園時間 | 時期によって異なる | 午前9時30分~午後5時 |
食事処 | ガーデンカフェ栗林 (庭園内) | 懐風亭 (庭園外) |
中津万象園の見どころ
中津万象園は、丸亀京極家二代藩主の京極高豊(きょうごくたかとよ)が、中津別邸として築庭したのが始まり。
丸亀城は丸亀市の街中にあるお城です。現存する12天守の1つであり、石垣の名城として知られています。

- 日本一小さい天守
- 日本一高い石垣
- 日本一深い井戸
こんな特徴をもつ丸亀城を治めていた京極氏が別邸としてつくったのが、およそ3キロメートル離れた位置にある中津万象園です。中津万象園は1968年、四国新聞社選定の「さぬき百景」に指定された県内の景勝地です。
池の周りを歩く回遊式の大名庭園
中津万象園は栗林公園と同じく池の周りを歩く、池泉回遊式大名庭園となっています。
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庭園の中心にある池は、丸亀藩主京極家のふるさとである、近江の国(滋賀県)にある琵琶湖をイメージしています。池には近江八景を模して、8つの島が浮かび、それぞれが橋でつながっており、池の周りだけでなく、池の中の島々も散策できます。
8つの島にはそれぞれに名前があります。それぞれの島には橋がかかっているが、橋のデザインがすべて異なっており遊び心を感じられます。

特に「雁の島」へ渡る、飛び石の水蓮橋はスリルがあって楽しいです。
1時間程度の短い所要時間でゆったりと楽しめる
中津万象園は栗林公園と違い、来園者数が少ないです。そのため庭園内の人の姿もまばらなため、落ち着いた雰囲気の中、日本庭園の美しさを純粋に楽しめます。
一周がおよそ1キロメートルであるため、庭園散策するのにはちょうどよい長さであると思います。もちろん休憩するポイントも各所にあります。
一周の観光時間はおよそ30分ほどだか、池の周りを歩く外周ルートと、島の中を歩く内周ルートを2度楽しめます。

庭園を一望できる邀月橋

邀月橋(ようげつばし)は中津万象園にある最大の橋です。
「邀」には招くという意味があり、太鼓橋の邀月橋は月を迎える橋の意味があります。中秋の名月(月見の宴)ではこの橋から美しい月が望めます。
庭園を一望できる橋でもあり、絶好の写真撮影ポイントとなっています。

邀月橋を渡った先には、三笠宮崇仁殿下の御手植えの五葉の松があります。

その先には、邀月橋をバックにした撮影場所が用意されており、記念撮影ができます。

直径15メートルの千代の傘松
名松100選に選ばれた「千代の傘松」という松が見どころのひとつです。

庭園内の案内板には次のような説明があります。
近江の美し松を300年の年月をかけ傘型に仕立てたもので、その芸術的な雄姿は限りない生命の象徴であろう。樹齢600年直径15mにも達す、刈込み時には枝の上下に庭師を配し、呼応してそれに対処する、年間枝葉の刈込みに30人もの手間を要す。

美し松とは京極家の故郷である近江の国(滋賀県)の天然記念物となっているアカマツのこと。 根本近くから枝が放射状に分岐した樹形はかなり独特な見た目をしている。

万象園には千代の大傘松以外にも、美し松が植えられています。
千代の傘松の北側には、母屋(茶室)がある。この建物には野村素軒の万象園の額が掛けられている。

江戸時代の中津万象園は中津別館や中津御茶所と呼ばれていたとされ、明治時代、書道・茶道に秀でた野村素軒が茶室の額に「万象園」と書いたことが、中津万象園の名前の由来とされます。(参考サイト:丸亀市公式サイト「市内に残る京極氏の遺跡」より)

万象園とは森羅万象を表す庭との意味があるとされます。
現存する日本最古の煎茶室「観潮楼」
中津万象園には、 江戸後期の初めごろに建てられた現存する日本最古の煎茶室があります。観潮楼(かんちょうろう)と名付けられ、 昭和50年に丸亀市指定の有形文化財となっています。

