こんばんは。 僧侶のかっけいです。
お坊さんはお経本を読みます。それも繰り返し繰り返しです。
お坊さんは蛇腹折りと言われる製本方法をとった経本を読むことが多いです。
蛇腹折りとは、山折り・谷折りの順に端から均等な幅で折る折り方のこと。
何年も読み続けていますと紙も弱りますので、折り目の所が裂けていきます。破れ切ってしまうとめくるのが面倒になってしまいますので、定期的に補修しなくてはなりません。
今回は『蛇腹折りの本の破れを直す方法』を紹介します。
蛇腹折り本の破れ方を紹介。[前置き]
お経本には巻物形式や、現代では一般的な無線綴じ、紐を使った昔ながらの和綴じなどがあります。
でも現代のお坊さんは蛇腹折りの経本をよく使います。
理由は3つあります。
- コンパクトな大きさにできる。
- 読みたいページだけを開いたままにできる。
- 手ぶらな状態で読めるので、道具を使うことができる。
これらのように蛇腹折りは経机に経本を置いて読む僧侶にとって非常に便利な製本方法なのですが、長く使用していると折り目の所が弱くなります。
その結果、上の写真の様に折り目の所がビリビリと裂けていきます。
破れ切ってしまうと本が分離してしまいめくるのが難しくなるので、補修しましょう。(ちなみに上の写真は直すのが遅すぎます。破れ始めの頃に直せば、楽に直せるし悪化もしにくくなります)
紙の破れには紙を使うこと。
さて、直し方は主に2パターンあります。
- メンディングテープやマスキングテープを使うこと。
- 紙と糊(のり)を使うこと。
どちらが良いのかは決められませんが、簡単なのはテープを使うことです。破れたところをさっと貼るだけでですからね。
楽譜を持っている人はそのテープを利用して直すこともあるでしょう。楽譜や経本を修繕する専用のテープやシールもありますからね。
ちなみにセロハンテープは使用しない方がいいです。なぜなら貼った時は見た目が綺麗でも劣化が早く数年で茶黒く変色します。また触感がツルツルしており紙の本をめくるのに違和感を覚えてしまいます。
でも今回は紙を使った直し方を紹介します。紙の破れには紙が最も馴染みやすいと考えるからです。
補修に使う道具と材料。紙は障子紙がおすすめ。
補修に使う道具は糊とハサミです。
糊はスティックのりでもいいですが、私は教えられたように水のりを使用しています。
そして紙には障子紙を使用します。
障子紙は適度に透かし効果があり、仮に文字の上に紙を貼ってしまっても下の文字を微かに読むことができますし、紙ですので文字を書くこともできます。
また水に強く破れにくく丈夫ですし、価格も安価なことが多いです。ホームセンターに売られているのもいいですよね。
また障子紙は一般家庭でも広く使われているので、ホームセンターによっては持ち帰りできるサンプル品が置かれていることがあります。
本の修復には数センチの横幅があれば十分なので、このサンプル品で事足ります。つまりはタダですね。
今後障子を直すときの参考にするために、本の修復時に使用感を確認してもいいでしょうね。
直し方手順と注意事項2点。
直し方は非常に単純です。
障子紙を破れた箇所の長さ分、そしてそれよりも少し幅広の長さ分を切り取ります。
そして水のりを塗って、ズレない様に貼るだけです。
ただし直すときには注意する事が2点あります。
- 糊付けはザラザラした裏面に。
- 補修用の紙は両面に貼るか、片面なら山折り側に。
障子紙は表面が結構つるつるしています。こちらに糊付けして破れ個所に貼ろうとしてもつるつるしているので、非常にやりにくいです。一方でザラザラ面は水のりを伸ばしやすいですし、破れ個所に貼る時にもつるつる面の時よりも少し楽になります。
そして破れ個所に障子紙を貼る時には両面から貼るのが一番丈夫なのですが、それだと修繕後に本の厚みが大きくなってしまいます。直すところが少ないなら両面の方がいいですが。
ですのでもしも片面のみに貼るのであれば、山側から貼ることがお勧めします。
山側に貼ると、ページをめくる時に開きやすくなります。力が上の画像の様に引っ張られるからですね。
一方で、谷側に貼ると引っ張られる力が谷の内側に向いているので、開きにくくなってしまいます。
もしも音木を打ちながら経本をめくるなどの場合では、上の写真の様になってしまい、非常に読みにくくなってしまいます。
ちょっとのことですが、片面にのみ紙を貼り直す場合は、山折り側に貼ることをおすすめします。(まあしばらく使っていますと、障子紙の力も弱まり差は無くなりますが。でも直した直後は不便です)
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さいごに。補修に関する関連ページ。
今回は蛇腹折りの本(経本)の直し方を紹介しました。
簡単な直し方はテープ(セロテープ以外)ですが、紙と糊を使って直す方法もあります。
障子紙を水のりで貼り補修した直後はゴワゴワした状態で不安になるかもしれませんが、しばらくすると馴染みます。
また一度にたくさんの破れ個所を直しますと、本の厚みがやや増しますが、それは何度も読んでめくることで紙が擦り切れやはり馴染みます。
ちなみに「国立国会図書館 資料保存課」は『簡易補修テキスト』をPDFファイルでインターネット上に公開しています。
破れたページの繕い方法や使用する道具、補修に関するヒントなどが細かく記されています。
そちらも参考にしていただければ幸いです。