香川に住む僧侶のかっけいです。
香川県にある丸亀城は丸亀市を代表する建築物です。
石垣のつくりが有名で、石垣に関する伝説がいくつか残っています。(代表的なものに、豆腐屋の人柱、羽坂重三郎の二ノ丸井戸での殺害など)
話変わって、丸亀城の南西方向(坤:ひつじさる)の方角に城坤小学校があります。この小学校のすぐ北に長福寺というお寺がかつてありました。
この長福寺のお地蔵さんは丸亀城から戻された伝説があります。
今回私はこのお地蔵さんを見に行きました。包帯でまかれているお地蔵さんらしいので楽しみでした。
お地蔵さんの伝説
雨乞い地蔵さん
城坤小学校のすぐ近くに長福寺といいます小さなお寺があります。小さな鐘つき堂の横にはほうたいをぐるぐる巻きにしたお地蔵さんがあんちされております。この地蔵さんを土地の人達は「雨乞い地蔵さん」と呼んでおります。
昔のおはなしです。丸亀のお城が築かれていたころのこと、石垣につかう石をさがしていました。ちょうど、お寺の前を流れるどんどろ川にかかっていました石橋がとても、りっぱだったので、お城に差し出されることになりました。ところが、この石を積み上げようとすると、すぐくずれます。何度、積んでも同じことです。しかたなく、また、もとのところへ返されました。お寺では、その石でお地蔵さんをつくりましたが、これがまた、すぐひびわれたり、かけ落ちたりします。その、自分の姿を人に見られるのがつらいと、雨を降らせます。そこで、かわいそうだと、ほうたいを巻いているのだそうです。ところが、このことが評判となり、かんばつで困っている人が雨乞いにやってきては、お地蔵さんのほうたいをとるそうです。すると決まって雨が降りだすそうです。
また、地蔵尊を「脳地蔵」とも呼ばれています。
著者池原昭治『丸亀の絵本』より原文引用
池原昭治とは童画家で高松市の生まれです。香川各地の伝説・言い伝えを聞きまとめている人です。
この『丸亀の絵本』は、実際に池原氏が現地の人に直接聞いた話だそうです。長福寺のおばあさんや、円龍寺の前住孝円にも聞いています。正確無比な言い伝えかは分かりませんが、このような話が残っているという事実はあります。
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長福寺のお地蔵さんの現在
朝日山長福寺と呼ばれたお寺は今はありません。真言宗醍醐派だったようです。
かつての鐘撞堂(釣鐘はなし)と手洗い(洗心)と、お地蔵さんをまつっている地蔵堂が残っています。現在は今津東自治会館になっています。聞くところによると、この会館の中には木像の大きな地蔵菩薩立像が安置されているそうです。
地蔵堂には3種類のお地蔵さんがまつられていました。
正面のお地蔵さんは石(御影石かな?)に彫られたお地蔵さんです。足下には別の石で蓮台が彫られています。高さは130cmはあるでしょうか、非常に丁寧なつくりのお地蔵さんです。
右のお地蔵さんは座像です。お墓にでよく見られるお地蔵さんの形で、両手で宝珠を持っています。包帯で巻かれていません。
向かって左にはよく分からない石があります。赤い頭巾と前掛けをしているので、3体はおそらくお地蔵さんなのでしょう。やはり包帯で巻かれていません。
伝説では包帯にまかれているお地蔵さんらしいのですが、そのような像はみられませんでした。
ひび割れたり欠ける話や別名「脳地蔵」とも呼ばれているので、ひょっとするとこの小さなお地蔵さんが言い伝えのお地蔵さんなのでしょうか。
包帯でまかれているお地蔵さんを拝もうと楽しみにしていたのですが、現在ではもう失われているのでしょうか。