僧侶が門信徒らと一緒に旅行する時に気を付けること

こんばんは。 僧侶のかっけいです。

団参(だんさん)という言葉をご存知でしょうか。

団体参拝という言葉を省略したもので、各地方の末寺が門信徒らと一緒に本山に参拝することを指します。

しかし最近では団体参拝旅行をするお寺は減りつつあり、団参という言葉も伝統仏教教団では使用される機会は減りつつあります。(例えば浄土真宗の一部宗派では念仏奉仕団という言葉に変わりつつあります。)(一方で天理教などの新興宗教では団参を使用しています)

一昔前は地方寺院では門信徒らに案内をして、本山で大きな法要がある時にはその都度団体参拝をしていたのですが、現在では地方寺院は活力を失っており、なかなか団参ができない状態です。

私の所でも今回久しぶりに自坊主催の団参を催行し、京都本山や世界遺産を巡拝してきました。

今回は門信徒らとの旅行を通して感じた、僧侶が注意していくことを書いていきます。次回以降の改善点として。

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要点一覧。

  • 団体旅行は30名以上が望ましい。
  • 引率の僧侶は2名以上は必須。
  • 参加者の性格・特性をある程度把握する。
  • 緊急時の連絡先(携帯電話番号)を確認する。
  • 僧侶は寺社参拝の時には(簡易な)衣と袈裟を身に付ける。
  • 門信徒らには念珠・式章をお願いする。
  • トイレ休憩はこまめに設ける。
  • 長時間・長距離の歩行は避ける。
  • 主催者は下見をしておくべき。
  • 拝観の時間配分を事前に検討する。
  • 各自の自由行動時間を設けること。
  • 移動や宿泊はプライベートを保つこと。
  • 宿や食事処の確保は難しい。
  • バス内で見どころ・歴史・宗派・本尊などをある程度説明。
  • バスガイドは要不要あるが、現地ガイドはあった方がいい。
  • 参加者の年齢層・世代を下げる努力をする。
  • 具体的には平日を避ける。日帰り旅行にするなど。
  • 旅行案内は日時だけでも早めにすること。
  • 友引を選ぶこと。
  • 慰安旅行ではないことをはっきりすること。
  • 寺院側は赤字旅行をする覚悟。

旅行参加者は多ければ多いほど良い。

人数が増えると一人当たりの参加料金が減る。

今回の団体参拝では最低催行人員を25名に設定しました。(実際には住職若坊の2名を合わせた23名となりやや足りませんでしたが、催行しました。)

この25名というのは明確な根拠はありません。

ただ中型バスの定員数が27名・大型バスの正席が45~50名程度であることがほとんどであり、移動時のゆったりとしたプライベートな空間を保つためには、できるだけ大型バスでの旅行をしたかったのです。

旅行というのは人数が多ければそれだけ一人当たりの負担額が減ります。

仮に大型バスのチャーター料金が30万円であったとします。参加者20名ならば一人当たり1万5千円ですが、30名ならば1万円で済みます。

また京都の寺社仏閣の団体参拝割引は「30名以上から」と設定している所が多いことも注意すべき点です。

ただ人数が増えると行動をまとめるのが大変。

寺院主催の旅行ですから寺院を観光し、歴史・伝統・教えなどを感じていくのが主目的となります。

ですのでできるだけご仏縁を頂くためにも、多くの人の参加を望みたい所です。

ただ人数が増えると様々な特性の人がいるということも理解しなくてはありません。

例を挙げます。

  • 足が悪く、行動の遅れる人
  • 先導者よりも先に先に進んでいく人
  • 写真撮影で周りの行動が見えなくなる人
  • 旅行内容に愚痴をこぼす人
  • 迷子になる人

今回は23名の旅でしたが、それでも一行をまとめるのが苦労しました。

住職が先頭を歩き、私が最後方を歩いていたのですが、列はどんどん長くなり、さらには写真撮影で脇道に反れる人もいます。

僧侶一人だけでは到底行動をまとめることができず、最低でも僧侶は二人以上は必要です。

特に移動しながらの見どころ・歴史・宗派・本尊などの説明は後ろの方まで声が届かないことがほとんどであり、前後の僧侶がそれぞれに説明する必要があります。

また移動時というのはカメラ機能を操作したりパネルを読んでいたりと、説明を聞いていないことが多いので、到着前のバス移動時に事前に説明しておくといいでしょう。

ちなみにトイレ休憩はこまめに確保しましょう。

年配の人は若い人よりもトイレ行く頻度が多いので、1時間半ごとに、長くても2時間以内にはトイレ休憩を確保しておくのが無難です。移動前には次のトイレ休憩までの見通しも伝えておきましょう。

