僧侶のかっけいです。
お寺巡りが趣味という人は多いのではないでしょうか。御朱印集めが趣味の人もいることでしょう。
しかしどうでしょうか。
- 有名なところだから
- 多くの人が行っているところだから
といった漠然とした理由でお寺巡りをして、お寺の何を見たらいいのか分からない旅だったという経験も多いのではないでしょうか。
今回はお寺巡りをする前に、事前にどんなことを知っておくべきなのかを紹介します。
お寺の歴史や本尊を調べておく
意外に思えるかもしれませんが、お寺に行っている多くの人が『どんな仏様・仏像がまつられているのか』、『お寺の歴史・はじまり(縁起)』といったことを知らずにお参りしています。
日本の文化や歴史を肌で感じることができる良い機会がお寺巡りの楽しみなのですが、これから行くお寺のことを何も知らずに、立派な建物だなあ・厳かな雰囲気だなあ・御利益がありそうなどとぶらぶらとして帰るのはもったいないです。
最低でも『宗派名』を調べておきましょう。有名な観光寺院は末寺数の少ないマイナーな宗派のこともあります。
東京のお寺で例を挙げて紹介します。
築地本願寺は浄土真宗本願寺派の築地別院だった
- 宗派名:浄土真宗本願寺派
- 本山:京都の本願寺(お西・西本願寺)
- 本尊:阿弥陀如来
- 創建は1617年だが、現在の本堂は1934年に竣工
築地の本願寺の外観はモダンな趣きで、何も知識が無いとまるで新興宗教施設のように思えるかもしれませんね。
ですが実際には京都にある浄土真宗本願寺派の本山である本願寺に属している一寺院です。
元々は東京にある本願寺の別院として浅草橋の近くに江戸時代に建てられたのですが、場所を移転したり、1923年の関東大震災による本堂の消失を経験しています。
本堂内部は椅子席であることを除き、よくある浄土真宗のお堂です。教えもまた親鸞聖人がすすめられた阿弥陀仏の信心をすすめられています。
築地本願寺公式サイトhttp://tsukijihongwanji.jp/
浅草寺は聖観音菩薩が本尊の聖観音宗の総本山
- 宗派名:聖観音宗(しょうかんのんしゅう)
- 本山:浅草寺自体が聖観音宗の総本山
- 本尊:川で拾った観世音菩薩(秘仏)
- 創建は628年と伝わり、東京最古の寺
- 現在の本堂は1958年に再建したコンクリート製の建物
- 浅草神社が隣接
国内外からの観光客の多い東京台東区浅草の浅草寺(せんそうじ)は、元々は天台宗の一寺院でした。しかし1950年より聖観音宗の本山として独立しました。
ご本尊は飛鳥時代の628年、今の隅田川のほとりで網に何度もかかった聖観音菩薩とされ、それをおまつりしたお堂が浅草寺のはじまりとされ、東京最古の寺とも。
現在そのご本尊は秘仏としてまつられているので、本堂に参っても目にすることはできません。
なお浅草寺本堂の北東方向に浅草神社(あさくさじんじゃ)が隣接しています。私が行ったときにはこの神社にお参りする人はほとんどいませんでした。この神社は聖観音菩薩を拾い上げた檜前浜成・竹成の兄弟と尊像を拝した土師中知を「土師真中知命・檜前浜成命・檜前武成命」3祭神としてまつっています。御朱印もいただけますので、浅草寺巡りをしたときはかかさずお参りするべきでしょうね。夫婦狛犬もあります。
浅草寺公式サイトhttp://www.senso-ji.jp/
浅草神社公式サイトhttps://www.asakusajinja.jp/
赤穂浪士の墓で有名な泉岳寺は曹洞宗の寺
- 宗派名:禅宗の曹洞宗(そうとうしゅう)
- 本山:福井の永平寺と横浜の総持寺
- 本尊:釈迦牟尼仏
- 1612年に徳川家康が創立した
