僧侶のかっけいです。
皆さんはお坊さんの仕事内容にはどんなことを思い浮かべるでしょうか。
- 門の開け閉め
- 読経・おつとめ
- 葬儀・法事
どれも正しいのですが、意外にも「掃除」が忘れられているのではないでしょうか。
お寺でする仕事時間のほとんどが「掃除」と言っても過言ではないかもしれません。お坊さんと掃除について紹介します。
なぜ掃除が大切なのか
一年の最後には「暮れの大掃除」という行事を各家庭の皆さんもしませんか?
お寺でも同じく大掃除をしています。一年間のつもりに積もったホコリや垢を落とし、新年を清々しく迎えたいという気持ちだけが理由ではありません。
お寺の掃除には大切な理由があります。
それは『愛山護法の念を深め、仏恩報謝の生活にいそしみ、念仏者としての自覚と意識を高める機縁とする』ためです。
簡単に言えば『お寺を大切に守っていこう・感謝の生活をしよう・仏様のお給仕をさせていただこう・いのちを見つめよう』ということです。
お寺を掃除することは仏様へのお給仕・お世話と同じことです。
お寺というのは仏様をまつっています。そしてその場所には様々な人がお参りに来ます。法要イベントの時には大勢の人が出入りします。
掃除をしなければお寺の境内には草木が乱雑に茂り、縁は真っ白になり、お堂の中には埃がたまり、仏様の周りには虫がはしっていることでしょう。お寺を掃除するということは、お参りの人が気持ちよくお寺に参りお話を聞くことができるだけでなく、お坊さんもまた仏様のお世話をさしていただき、自分自身の心も磨かしていただいているのです。
自分のためにお寺を掃除するのではなく、お寺に来る人のことを想い、そして仏様に失礼のないように荘厳を整える気持ちを持つことで、よりいっそう仏事に念が入ります。
仏法に出あうというのは、ただお寺に参り、ただお経と法話を聞くだけではありません。気持ちよく手を合わすことができる環境を用意することも大切なのです。
掃除で悟りを開いたお釈迦様の弟子
お坊さん(住職)の大切な仕事はお寺の掃除です。これは大きなお寺から、地方の田舎のお寺まで同じことです。時として門信徒の助けも借りてお寺の美化が維持されています。
お釈迦様には10人の有名な弟子がいます。その中の一人、周利槃陀伽(しゅりはんだか)という人は、掃除をただただし続けることによって悟りをひらかれたと伝えられています。以下のサイトが分かりやすく法話されていますので、よろしければ読んでください『周利槃特(しゅり・はんどく)の悟り』
周利槃陀伽は「ちりを払い、あかを除かん」と唱えながらひたすら掃除を続けるうちに、ちりやあかとは自分の執着心のことだったと気づき、悟りを開いたと言われています。
掃除というのはただその空間を綺麗にすることだけを目的にしているのではなく、どんなに綺麗にしてもしだいに汚れていき垢がたまるものであり、掃除を通して自分の心の働きも同じであったのだと気が付くことができるのです。
汚れたらまた掃除をするということそのものが、私たちの生きる姿を表わしていると気づくのです。自分の名すらも覚えられなかった周利槃陀伽はお釈迦様に命じられた掃除をただこなすことによって、自分の心の汚れに気がつくようになったのです。
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さいごに。掃除は単純なようで大切なこと
お寺のお坊さんは周利槃陀伽のように高尚な意識があって日々掃除をしているとは言えないと思います。私がそうだから。
どちらかというと日々の掃除は単純であり、怠けてしまいがちです。その点で周利槃陀伽には頭が上がりません。
しかしお寺のお坊さんは有難いことに、一年間に何度も大きな法要があります。春秋の永代経や報恩講やお盆法要や灯籠流しなどなどです。そのご縁があるからこそ、怠けがちな私も何とか掃除を続けることができています。
掃除をするのは大変なことです。この記事を書いている8月の今は、35度以上の気温の中、汗水を流しながら草抜きなどを毎日続けています。
しかし掃除することによってすっきりと気持ちよくお参りをすることができ、心の垢を落とすことができます。もしも掃除をしなければ失礼なことをしたなあと晴れやかな気持ちでお参りができません。
今回はお寺のお坊さんの大切な仕事が掃除であることを紹介しました。でもこれはお仏壇でも同じことが言えます。お仏壇はお寺のミニチュアであり同じく仏様を安置しています。
ご門徒宅にお参りに行きますと仏壇周辺に埃がたまったままということがよくあります。そういう家では読経中に家の人が後ろにいないケースが多いです。掃除は意識せずにはできないので、綺麗に整えられた仏壇のある家では自ずと仏様にお参りする習慣が生まれます。
皆さんも仏様に手を合わしたい・先祖を敬いたい・仏教を知りたい・自分自身をみつめたいと思うのであれば、単純なようで大切な掃除をまず初めてみてはどうだろうか。毎日するのが難しければお坊さんが来る時だけでもやってみては。