お盆には香川県だけで見られる珍しいお墓の灯籠があるんだよ

お坊さんのかっけいです。

私は香川県西讃の中部に位置する丸亀市に住みます。

日本では多くの地域で月遅れの「8月13日~16日がお盆参りの期間」になっていますね。

お盆には家族そろって、お仏壇やお墓にお参りに行くことでしょう。お盆には先立たれた先祖らが戻ってくる目印として、お仏壇に迎え火の盆灯籠を用意される家庭は多いと思います。

しかし香川県の一部では、お盆の時にお墓の前にも灯籠を持っていく習慣があります。それも香川県オリジナルデザインの灯籠です。今回はその特徴的な灯籠について紹介します。

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香川のお盆にお墓で使われている灯籠

香川でお盆に使われる墓灯籠(墓前灯籠)
香川の墓灯籠

香川県では、上の写真のようなカラフルな灯籠がお盆の時期にお墓に飾られています。

高さは40センチメートル程度、底の大きさも15センチメートル四方と、非常に小さな灯籠です。

構造はシンプルで、15センチメートル四方の大きさの木の板を底にし、板の中央には蝋燭を立てる用の釘がある。竹で作られた4隅の柱には、仏教で尊い花である蓮がデザインされた紙が張られています。灯籠の中にロウソクが灯せるように、紙の一辺がめくれるようになっています。

香川の墓灯籠にはロウソクを立てる用の釘がある

上部でクロスされた竹には紐が結ばれており、お墓で行燈のように吊り下げることもできます

香川独自の墓灯籠を上から見た様子。
灯籠を上から見た写真
香川の墓灯籠を吊るための紐
灯籠を吊るための紐

 お盆灯籠とよく呼ばれていますが、一部分竹で作られており竹灯籠とも呼ばれたり、仏壇に置く灯籠と区別するために、お墓に置かれることから墓灯籠や墓前灯籠とも呼ばれています。

灯籠の呼び名
  • 盆灯籠
  • 墓前灯籠
  • 墓灯籠
  • お墓の灯籠
  • 竹灯籠

私は「墓灯籠(はかとうろう)」と呼んでます。

お墓での盆灯籠の使われ方

お盆の時期にお墓に行くときには、お花と蝋燭とお線香とお供えを持っていきますね。

香川の一部の地域では、上で紹介した盆灯籠もプラスして用意します。

香川の墓灯籠の夜間のお飾りの様子。
お墓に飾られる盆灯籠

上の写真は自坊のお寺にあるお墓の様子で、夕刻の写真なため少し暗いですが、お墓にはたくさんの盆灯籠が設置されているのがわかりますよね。

上部のクロスした竹に付いた紐を使って吊り下げてお墓に飾ることもできるのですが、私の住む地域では置いて飾るのが一般的です。

やはり燃えやすい紙や竹で作られており、吊り下げた状態で中のロウソクに火を灯すと揺れて危険と感じるからだと思います。

もちろん置いた状態でも非常に軽い作りなので、大風が吹けば倒れてしまうこともあります。ですので皆さん工夫して、灯籠の中に重しとなる石を入れていることがほとんどです。

中にロウソクがあり迎え火の役割として多くの人が火を灯すのですが、お寺の人間としては倒れて火事になってはいけないので、火をつけた状態では帰らずに必ず消してもらいたいです。夜遅くには墓地に行って、火の気がないか見回りをしています。

香川県では当たり前のように見られる墓の盆灯籠

香川県ではお盆の時期に、お墓に灯籠を持っていくのはごくありふれた光景です。

ただ今回、上で紹介した墓灯籠はどちらかと言えば、坂出・丸亀・多度・善通寺といった西讃地域の中部でよく見られる墓灯籠です

高松の方ではちょっと違います。完全に紙で手作業で作られた吊るのに特化した、少し高価な灯籠が使われります。

盆灯籠・吊り下げタイプ白
紙の灯籠。雨でよれた状態

上のような灯籠がお墓で吊り下げられている光景が、高松を中心とした東讃地域で見ることができます。ただこの灯籠はすべて紙で作られており、雨風に弱いですし火も灯せません。また手作業生産のため価格も数万円もします。

一方、西讃の小さな灯籠は火を灯すことができるうえ、吊るすことも置くこともできます。また価格も非常に安く一基がおよそ300円で買えます。また仏壇店だけでなく、全国規模のホームセンターやショッピングセンターでも売られています。

そのため東讃・中讃地域の盆でも、竹と紙で作られた便利なこの墓灯籠が使われることがあります。

香川県のお盆に飾る白い吊り灯籠
お盆に飾る仏壇横の吊り灯籠

ちなみに私が住む丸亀市周辺では、高松市周辺の墓地で使われている紙で作られたお盆灯籠は、お仏壇の横に吊り下げられます。

仏壇屋は「1年目の初盆は白、2年盆は銀、3年盆は金色を飾る」と言いますが、お坊さんの私は「3年とも白のままでいい」と思います。色を変える理由がないからです。

色を変える理由を聞くと、「裸で帰る先祖の服の役割を持つため」だそうです。誰が言い始めたんでしょうかね?


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なぜ香川県ではこのような墓灯籠があるのだろうか

香川県の墓では、なぜ特徴的な灯籠があるのだろうか?正直なところ全く分かりません。

ただ香川のお盆時期の墓灯籠とよく似た習慣が、広島県でも行われています。

こちら香川県の灯籠とは違い、非常に複雑な構造のカラフルな灯籠が飾られています。こちらの『広島のお盆の風物詩 盆灯籠』のブログ記事が参考になるでしょうか。

広島はもともと浄土真宗に篤い土地柄で、安芸門徒と呼ばれていました。お盆にカラフルな墓灯籠を飾るようになったのは、浄土真宗本願寺派の安芸門徒が江戸時代に広めたとの一説があります。

同じ浄土真宗の真宗興正派は今でこそ末寺数450強ですが、明治初めに本願寺から独立するまで3000ヶ寺ほどの大きな規模の宗派だとされています。しかし本願寺から別れたときに興正派に残ったのが讃岐(香川県)の真宗興正派の末寺ばかりで、篤かった広島の安芸門徒は本願寺に移ったそうです。

現在の香川県では、真宗興正派が浄土真宗寺院の中では一番多くおよそ200の寺数があります。香川の浄土真宗寺院の半数は真宗興正派です。

安芸で江戸時代に生まれたお盆の時期にお墓に灯籠をお飾りする習慣が、同じ浄土真宗の流れをくむ真宗興正派から、讃岐にも伝わったんじゃないのかなと想像しています。

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