- 現在の泉岳寺は1641年に徳川家光が高輪に移転した
泉岳寺は赤穂浪士の47人の武士のお墓があることで有名なお寺です。徳川家康が今川義元を弔うために外桜田の地に建てたのがはじまりです。
伽藍が焼失後、徳川家光が移転の命じた時に尽力した5大名の一大名赤穂藩主浅野家の菩提寺であり、その縁で墓地があります。
なお正確には間新六(間光風)の遺体は義兄が引き取り築地本願寺にて葬ったので、この泉岳寺に埋葬されたのは46人となります。
泉岳寺公式サイトhttp://www.sengakuji.or.jp/
どうでしょうか。知ってからお寺巡りするのとしないのとでは、見どころが変わってくるのではないでしょうか。
四国八十八ヶ所巡りをする時も本尊を調べましょう
私の住む香川県では善通寺が有名です。真言宗開祖の空海生誕の地で有名ですし、善通寺も真言宗善通寺派の総本山であり、75番札所です。
四国四県では空海ゆかりの88か寺を巡礼する「お遍路参り」が有名ですが、それぞれのお寺に歴史があり、宗派もご本尊も違っています。
それを知らずにただ参り、手を清め、合掌し御朱印をいただき、鈴や鐘を鳴らして帰るのはもったいないところです。
- 一番札所:霊山寺は高野山真言宗・本尊は釈迦如来
- 二番札所:極楽寺は高野山真言宗・本尊は阿弥陀如来
- 六十六番札所:雲辺寺は真言宗御室派・本尊は千手観世音菩薩
- 六十九番札所:観音寺は真言宗大覚寺派・本尊は聖観世音菩薩
- 七十五番札所:善通寺は真言宗善通寺派・本尊は薬師如来
と一例ですが、札所の寺々は宗派名もご本尊も違います。臨済宗や曹洞宗や天台宗のお寺もあります。
空海ゆかりの寺だからと言って「真言宗の寺だろうなあ。仏様は大日如来だろうなあ」と勝手にイメージするのではなく、これから参るお寺が空海とどんな関係があり、寺院の始まりがどんな縁起だったのかを知らべておくと参拝時により一層歴史や文化を感じられるでしょう。
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まとめ。漠然と行かずに魅力を探そう
お寺巡り(神社巡り)は気軽にフラッと行くのもいいでしょう。
でも行ったことそのもので満足してしまっていて、何が面白い、何を見つけた、何を感じたと思い出に残りにくいのではないでしょうか。
歴史や文化に触れるためには、ただ漠然と行かずに、事前にそのお寺の背景を予習してから実際にお参りに行くと新たな発見ができることでしょう。
それこそ今の時代は本だけでなくインターネットという便利な道具があるので、より調べやすいことでしょう。
- 寺の歴史・縁起
- 宗派名・ご本尊
- 有名なもの・史跡
この3点を事前に確認しておくと、お寺の境内の雰囲気を楽しめるでしょうし、歴史や信仰の形を現地で感じることができるでしょう。
まつられている仏像も事前に知っておくことで、なぜこのお寺にはこの仏像なのかも現地で学べるでしょう。
中には御朱印をいただけたり、パワースポットとして有名な場所もあるでしょうから、自分なりの注目ポイントを事前に決めておくことも大切ですね。人気のお寺だと人が多く予定通りにお参りできないこともありますので。
お寺巡りは有名なお寺だけでなく、地元のお寺に行くときにもできるだけ前もって調べておきましょう。有名なお寺は調べやすいでしょうが、地元の小さな社寺こそ地域の歴史を深く知るきっかけになることもあります。
大きく有名だからとお寺巡りするのではなく、お寺巡りをすることで何かを得よう・感じようという気持ちをもって参って欲しいところです。お寺巡りは魅力を直接発見できる面白い趣味ですから。