涅槃桜の名前は、香川県や愛媛県ではよく知られています。開花時期になるとニュースでも報じられています。
2月下旬が見頃の河津桜は季節の花として全国ニュースになりますが、この涅槃桜も負けないくらい魅力のある桜です。
自坊の涅槃桜も今年は3月5日に咲きました。
涅槃桜について、開花時期・見頃や名所・名前の由来などを紹介します。(さっと読みたい人のために、最初にまとめておきます)
涅槃桜とは
涅槃桜の読み方は、そのまま「ネハンザクラ」と読みます。
涅槃桜はお釈迦さまの命日に開花する
涅槃とは仏教をひらかれたお釈迦さまの命日のことです。
お釈迦さまの命日は、日本では旧暦2月15日とされています。日本の仏教寺院では新暦2月15日に涅槃会が開かれます。
3月中旬に咲く涅槃桜と開花時期が違うじゃないと思う人もいるでしょうが、涅槃桜の命名は「旧暦の2月15日に開花する桜」とされています。ですので正しいのです。
ただ個人的には、旧暦2月15日は年によって3月頭から4月頭と幅が広いので、涅槃桜は「月遅れの涅槃(3月15日)に咲く桜」と説明したほうが分かりやすいところです。
涅槃会についてはこの記事で詳しく書きました。
涅槃桜の見頃は、3月15日ごろ
涅槃桜はお釈迦さまの月遅れのご命日に見頃になります。つまり新暦3月15日頃が満開となるでしょう。
私が観察する限り、香川県での開花は3月5日頃からです。全国的に有名な河津桜よりも2週間ほど遅いでしょうか。
明正寺桜(みょうしょうじざくら)が正しい名前
涅槃桜の通称が有名ですが、正しい園芸品種名は「ミョウショウジザクラ」です。学名はPrunus × introtsa ‘Myoshoji’です。
涅槃に咲く特徴があるので、涅槃桜が定着したのでしょう。
明正寺桜は、愛媛県新居浜市にある新四国曼荼羅霊場札所の明正寺で発見されました。明正寺の桜だから、明正寺桜なのです。
明正寺桜は、昭和40年(1965)3月20日、愛媛県文化財保護委員・八木繁一氏が発見し、学名をミョウショウジザクラと命名したもの
明正寺ホームページより引用
明正寺桜(涅槃桜)の原木は、今も愛媛県明正寺にあります。
涅槃桜の名所は香川県の善通寺
善通寺市には真言宗善通寺派の総本山「善通寺(ぜんつうじ)」があります。
実は涅槃桜発祥のお寺、明正寺は真言宗善通寺派の寺院です。
1973年に弘法大師御誕生1200年を記念して、明正寺から総本山善通寺に贈られたそうです。現在では善通寺の西院、御影堂・宝物館の裏を中心に約20本が植えられています。
木もある程度大きく、桜の観光名所として開花時期にはニュースになります。
- 総本山善通寺の場所:香川県善通寺市善通寺町3-3-1
- 境内の西側に専用駐車場あり:普通車は200円。利用時間は午前8時~午後6時
- 車でのアクセス:高松自動車道善通寺インタ-より約10分


涅槃桜の特徴は優れた香りをもつこと

涅槃桜の特徴をあげます。
- 涅槃の3月15日頃が見頃
- 花の後に葉が展開する
- 香りが非常に素晴らしい
- 挿し木が簡単。丈夫な桜
涅槃桜の開花は、早咲きで有名な河津桜よりも遅く、桜の花見で有名なソメイヨシノよりも早いです。
桜の種類によっては、葉と花が同時に展開することもありますが、涅槃桜は満開時期にも葉は出てきません。そのためソメイヨシノや河津桜のように花をダイレクトに感じることができます。
涅槃桜は花の大きさが1センチちょっととやや小ぶりです。また色も白色(かなり淡いピンク色)と、紅色(濃いピンク色)の河津桜やピンク色のソメイヨシノよりも写真映えはしないかもしれません。
しかしその欠点を上回るほど、素晴らしい香りを放つ桜です。
涅槃桜は写真を見て楽しむ桜ではなく、実際に見に行き香りを楽しむ桜であると思います。香りも強く、離れても甘い香りが漂ってきます。
またこの涅槃桜は非常に育てやすい桜だと思います。よく根が張ります。
自坊のお寺にある涅槃桜はかなり小ぶりです。植えた場所が悪く、瓦が埋まり耕土が10センチほどしかありません。しかし根が地表を這うように伸び、毎年横に枝を伸ばします。
挿し木も成功しやすい桜です。適当に挿しても、苦労せず根が出てきました。涅槃桜は河津桜やソメイヨシノよりもずっと簡単に挿し木ができます。

上の写真は、私の寺にある涅槃桜の挿し木です。
葉が展開した5月の遅い時期に挿したにも関わらず、8割近くが成功しました。挿し木翌年には開花した枝もあります。非常に生命力のある品種です。
以上で、涅槃桜の紹介を終えます。

枝は勝手に折らないでね