こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
皆さんはお坊さんを家のお仏壇でお勤めしていただくときに、急に悩んでしまうことありませんか。
お坊さんが来る前には部屋を暖めておいたり冷やしていたり、座布団や飲み物を用意することには事前に気が付いているのですが、いざお勤めが始まろうとすると急に疑問に感じることがありますね。
お仏壇のローソクや線香は、お坊さんにつけてもらうのか、それとも家の人がつけるのか。
単純なことのようですが、意外と疑問に感じている人が多い印象です。
今回は浄土真宗のお坊さんが、お仏壇のローソクやお線香を誰が灯すのかを説明します。
(浄土真宗以外の宗旨では、ひょっとしたら当てはまらないかもしれないので注意ですよ)
先に結論を。家の人が火をともすのが基本。
今回は結論を先に言います。
家の人が読経開始前に用意します。
なぜ家の人が用意するのだろうか。
私はこのブログで口酸っぱく何度も紹介している言葉に、「献灯(けんとう)・献花(けんか)・献香(けんこう)・献供(けんぐ)」があります。
これらは仏様にお参りする際の基本となります。
(献灯とはお光をあげること、献花とはお花をあげること、献香とはお香をあげること、献供とはお供えをすることです。)
想像してみてください。お坊さんがお参りに来る前にはお仏壇にどのような用意しますか。
- 生花を用意して花立てに活けますね。
- 新しい蝋燭やお香を用意し、燭台や香炉を整えますね。
- お仏飯やお菓子や果物などをお飾りしますね。
これらの行為は浄土真宗で使われる言葉では、「仏様へのお給仕(おきゅうじ)をさせていただく」と表現します。
お仏壇とは仏様を安置する・お飾りする場所です。
献灯・献花・献香・献供をすることによって、自ずと仏様へのお世話をさしていただき、さらには自ずと仏様の前にお参りするご縁にあうのです。
ただこれらの献灯・献花・献香・献供には注意が必要です。
お花は生花を花立てに、お供えは所定の場所にお飾りすればオーケーなのですが、お蝋燭とお線香は用意するだけでなく、点火をしお光を灯すことや香煙をくゆらすことによってはじめて献灯と献香ができたことになるのです。(蝋燭や線香を置きっぱなしの状態では、お飾りしたことにはならないですよね)
家の人が献灯・献花・献香・献供の仏様へのお参りの作法を完成させるためには、僧侶による読経が始まる前にお蝋燭やお線香に点火し、献灯・献香をする必要があります。
でもお坊さんが蝋燭にも線香にも点火することあるんじゃないの?
本当はお坊さんをお招きした家の人がお蝋燭とお線香に点火することが大切なのです。
でも実際にはお坊さんがお仏壇の前に座り、お蝋燭に火を灯し、お線香の煙を燻らしてくれますよね。
あれはですね。お坊さんがサービスでしてるといいますか、気を利かしてしているのです。
例えば法事の時では家の人がドタバタと忙しそうに動き回っていますよね。そんなときに家の人の手を止めて「お蝋燭やお線香に火を灯してください」とは言いにくいのです。(本当はお坊さんが言わずとも、献灯・献香をするのですが)
また祥月命日やお盆の勤めや報恩講のお勤めなどでは、お参り先におばあさんやおじいさんしかいないときもあります。献灯・献香をするには火を使わなければなりません。体が十分に動かなかったり、視力が衰えており、おぼつかなく危険なこともあります。そんなときにはお坊さんが代わりに献灯献香をしたりします。
またですね。冒頭で紹介しましたように、お坊さんがつけるのか家の人がつけるのかわかっておらず、それならとお坊さんが気を利かしてそそくさとロウソクと線香に火を灯すのです。
もうひとつ、読経の途中でお蝋燭やお線香が燃え尽きてしまうことがあります。そんな時には読経の手を止めずに、お坊さんが新たなお蝋燭やお線香をセットして献灯・献香をすることがあります。