旅行の目的・旅行の雰囲気を大切にする。

今の時代は昔よりも旅行に行くのがごくありふれたものになっています。

地域の会や組合で慰安旅行をしたり、勤め先で社員旅行にいくこともあります。個人での旅行も多くなりました。

一方で寺院が主催する寺院観光の旅行というのはやや趣旨が異なります。

今回の私たちの旅は、「本山の参拝と、京都世界遺産巡拝」がテーマでした。

門信徒らにとっても宗派を代表する本山にお参りしたという人は非常に少ないです。

本山を知らずに見ることもなく、自身の宗派の特徴・教えを理解することはできないでしょう。もっと言えばどこにあるのかも知らない人も多いことでしょう。

檀那寺が主催する旅行というのは、慰安旅行ではなく、多くの人に仏教の教え・伝統に触れること、世界遺産や国宝級の建築物・資料などを実際に目にすることで、歴史の重みや繋がりに気が付いてほしいという狙いがあります。

決してお寺が門信徒らに労う(サービスをする)という旅行ではなく、参加者一人一人が学ぼう・知ろうという意識をもって参加してほしいところです。ですので宿泊場所に温泉がないとか、食事がいまいちというの的外れな意見です。(それは旅の目的ではありません)

当然寺院に参る時には僧侶は簡単な衣(道服や輪袈裟)をし、門信徒らは式章などを身に着けて身を引き締めます。念珠ももちろん用意します。

寺社仏閣や世界遺産を参るのに、ラフな格好をするのはおかしいですよね。

時間配分が難しいこと理解する。

今回本山では一時間半以上の時間を用意していました。

しかしそれら以外の場所は一カ所当たり一時間の時間配分をしていました。が、それは誤りでした。

場所によっては特別展の拝観により想定以上に時間が必要であったり、意外な出来事が発生することもあります。

想定よりも短い時間で済むこともあります。

そのため主催者はあらかじめ下見をするなど、時間配分に注意する必要があります。

今回の旅行では「あちらでもう少し時間をとって欲しかった」という意見もありました。

一時間では駆け足になることもあり、お年寄りの脚ではやや辛いところもあると感じました。

また自由時間・お土産を買う時間も確保する必要があります。

今回は夕食終了後、宿泊場所に6時半ごろに戻り、そのご自由行動時間をとりました。京都駅に行き土産を買う人もいました。

またすべての拝観を終え、帰路に就く前には土産店に行きました。土産というのは旅にとって大切な点だとも思います。

最後に土産店に寄ることを行程に入れておくことで、拝観時に行動がバラバラにならずに済むメリットもあるでしょう。

参加者や年齢層を増やす努力をする。

今の時代は旅をするのが珍しくなくなり、檀那寺が計画した旅行にも積極的に参加する人は少なくなっています。

しかし旅というのは正寺の表対面所、そして宗派僧侶でも滅多に入れない奥対面所・内仏を拝観しました。仁和寺では有難いご縁で金堂に入れてくださいました。

仏教や宗教に触れる機会、檀那寺や門信徒との交流など、幅広い年齢層の多くの参加が望ましいです。

そのためにはなるべく土曜・日曜日・祝日の旅行、場合によっては日帰り旅行にする必要もあるでしょう。二日目を友引にして急用が入らないように努めるのも大切でしょう。

小さなお子さん・若い両親などが気軽に参加できるように努めたいが、一方で土曜日というのは宿泊費が高くなる曜日、日帰りはスケジュール過密などデメリットもあります。


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さいごに。続けていくのが大切。

団参をしている末寺の少なくなっています。

それは寺院が赤字の中で負担をしながら旅行を主催しているからです。

多くの参加者があれば、寺院側も頑張って旅行を計画催行するのですが、年々参加者が減りさらには参加する顔ぶれが同じ人ばかりに固定化されてしまう傾向があります。

しまいには慰安旅行のように、寺院拝観ではなく温泉に行くのがメインに変わっていったりと本末転倒の旅行になることもあります。

なかなか団参を継続していくのは難しいです。

しかし檀那寺との繋がり不足、宗教離れが目立つ現代では、寺もある程度の赤字をしても続けていればと思います。

本山の大きな法要に合わせての旅行も今後は考えていきたいです。

ちなみに平成31年(2019)の旅行は4月下旬の友引、具体的には4月21・22日の日月曜日の一泊二日、もしくは日曜日のみの日帰りで検討しています。

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