観潮楼(茶室)は高床式に造られており、周囲の松原や北に望む瀬戸内海の潮の満ち引きの風景を楽しむことができたのでしょう。
弁財天や稲荷分社、地蔵尊がまつられている
栗林公園と違い、中津万象園の庭園内には神仏がまつらています。
- 弁財天
- 伏見稲荷分社
- 石投げ地蔵尊
弁財天は京極家の藩祖の地である琵琶湖竹生島の弁財天、伏見稲荷分社は京極家が信仰していた京都伏見稲荷の神さま、地蔵尊は昔からこの地にあったお地蔵さま、これら3体の神仏をまつっています。


万象園内の神仏には、それぞれに福徳・御利益があるとされます。園内散策時には願掛けをしてはどうだろうか。

石投げ地蔵尊は、人々が願い事を書いた石を園外から投げ入れていたことに由来されています。(ちなみにかつての地蔵尊は1842年の大洪水で海に沈み、現在の地蔵尊は復元したものである)
島にある「魚楽亭」の東屋。

弁財天は竹生島のまつっているということもあり、島の中(鐘の島)に祠があります。筆海亭は月の島にあります。
魚楽亭からは築園からおよそ100年後に建てられたとされ、南の観潮楼を美しく見ることができます。睡蓮が咲く夏には水面が美しく彩られます。

魚楽亭から母屋の茶室を見ると「船付き」が正面に見えます。私の父が子供の頃は万象園の北は埋め立てられておらず、海と隣りあっていたと聞きます。ひょっとするとかつての万象園は海を行き来できたのかもしれません。
かつての万象園を図した「万象園真影」には島を渡るための橋が描かれておらず、きっと海から船で茶室に直接行けたのでしょう。
ちなみに栗林公園は池に和船を浮かべ周遊をしていますが、万象園ではしていません(橋があってできません)。
懐風亭で庭園を眺めながらの食事

中津万象園には味処「懐風亭(かいふうてい)」があります。栗林公園と違い、入園しなくても食事をすることができます。
2017年4月にリニューアルオープンし、すべての食事部屋が庭園側を望むようになりました。庭園散策の時間がなくても、食事しながら庭園の雰囲気を味わうことができます。
和食御膳のメニューですが、ランチは1000円から2000円程度とお手頃な値段となっています。

上のランチ写真は2019年5月の「平日限定松花堂」です。1000円でありながら美味しくボリュームのある食事でした。
無料の駐車場があるからアクセスしやすい
栗林公園と違い、中津万象園は無料の駐車場を完備しています。公式サイトによると、バス30台・乗用車100台がとめられるそうです。

万象園の南側、道路を挟んで反対の位置に駐車場があります。信号は渡らなければなりませんが、3分も歩きません。駐車台数は少ないですが、庭園正門入り口横にも5台ほどの駐車場もあります。(埋まっていることが多い印象)

中津万象園から3㎞離れた位置の、丸亀駅南側に「まるがめレンタサイクル」があります。入園の際、受付に自転車のカギを見せれば入園料が3割引きになります。

普通自転車のレンタル料は6時間まで200円とお手ごろな値段です。
月見の宴などのイベントが開かれる
旧暦8月15日、中秋の名月のころ、栗林公園では「観月会」が開かれています。ここ中津万象園でも毎年、中秋の名月のころ、「月見の宴」が開かれています。

