僧侶のかっけいです。
仏教に関して調べていると、時々『経典には○○のように説かれているように云々』ともっともらしい説明をするウェブサイトがありますよね。
私は話半分で読んでいるのですが、時には本当にそんなことがかかれているのかなあと疑問に思うこともあります。
さてその時どのように調べたらいいでしょうか。
実はインターネットでも頑張ればなんとか調べることができます。そのサイトは『SAT大正新脩大藏經テキストデータベース 』です。
以下、私の冗長な文章が続くので、調べ物がある人は上のリンク先をクリックすることをお勧めします。
インターネットでは真偽不明の引用がよく現れる
インターネットでは真偽のほどが定かではない文章が多く現れます。
それこそ何か都合の良さそうな表現や説明があると、コピーアンドペーストと言われるように、色んなウエブサイトがこぞって真似をすることがあります。
嘘も重ねると本当のようになると言ったら言い過ぎでしょうが、インターネットで調べ物をする時は、疑いを少しはもつべきです。
例えば『お香の功徳』で調べますと、『経典に塗香の功徳が記載(岩佐仏喜堂)』のウエブページがヒットします。
ここから引用しますと、
例えば、仏教の経典(華厳経)には塗香の功徳として次のようなことが記されています。
- 精気を増益する
- 身体を芳潔ならしめる
- 温涼を調適する
- 寿命を長からしめる
- 顔色を光盛ならしめる
- 心神を悦楽ならしめる
- 耳目を清明ならしめる
- 人をして強壮ならしめる
- 見る者をして愛敬せしめる
- 大威厳を具する
とあります。(もっともこの内容も「香りの世界をさぐる(中村祥二著)」からの引用ですが。)
これとほぼ同様の内容もインターネット上にはいくつか見られます。
さてでは本当にこんな文章が登場しているのかをどのようにして調べたらいいのでしょうか。『SAT大正新脩大蔵経データベース』なら調べられるかも。
SAT大正新脩大蔵経データベースでの調べ方
大正新脩大蔵経とは1924年~1934年にかけて、インドの経・律・論の漢訳と中国・朝鮮・日本の仏教文献(13520巻分)を集大成した全100巻からなる経典のまとめ本です。
『SAT大正新脩大蔵経データベース』ではテキスト箇所の1巻~85巻までがデータベース化されていて、全文検索が可能です。
トップページを開きますと、上のグローバルメニューから「検索」をクリックします。
すると上のような画像がでるので、赤枠で囲ったところに調べたい文言を打ち込み、「Search」をクリックします。(じっくりと使い方を知りたいならIntroduciton近くの「はじめに」をクリックしてください)
検索結果の表示に少し時間がかかるかもしれませんが、20秒程度待てば結果が出てきますかね。
今回は「精気を増益する」の文章から「精気 増益」で調べてみました。(ありそうな熟語で調べると絞りやすい)
すると今回の「精気 増益」だと33個の似たような句がヒットしました。
大方廣佛華厳経とは華厳経の正式名称ですから、ここに注目します(緑で囲った所です。)
4番目の所に「妙香具十功徳」の文字が見えているので、これがあやしいですね。そこでさらに青文字の[show」をクリックすると前後の全文が詳しく表示されます。
復次我王。塗諸妙香。具十功徳。
一増益精氣。二令身芳潔。三調適温涼。四長其壽命。五顏色光盛。六心神悦樂。七耳目精明。八令人強壯。九瞻覩愛敬。十具大威徳
大方廣佛華嚴經卷第十一
上の文章があることが分かります。その結果、仏教の経典(華厳経)には塗香の10種類の功徳っぽいものが記されているという裏付けはとれました。
ただし意味は分かりません。あくまでそれっぽい文章が有るのか無いのかを知るだけです。(復次我王とはなんでしょうね)
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さいごに。調べられるのはお経だけ
今回はSAT大正新脩大蔵経データベースを利用してお経文から知りたい文章があるかを調べる方法を紹介しました。
しかし非常に便利なのですが、検索語句によっては検索結果が膨大なこともありますし、全くヒットしないこともあります。
例えばお香を専門的に扱う店では「香十徳」という言葉がよく使われます。
香十徳とは、北宋の黄庭堅が香に関する効用を記したもので、日本では一休宗純が紹介したらしいとされます。
- 感格鬼神
- 清淨心身
- 能除汚穢
- 能覺睡眠
- 静中成友
- 塵裏偸閑
- 多而不厭
- 寡而為足
- 久蔵不朽
- 常用無障
香十徳
これは経典が由来でないので、本当にこんな内容がお経に書かれているのかと調べても私には見つけられませんでした。
もっといえば、本当に黄庭堅がこんな文章を書いたのかとも疑い深い私は思ってしまいます。(香十徳は江戸以降の作とも言われていますしね?どうなんでしょう?)
黄庭堅が残したとされる香十徳の書や碑や版があれば信憑性は高まるのですが、引用するウエブサイトではそこまで詳しく引用元を明示してくれはしないでしょうかね。