こんばんは。 僧侶のかっけいです。
お坊さんってお寺でお勤めするだけじゃないですよね。
ご門徒さん宅にお参りすることも日々あります。お参りに行きますと小学生くらいの子供さんは純真ですから、思ったことをなんでも言ったり、聞いたりしてくれるんですね。
この前、子供さんから面白いことを言われました。
「お坊さんってどうしてそんなに変な臭いがするの。くさいよ。」ってね。
周りの大人たちは「めっ!!どうしてそんなこと言うの」って感じで子供を隣の部屋に連れて行こうとするのですが、良い質問じゃないですか。
お坊さんがどうして変な臭い?匂い?香り?がするのか、お答えしますね。
お坊さんの臭いの正体は、お線香のにおい。
仏教ではお香が非常に大切な役割を持っています。
お香はお仏壇にお供えするものの一つにもなっています。
仏様のお浄土とは常に何とも言えない良い香りに包まれているそうです。
お仏壇とはお浄土の様子を私たちが目で見て感じ取れるように表現したものです。そのお浄土を表したお仏壇にお香をお供えすることで、そのお香から立ち上る煙や香から視覚的にも嗅覚的にもさらにお浄土を感じ取れるようになっているんですね。
さらにお香には清めるという意味もあります。
お香を焚くというのは煙・香りをあたりに漂わせ、部屋全体を清浄な空間にすること。塗香と言われる体に塗るお香とは、私自身の心身を清浄な状態にするという意味があります。
仏様にお参りするときには、お浄土の様子を表すもの、仏様にお参りする心構えを用意するものとして、お花・お光、そしてお香をお供えすることが大切になってくるんですね。
だからお坊さんはお仏壇の前に座り、お経を読むときには必ずお線香を焚いているんですね。
いっつもお線香の煙が誰よりも近い位置で体に届いているので、お坊さんの衣にはお線香のにおいが染みついちゃってるんですね。
お坊さんが放つ匂いは、好き?嫌い?
さてお坊さんのにおいというのはお線香のにおいが移ったものなんですね。
ただですね。においにも2パターンありまして、「心地よい香りの匂い(におい)」と、「不快感を生じる臭い(におい)」があるんですね。
今回、お坊さんって変な臭いがするの?と言った子供は「くさいよ~」とも言ったので、気持ちの良い香りではなかったんですね。
どうですか、皆さんもお線香の香りって好きですか?嫌いですか?
意外と口には出さないけど、嫌い、もしくは好きではないと思っている人が多いんじゃないですかね。
お坊さんのことを線香臭い人と表現することもあるので、お坊さんが近寄ると線香のにおいがしてきて嫌だいやだと思っているんじゃないですか。
でもですね、お坊さんの私は線香の香りが好きなんですよ。私だけでなく、お坊さんはお線香のあの独特な匂いが好きな人、結構多いんですよ。
お坊さんの放つ香り、線香のにおいが好きか嫌いかわかれるのはなぜだろうか。
人の香りの好みって十人十色で、誰もがこの匂い好きってなかなかないんですよね。
特にお香は好みが分かれやすいんですよ。
なぜかというとお香ってただ煙が出ればいいんじゃないんですよ。お香というのは仏様にお供えする香りですので、非日常的な香り、清浄な浄化の力を感じさせるにおいじゃないと駄目なんですね。
お香には白檀(びゃくだん)や沈香(じんこう)や伽羅(きゃら)といわれる香木が有名な原材料ですが、ほかにも桂皮(けいひ)や木香(もっこう)麝香(じゃこう)や甘松(かんしょう)などの香料も複雑に組み合わせていきます。特に丁子(ちょうじ)と呼ばれる香料は結構刺激的な香りで鼻にくるのですが、お坊さんはこのスパイシーな匂いが結構好きなことがあります。(私が好きなだけかも)
香木や香料を何十種類も複雑に組み合わせて、得も言われぬ香りを表現しているので、お香の香りって好き嫌いが出やすいんですよ。
でもですよ。その好き嫌いが出やすいお香の香り(臭い・匂い)ですが、お坊さんの多くはお香の香りが好きなんですよ。
なぜでしょうかね。
私が思うに、子供のころからどれだけお香の香りに触れてきたかが要因だと思っています。
お坊さんじゃない人がお香の香り・お坊さんの放つ線香の香りが臭いと感じるのは、単純にそのにおいに接した回数が少ないからではないでしょうか。
お坊さんはお寺の出身です。
お坊さんは毎日毎日仏様にお参りしています。
すると自ずと毎日毎日お香を焚くこと。お香の香りと接する回数が増えていきます。
またお寺の建物にはお香の香りが染みついています。
そのような環境で大きくなった子供というのは、大きくなってもお線香の香りが身近な匂いとして感じるのではないでしょうか。
一年に数回しかお香を焚かない人というのはお香の香りに触れる機会が少なく、仏事法事でお坊さんがお参りに来るとお香の臭いが何となしに「嫌だなあ~」と感じてしまうのでしょう。
逆におじいさんやおばあさんはあの匂いが「懐かしいなあ~」と感じるそうです。
子供のころの寺子屋やお寺で遊んだことが想い起されるそうです。
浄土真宗では染香人(せんこうにん)の例えがあります。
仏様にお参りするだけでお線香のにおいが体に染みつくなんてあるわけないと思うでしょう。
いやいや、本当にお香の香りはお参りの人に移っていくんですよ。
特にお坊さんは衣を着て、袈裟を身にまとい、かしこまってご仏前にお参りします。
いつも同じ格好でお参りしますので、どんどんどんどんその衣にお香の香りが移っていきます。
浄土真宗の親鸞聖人は次のような歌を残されています。
染香人のその身には 香気あるがごとくなり
これをすなはちなづけてぞ 香光荘厳ともうすなる
浄土和讃より
お参りを身近にする人、仏様にお参りする習慣のついている人というのは、仏様へのお給仕(お香をお供えすること)により自ずとお香の香りに染まっていきます。やがてはその人自身からお香の香りが放たれるようになるんですね。
お香の香りが体から発散されることで、仏様(阿弥陀様)の智慧と慈悲が私の身になったとは言えないかもしれませんが、少なくとも体からお香の香りがする人というのは、普段から仏様と向き合い、清浄な気持ちでお参りできていると言えるのではないでしょうか。
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さいごに。梅雨や夏の時期は香りに敏感だからね。
人が香りを感じるのは、ある程度の湿気と温度が必要とされていますね。
今は夏のお盆過ぎで、まだまだ暑い日が続いています。
お坊さんは年がら年中、お参りの時は衣を着ています。(会社員のスーツみたいなものですね)
ですので、この時期のお坊さんは一年でも特に変なにおいを漂わせている時です。(嫌な臭いだったらごめんなさいね)
ただですね。私はお酒やタバコも飲まないので、酒臭い・タバコ臭いのではないですよ。
ただの線香くさいだけですよ。