こんばんは。 僧侶のかっけいです。
葬儀社などの会館でお勤めするときに、お坊さんが下の写真のような赤い色(黒色のこともある)の変な形の椅子に腰かけていることありますよね。
こんな変な椅子、お坊さんしか座らないですし、名称も知らない人が多いんじゃないですかね。
今回はこの椅子の名称と意味について紹介します。
椅子の名称は「曲録(きょくろく)」。漢字の意味は。
この椅子の名称は曲録(きょくろく)といいます。
ただですね。厳密には録ではなく、「彔(ろく)」や「椂(ろく)」が正式な漢字です。(でも現実には曲録という漢字表記が浸透しています。)
辞書による曲録の説明。
【曲彔・曲椂】〘名〙
①仏語。僧家で用いる椅子。主として僧が法会などで用いる。背のよりかかりを丸く曲げ、四本の脚は牀几(しょうぎ)のようにX型に作ってあるもの。全体を朱または黒の漆で塗り、金具の装飾を施す。曲目(きょくもく)。
日本国語大辞典ー第2版ー
僧家とは僧侶のいる建物、寺院を意味します。
辞書には曲録ではなく、曲彔や曲椂で紹介されています。
録ではなく、彔や椂が正しい。
録(ろく)の漢字で曲録を表記されることが多いですが、実際には違います。録とは例えば記録や録音の熟語のように、「書きしるす、写しとって保存する」という意味合いです。
一方で彔(ろく)や椂(ろく)とは、「木をきざむ・けずる」という意味合いです。
曲録(曲彔)とは、曲彔木という言葉が由来とされ、木を削り背もたれのところを曲げた形の椅子を表しているとされています。
曲録(曲彔)が使われるのはどんな時。
曲録(曲彔)とは上の写真のように、足の長い背高経机とセットで使われることが多いです。
また、会館などの床がカーペットやコンクリートやフローリングの時に使われます。
ですので、お寺のように畳の上では使われにくいです。
当寺でも畳が敷かれている本堂では曲録(曲彔)は使われず、カーペットが敷かれている納骨堂で背高経机と合わせて使われています。
また曲録(曲彔)とは仏事法要の進行を執り行う導師(どうし)と呼ばれるお坊さんのみが座る印象ですが、実際には役僧(やくそ)と呼ばれるお坊さんにも簡素な曲録(曲彔)が用意されます。
曲録の良いところ。曲録を使う理由。
曲録の良いところは、牀几のように折り畳みができることです。
折り畳みができるということは、場所を取りにくいですし、持ち運びも楽になります。上の写真のように、壁に立てかけることもできます。
また、なぜお坊さんが曲録を使うかという理由ですが、おそらくですが立派に見えるからだと思います。
もちろんお坊さんも参列者と同じようにパイプ椅子を使ってもいいのですが、仏事を執り行っている・進行しているお坊さんを惹きたてるために使っているのだと思います。
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さいごに。曲録の座り心地。
曲録という椅子はお坊さんしか座ることがないので想像できないでしょうが、曲録は椅子としてはかなり酷いですよ。
座り心地は最低です。
曲録にもいろんなデザインの曲録が売られているのですが、高価な曲録には足置き台がついていることがあります。
でもですね、足置き台に足をのせますと膝が70・80度に曲がるので自ずと前傾姿勢を維持しないといけなくなります。
また背もたれ部分が後ろ方向に大きく曲がっており、背中を預けることが難しいです。背もたれ部分は飾りみたいなもんです。
またなぜか腕置台の位置も高いため、肘をつくこともできないですし、右手にある大鏧を鳴らすのも大変です。
曲録とは仏事を執り行っている僧侶に貫録をつけるために使う椅子だと思いますので、実用性の面から見るといまいちです。
ちなみにですが、曲録の正式な表記の曲彔や曲椂が使われなくなった理由は、「彔」や「椂」が日本では使われにくい漢字だったからだと思います。この二つの漢字を使った熟語って、ありますかね。