香川県丸亀市円龍寺の僧侶かっけいです。
8月のお盆の時期には、多くの人が実家のお墓にお参りしますよね。またお盆の時期にはお盆燈籠をお仏壇やお墓の横にお飾りしますよね。
お盆の時期(月遅れ盆は8月13~16日)にお飾りした灯籠は、お盆が過ぎますと流す必要があります。流す日や流し方というのは地域ごとの慣習によって違っていますが、私の住んでいる香川県西讃地域(丸亀周辺)では8月の末日に焚き上げる(流す)ケースが多いです。
今回は自坊円龍寺の平成29年度灯籠流し法要の様子を写真を交えて紹介します。
お寺での灯籠流しの準備
灯籠流しとは河川敷でお坊に使用した灯籠をお飾りをして、読経の後で川に灯籠を浮かべ流していくイメージがあるかもしれません。しかしお寺で行う灯籠流しでは、本堂で灯籠お飾りしてからお寺の境内で焚き上げていきます。(焚き上げるとは焼くこと)
香川県ではお盆の時期に、お墓に墓前灯籠をお飾りします。香川県の墓灯籠はこちらの記事で紹介しました。
お寺の墓地に飾られていた灯籠をに集めて、法要後に焚き上げる用意をします。焚き上げる場所にはトタンを敷き詰めておきます。
また灯籠だけでなく、中陰が過ぎお役目御免になった白木のお位牌なども焚き上げます。焚き上げるためにお預かりしていた白木のお位牌を本堂にお飾りします。
灯籠流しはどのような感じの法要なのか
本堂での読経と法話
お盆に飾る灯籠は香川県の場合、3つの種類があります。
- 吊り灯籠
- 回り灯籠(置き灯籠)
- 墓前灯籠
同じ香川県でも高松を中心とした東讃地域では上の写真のような白い吊り灯籠をお墓にお飾りするのですが、丸亀周辺の西讃地域では白い紙で作られた吊り灯籠は仏壇横の天井から吊り下げます。
西讃地域の墓前灯籠とは竹で作られた簡素な作りの灯籠を指します。墓前灯籠については次の記事で紹介しました。『お盆には香川県だけで見られる珍しいお墓の灯籠がある』
円龍寺の灯籠流しでは、家から持ち寄られた吊り灯籠と置き灯籠を本堂にお飾りしてからお勤めをします。
読経の後、続けて住職が灯籠流しにまつわる法話をします。
読経時間はおよそ10分、法話は15分程度です。その後、灯籠を流します。
境内での灯籠の焚き上げ
本堂でのお勤め・法話が終わりますと、続けて灯籠の焚き上げです。
円龍寺の場合は、法要に参列された人の手によって、順次火の中に入れていただきます。
お坊さんが灯籠を焚き上げてもいいのですが、灯籠流しとは家の人の手によって火を灯すものなので、最後の焚き上げも家の人の手によってお願いしています。もちろん家の人がいない場合は後でお寺の人の手によって焚き上げます。
吊り灯篭は紙で作られているので、あっという間に大火になります。2017年の今年は風が強く焚き上げるのが難しかったです。
もちろん置き灯籠(回り灯篭)も焚き上げます。
本堂にお飾りしていた白木のお位牌も同じように流します。白木のお位牌は皆さんが帰られた後に流します。事前にお寺に預けられている人がほとんどですので、お寺の人の手でゆっくりゆっくりと焚き上げていきます。
以上で円龍寺の灯籠流し法要は終わりです。19時30分くらいに終了します。
参列者は灯籠を火の中に入れて焚き上げていただけたら、後は自由解散です。お寺にて納骨されている人は、そのまま納骨場所へお参りする人も多いです。
広告 - Sponsored Links
灯籠流しはなぜするのか。灯籠を灯すことの意味
円龍寺では灯籠流しを毎年行っています。ほぼ同じ時間帯に土器川河川敷蓬莱橋で、丸亀市仏教会による灯籠流し法要も行われています。
灯籠流しは仏教行事です。灯籠に火を灯し、先立たれたご先祖を偲ぶ中で、私たちが仏法をいただいていくのです。
最近では葬祭業者でも定額・格安料金で灯籠供養祭と銘打ってイベントをしています。あるいは葬祭業者・仏壇屋では無料で引き取ると言っているところまであります。
お盆を過ぎた灯篭というのは、邪魔物・ゴミ・不用品じゃないですよね。
僧侶の手によるお勤めと法話の後、灯籠を灯した人の手によって灯籠を流し、故人を偲んでいくことに仏教儀式としての燈籠流しの意味があるのです。
お金を支払っておけば勝手にしてくれる・処分してくれる灯籠流しでは意味がないです。ただで引き取ってくれるのは一見ありがたいように感じますが、仏縁を捨てていることに気がつかなければなりません。
『長者の万灯より貧者の一灯』という言葉があります。
豪華な灯籠を用意することや高いお布施を支払うことが大切なのではありません。
何よりも大切なことは亡き人を偲ぶために用意した灯篭を、灯籠を流すという仏教行事を通して仏縁に出会い、火を灯すことによって常に私の中に亡き人の願いがこの私に届いることに気がついていくのです。
お盆に先祖を想い迎えた灯籠は、自分たちの手で灯籠を送りましょう(流しましょう)。