お坊さんの嫌いな数が4であるという迷信

真宗僧侶のかっけいです。

浄土真宗という仏教宗派は数字の語呂合わせを気にして、不吉と悩んだり避けたりすることをいたしません。なぜなら単なる言葉の響きによる連想ゲームだからです。吉凶に対して何の関係もありません。

どうして今回こんな話をするかと言えば、今はインターネットで何でも検索できる世の中でしょう。

するとお坊さんに渡すお布施の金額が書かれていることもあるんですよ。次のようなことを紹介しているサイトが結構あります。

  • 偶数はわかれる数字だから、奇数の数字が良い。
  • 4と9は縁起がよくないため、4万円や9万円といったお布施は避けること。 

「なに言ってんだ」とお坊さんの私は思うのですが、テンプレ?・コピペ?かのように同じようなことを書いているところだらけです。

寺院の運営するウェブサイトでは見たことがない数字の迷信です。

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4や9は不吉な数。忌み数なのだろうか

日本では4と9の数字が特に嫌われています。「不吉な数字だ」・「使うべきではない」・「目にするのを避けるべき」と忌みはばかって使用を避ける傾向があります。

この不吉である理由としてよく言われるのは、「4」という数字を「し」と読むことができるため、「4=し=死」と死を連想することができるためです。9も同様に、「9」は「く」と読めるため、「9=く=苦」と苦しみを連想するためです。

なるほどねえ。想像力豊かですね。

でも社会的にはやはり4と9は不吉な数字として避けられています。

例えば病院では「○○4号室」や「○○9号室」が無いこともあります。駐車場・駐輪場でも不自然に感じるほど4と9の数字が飛ばされています。他にも日本人は「3大○○」と有名なものを3つに絞って紹介しようとします。

しかし物は考えようで、例えば4つのまとまりで有名なものを紹介しようという分け方もあります。「四大文明」「四台翻訳家」「四大美術館」「四大大会」といったように、忌み嫌われているという四の数字でグループ分けをすることもあります。(ちなみに四大○○は権威的な時によく使われている)

忌み数というのは単なる言葉の響きによるイメージです。

ですので4は「し」と読むことができるから不吉だというのはおかしな話です。

例えばこんなことがありました。

病院で「473号室」に入院することになりました。

ある人は『その部屋は縁起が悪いから変えた方が良い』と言い、ある人は『こんなに素晴らしい部屋はない』と言いました。理由はこうです。

  • 前者は、473を『よう、なおさん』。治すことができない
  • 後者は、473を『しなさん』。死なさない

同じ数字であっても、読み方や発音を変えれば、ものごとを正反対の捉え方をすることができます。数字に良い悪いというのはなく、人間が自分の都合の良いように悪いように感じ、迷いやすい生き物であるということが言えます。

四つ葉のクローバーだって、希望や幸運の象徴としているけども、なぜですか。3や4の数字そのものに吉凶はないのです。盲目的に4の数字を嫌っているだけで、人間の都合によって4を幸運の数字にも扱ったりします。

お坊さんは奇数が好きなのか

お坊さんは奇数が好きで、偶数を嫌うという人がいます。

しかしこれはどちらかと言えば、古来からの日本人の傾向です。これは歴史的・文化的な話ですので、素人の私には十分な説明ができません。長いですが、次のサイトが参考になるかもしれません。『中国語と日本語の数字に見る文化的要素に関する一考察 高知大学 林翠芳』(←PDFファイル)他にも探せば専門的な考察をたくさん見つけられます。

上の参考PDFによると、日本人が奇数を好む理由として道家思想の『易経』の影響を受けていると説明しています。

1~10の数字を奇数と偶数に分け、奇数は天と陽、偶数は地と陰を表し、天地と陰陽とみなされた。そこから天と陽は縁起のよいこと、地と陰は厄や醜悪を表すという考え方が生じたからである。

『中国語と日本語の数字に見る文化的要素に関する一考察』より引用

この中国的思想は平城京にも見られるようです。それは今年の6月8日の新聞に載っています。

平城京南方に幻とされていた十条大路が確認されたそうです。羅生門が九条に建てられていたのですが、かつては平城京は十条まで伸びていたと推測されます。これは遷都前の南北十条の藤原京を踏襲していたのですが、中国思想・知識をもっていた藤原不比等らが奇数を『陽』とする中国古代思想を採用したことで、変更されたとも考えられています。

お坊さんが奇数好きというのではなく、日本人は昔から奇数の方がなんとなしに良さそうと思っていたのです。

でも『仏事の年忌法事は1周忌・3回忌・7回忌・13回忌……と奇数じゃないですか』という人もいるでしょう。

これも以前『なぜ一周忌の次は三回忌と数えるのか』で説明したのですが、やはり儒教や道教そして干支といった当時の大陸からの考え方から徐々に日本式に固定化されたいったものです。

お坊さんは奇数が好き・3と7が好きとは言えず、自然な歴史的な流れで3と7が使われているだけです。


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迷信にとらわれずに、4も9も遠慮せずに使ってね

日本人は験を担ぐ・縁起を担ぐことが大好きです。(世界共通かな?)

なるべく縁起のよい言葉・数字・行動をとろうとします。例えば勝負事の前にカツを食べる。宝くじを神棚に置く。結婚式は大安にするなどです。

しかしどうでしょうか。日常生活の中で意識することはあるでしょうか。たいてい大きなイベントがある時に限って、急に意識するようになるのではないでしょうか。生活の中では0~9の数字に良し悪しを区別せずに使っているでしょうし、六曜を考えることもないでしょう。

何か良くないことが起これば因果関係を求めたくなるのが人ですが、迷信というのは物事の結果と何ら関係がありません。

1や3や5や7を気に入って使っているのでしたらそれはそれでいいのですが、4や9が不吉な数字だという根拠もないイメージをしているのであれば、気にせずに使って欲しいところです。

それで言いますと、自坊の永代経法要は9月9日と4月4日の14時から勤めています。ゾロ目の日だと覚えやすいでしょう。

お坊さんは4や9が嫌いではありません。たまたま3や7の数字が目立っているだけです。

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