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讃岐弁「わや・ごじゃ・めげる」,似た意味の方言使い分け

投稿日:2018年6月23日 更新日:

香川県丸亀市在住の僧侶かっけいです。

香川県(讃岐)には讃岐弁という方言があります。生まれも育ちも香川の私にとって讃岐弁はありふれたもので、お参りに行った家々では日常的に使います。

しかし一口に讃岐弁と言っても、香川の西・東・南と地域ごとに微妙に違います。また丸亀市だけで使われる言葉もあります。(例えば「ごんな」です。会話で使う人は少ない)

今日お参りに行きますと、短い会話の中に「わや」と「ごじゃ」と「めげる(めぐ)」の方言が出てきました。私たちは感覚的に使い分けているのですが、いざ説明しようとすると難しいものです。この似た意味の使い分けについて書いていきます。


「わや」と「ごじゃ」は形容動詞的な使い方で、非常によく似た意味

  • わやになる。わやだ。
  • ごじゃになる。ごじゃだ。ごじゃはげだ。

このような形で「わやな状態」・「ごじゃな状態」を表現したいときに使います。

形容動詞的な使い方しかないように感じますが、『わやをしたら・わやを言ったらあかんで』とも使います。ただこの使い方は香川県に限ったことではなく、無茶をしたらあかんよという意味合いで全国各所で使われています。

香川県では「わや」と「ごじゃ」の無茶苦茶な状態をあらわす二つの方言があり、ほとんど同じようなニュアンスで使います。しかし全く同じかと言えばちょっと違います。

  • わや:正常な状態から収拾のつかない乱雑な状態になる時
  • ごじゃ:正常でない状態であり、元に戻したい気持ちを表す

[使い方の一例]

  • 『台風でわやになる』使う→『台風でごじゃになる』とは言いにくい。
  • 『お見合いがごじゃになる』使う→『お見合いがわやになる』とは言いにくい。
  • 『髪型がわややなあ』・『髪型がごじゃやなあ』→どちらも使うが、感じ方が違う。

「ごじゃ」という言葉をイメージすると、「ご破算(ごはさん)」に一番近いと思います。つまりは「今まで進めてきたことや状態をすっかり元に戻すこと。白紙の状態にもどすこと。」です。

一方で「わや」のイメージは「観念」に近いと思います。つまりは「あきらめて、状況を受け入れること。覚悟すること。」と、がっくりとため息が出そうなときの言葉です。

使う人の心持としてはこんな感じです。

  • 「わや」は諦めの状態・がっくりしている。
  • 「ごじゃ」は元に戻す気持ちがある。まだ元気。

それを踏まえてもう少し例を見てみます。

  1. 『はあ~。なんで部屋をわやにするの。部屋をわやにしたら駄目よ。』
  2. 『おいおい。部屋をごじゃにしたら駄目やで。』

どちらも同じように感じますか。前者の「わや」は親が子供に対して諦めの気持ち・いらだちの気持ちで使っています。一方で後者の「ごじゃ」は部屋がまだ綺麗な時に注意のために優しく使うこともできますし、部屋が散らかっているときに、綺麗に片付けなさいよという気持ちで使うことができます。

「わや」と「ごじゃ」は感覚的な使い分けなので、使用している香川県人でも上手く説明しにくいです。

めげる(めぐ):壊す・壊れる時に使う。人に対してはほぼ使わない

「めげる」は「わや」や「ごじゃ」と違い、動詞としてそのまま使います。

めげるは「めぐ」が基本形で、そこから「めげる」や「めがす」、「めいで」などと変化します。意味は「壊す」です。

  • 茶碗がめげた(めいだ)。→茶碗が壊れた(壊した)。
  • 茶碗をめぐ(めがす)。→茶碗を壊す。
  • 茶碗をめいどく。→茶碗を壊しておく。

こんな風に使い分けます。例えば、小さな子供におもちゃを買うたら『めいだらもう買わへんで』とも使えますね。

似たような言葉に「いわす」・「へしゃぐ」・「つぶれる」があります。

「いわす」は主に人に対して使い、『腰をいわして重いもんがもてへん』といったように、体の調子が悪い状態を表すときに使用します。壊すというよりも、いためるニュアンスで使います。

「へしゃぐ」は物が本来の厚みよりも薄く潰れる時に使います。いわゆるぺちゃんこの状態ですね。「ひしゃぐ(ひしゃげる)」ともいいます。また物が折れ曲がった時にも使います。

「つぶれる」は複数の意味があって、『うどん屋がつぶれた』という風に、いわゆる倒産・廃業の意味でも使用します。ただしこの場合は建物の形が残っていても使います。商売・機能しなくなった建物で使うことで、例えば住職不在の寺を『お寺がつぶれた』と言います。建物そのものが壊され無くなった場合は、『うどん屋が無くなった』と使います。また、へしゃぐのように物が押しつぶされる時にも使います。他にも物が故障している・壊れているといった、道具の調子が悪くて本来の機能が満足でない時にも使います。

じょんならん:使えない状態。どうにもならない状態

「じょんならん」は言葉が長いのか、そんなに使用頻度の多くない言葉です。たまに使われますが。

どうにもこうにもいかへん時に使われます。お手上げ状態ですね。

物や人、どちらに対しても使えますが、人に対して使用する時は相手の気分を害する可能性が高いです。目上の人が目下の人に対して注意する時に使いますかね。

ただしこんな時には使えます。『手がかじかんで、指がじょんならんなあ~』と、誰であっても同じようでありどうにもならない状態だと笑いながら使えます。

ちなみに上で紹介した「わや」とも比べておきます。どちらもお手上げな状態を表します。

  1. 『台風でわやになる』→周りの状態がめちゃくちゃになり、物理的にどうしようもなく辛いような感じ。
  2. 『台風でじょんならん』→台風で状態がめちゃくちゃになり、自分の気持ちが落ち込んで辛い感じ。
 

さいごに。方言は感覚で話すもの。難しく考えなくてOK

今回似たような意味の方言の微妙なニュアンスの違い、使用例を紹介しました。

今回の説明を聞いて、そうだそうだと頷く香川県民もいれば、ちょっと違うと納得しない人もいるでしょう。あえて文章で違いを説明するとこのような感じになりました。方言は生活の中で自然と身に付いた独自のコミュニケーションなので、使い方も感じ方も同じ香川県民でも違うでしょう。

それで言えば私は丸亀に住んでいますが、高松にお参りに行きますと、『いね・いんまい』と言われます。最初の頃は失礼なことをしたかなあと心配したのですが、その人にとっては普通のお見送りの言葉だったようです。

他にも祖母がよく使う言葉に「ひしてがい」があります。意味は分かるのですが、自分が使わないので調子が悪いと頭にはてなマークが出てきます。この「ひしてがい」は病院や薬局でよく使われるかな。『ひしてがいのお薬』、『ひしてがいに行く』と。「ひしてがい」は讃岐弁の「ひして」と「がいな」とは意味が違います。

香川県は日本で一番狭い県ですが、方言の微妙な違いもたくさんあります。大雑把に言えば、土器川を境に東西の方言が変わります。それは高松藩と丸亀藩の領地が土器川で分かれていてからだとも言われています。また香川県の方言は京都の古語に近いとも言われています。都からの流罪の地だったからね。

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