2019年だけでも次のようなイベントが開かれている。
- 1月1日~:中津万象園「三社詣り」
- 1月19日:「お庭さん」と歩く中津万象園
- 3月2日:「森のガイドと歩く中津万象園」
- 3月9日~:丸亀美術館にて「大津絵展」
- 4月20日~:丸亀美術館にて「スペイン現代美術展」
- 5月18日:お庭さんと歩く中津万象園
- 7月28日:「こども写生大会」
中津万象園は大名庭園としての素晴らしさだけでなく、庭園内には丸亀美術館や野外広場があり定期的に催し物が開かれています。
中津万象園がつくられた理由
中津万象園はyoutubeに『お城と大名庭園「森羅万象/中津万象園」』を公開しています。
その動画には、次のような説明があります。
2代目藩主となった高豊が万象園を作った理由を記した文献は残っていません。しかし高豊が京極家の名品であるにっかり青江や仁清の茶壷から、「良きものはいつの時代にも滅びずに残っていく」ことを教えられ、万象園の創設に思い至ったのかもしれません。
お城と大名庭園「森羅万象/中津万象園」の8分22秒より
当時の高松藩の記録によると、民を不作による困窮から救う公共事業として、栗林公園を作ったとあります。時期を同じくして作られた万象園も、丸亀の民を救うための公共事業だったのかもしれません。
お城と大名庭園「森羅万象/中津万象園」の9分50秒より
また、京極高豊は自身の故郷や、先祖の思いを汲み取った京極家の故郷を形として残したかったのだと思います。
- 近江の島々を模した池をつくった
- 滋賀県の天然記念物となっている美し松を植えた
- 京極家が信仰していた伏見稲荷分社を構えた
- 京極家の藩祖の地である近江竹生島の弁財天を祀った
京極高豊がなぜ中津万象園をつくったのか、その理由は定かとなっていません。色々な思いが込められた庭園なのかもしれません。
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まとめ。中津万象園の良いところ。イマイチなところ
栗林公園の方が有名な香川の観光地となっています。しかし万象園も劣らない立派な大名庭園です。栗林公園と比較して良いところ・イマイチなところを挙げていきます。
- コンパクトな大名庭園だが、置き石や浮島や四季折々の植物と、変化に富んだ庭園散策ができる
- 1000本以上の松や桜やツツジなどがきれいに手入れされている
- 短い時間だがゆったりと美しい大名庭園を味わえる
- 庭園内には無料で入館できる陶器館や海望亭(うちわの里)がある
- 丸亀市民やレンタル自転車で来た人は、入園料の割引がある
- 庭園に入らなくても、食事処懐風亭から庭を眺めながら食事ができる
- 懐風亭は団体旅行といった大人数にも対応できる。また法事後の会食もできる
- 広い無料の駐車場がある
- 入園料がやや高い。割引サービスも栗林公園と比べてイマイチ
- 庭園観光ガイドのサービスや多言語の音声ガイドがない
- 車椅子の無料貸し出しはあるが、車いすの移動は不便に感じる
2019年の瀬戸内国際芸術祭の秋会期では本島・高見島と、中津万象園のすぐ近くまで訪れるでしょう。香川の観光地と言えば、栗林公園を思い浮かべるかもしれませんが、ここ中津万象園も素晴らしい場所です。
満点の星5評価をつけるにはサービスが物足りないところもありますが、それでも風光明媚な庭園は一見の価値があります。今回紹介しきれていない庭園の観光ポイントもあります。

かつて柿本人麻呂はこの地にあった中乃水門(なかのみなと)から香川を出発し、「玉藻よし」と始まる風光を讃えた歌を残しました。それほど美しい場所であります。(記念歌碑は庭園内にあります。)
さいごに、中津万象園と懐風亭の公式サイトをリンクします。より詳しい情報はこちらより確認してください。
公式サイト中津万象園・丸亀美術館
住所香川県丸亀市中津町25-1
駐車場乗用車100台分の無料駐車場
開園時間9:30~17:00(最終受付16:30)
定休日水曜日
入園料【大人】庭園700円・絵画館500円
【小・中学生】庭園300円・絵画館200円
*団体割引・障害者割引・丸亀市民割引・レンタサイクル割引あり
*2019年9月現在の料金
10%入場割引券http://www.bansyouen.com/coupon/
公式サイト中津万象園味処 懐風亭
住所香川県丸亀市中津町25-1
電話番号0877-23-2266
無料駐車場中津万象園・丸亀美術館と同じ駐車場
営業時間
【ランチ】11:00~14:30(ラストオーダー/14:00)
【ディナー】17:00~21:30(ラストオーダー/20:30)
定休日水曜日(祝日は営業)
*火曜日の夜の営業は予約制
庭園内には、無料で入れる陶器館や海望亭(うちわの里)もあります。
⇒2018年4月に海望亭に行ってきた記事も書きました。庭園散策の休憩所であり、丸亀うちわを知ることができる場所です。