このようにお坊さんが蝋燭や線香に火を灯すことがあるので、ひょっとしたらお坊さんが蝋燭と線香に火を灯すのが正式な作法なんじゃないの?と勘違いするのかもしれませんね
実は蝋燭や線香を灯すのが、読経するお坊さんではないのは仏壇だけではない。
お坊さんがお仏壇のおローソクやお線香に火を灯さないのはここまで説明した通りなのですが、実はですね、この献灯・献花・献香・献供というのはお寺であっても、葬儀社のような会館であってもお墓であっても読経するお坊さんは用意しないのです。
例えばわかりやすい例でいえばお墓ですね。
これもお仏壇と同じで、家の人がお花をお供えをお飾りし、蝋燭と線香に火を灯してからお坊さんが読経を開始しますね。
次の例は葬儀社などの会館での仏事です。(仏事ですから、お通夜や葬儀や年忌法事のことですよ)
会館で仏事をするときにはお坊さんが控室で控えており、所定の時間が来れば会館の職員が声をかけ、仏事場所に移動しお勤めしますね。お坊さんが入堂するときにはすでにお供えやお花が飾られているのは当然こと、お蝋燭やお線香にも火がつけられていますね。
お坊さんはそのまま入ってきてそのままお勤めをするのです。(これは家の人がしないといけない献灯・献花・献香・献供をお金を支払って会館の人に代わりにしてもらっているのです)
最後は一番わかりにくいことかもしれませんが、実はお寺のお飾りの際にも読経するお坊さんは献灯・献花・献香・献供をしないのです。
例えば、お寺の場所を借りて年忌法事をしようとするときはお坊さんが家の人の代わりに事前に献花献供をしており、読経前にお坊さんが献灯献香をします。これは本堂内陣と呼ばれるところが僧侶しか入ることができないからです。(一般の人は参拝席や外陣までしか入れないので)
例えば、お寺で永代経法要などの法要があるときはお供えやお仏飯やお花のお飾りをしますが、これらは門信徒からのお布施や護持金によりできていることです。お坊さんはご門徒の皆様からの懇志により仏様にお荘厳ができているのです。また法要開始数分前にはお坊さんが内陣内に入ってお蝋燭やお香の最終お飾りをします。実はこれらの献灯献香は内陣でお勤めをするお坊さんがすることはないのです。末寺でも昔からの付き合いで外陣に座るお坊さんが法要開始前に蝋燭やお線香に火を灯しますし、本山や別院では知堂(ちどう)や堂掌(どうしょう)と呼ばれる法要儀式時に荘厳・お飾りに従事する役職の人が存在しています。
つまりお寺での仏事であっても内陣に出勤し読経する僧侶はおローソクやお線香を灯さないのです。
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さいごに。わからないことはお坊さんに聞こう。
お坊さんが読経する前に家の人がすすんでお蝋燭やお線香に火を灯すのは、丁寧な家や篤い家ほどしっかりしているように感じます。
それはその家の人が幼いころから家族の仏様へのお給仕の様子を見ていたり、家族内での仏様へのお給仕の仕方が相続されているからです。
ただすべての家でそのような正しいお仏壇のお飾り方を受け継ぐことができていることも限りませんし、誤って覚えていることもあります。
相談できる親戚や地域の人がいればいいのですが、それでも宗派によっては教義や勤式作法が大きく異なっていることも多々あり、自分の家の宗派とは違った形で理解してしまうこともあります。
仏教に関することやお飾りに関することは、自分が普段から頼りにしているお坊さんに相談するのが一番間違いないことです。
ここで紹介したお蝋燭やお線香を誰が点火するのかという疑問も浄土真宗のお坊さんからの説明です。
ひょっとすると宗派によってはお坊さんがつけるものだというところもあるかもしれません。ですので、一度お坊さんに尋ねてみてはいかがでしょうか。