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華鬘(けまん)のお飾り.#273

第273回目のラジオ配信。「華鬘」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

内容まとめ
  • 華鬘は仏さまの頭近くに飾られる仏具
  • 垂れ下がったもので仏さまのお顔が見えにくくなる?
  • 仏様は仰いで拝む
  • 佛には「ほのか・かすか」の意味がある
  • 彷彿には「ありありと見える」の意味がある
  • 華鬘は仏さまをありありと見ようとするご縁になる
華鬘で阿弥陀仏のお顔が見えにくくなっている
華鬘で隠れた阿弥陀様のお顔

かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。

今回は、仏さまの顔が見えにくくなる仏具、華鬘についてのお話です。

皆さんは華鬘という仏具をご存知でしょうか?お寺の本堂に安置されている仏さまには掛けられていることが多いでしょうが、ご家庭のお仏壇にはないこともあります。

あれって不思議な仏具で、華鬘があることで仏さまの顔が見えにくくなっているんですね。
一見すると邪魔なように見えるかもしれませんが、やっぱり意味のあるお飾りです。

華鬘は華と髪飾りの漢字で表されるように、華のような髪飾りで、仏さまの頭付近、頭の上にお飾りされます。

ご仏前を装飾し、仏さまを敬うために使われている仏具です。

おそらく仏様の一番近くに飾られる仏具でしょう。

それで、今日のお話のテーマは仏さまの顔が見えにくくなることです。
華鬘には紐のような鈴のような球のようなものが垂れ下がっています。
この垂れ下がったものによって、仏さまの顔が見えにくくなるんですね。

でも私はこのように見えにくくするのが正しいお飾りだと思います。
理由は仏様は敬って拝むものだからです。

そもそも仏様をどのように拝みますか。
姿勢を正して仰ぎ見ますよね。

立ったままの状態で、私たちと同じ目線で拝むことは基本しませんよね。たいてい少し見上げるように仏様のお顔を見ますよね。
上から見下ろして拝むなんてもってのほかです。
仏様は尊い存在なのですから。なるべく見上げて拝みます。

まあ最近は二階や中二階のお参り席があるお寺も出てきていますし、劇場や音楽ホールでの仏教イベントのこともあるので、仏さまを下にして拝むというケースもあるでしょう。
でもそういった例外は除くと、基本は仏様は見上げるようにして拝みます。

華鬘のお飾りがあることによって、仏様と同じ高さにいるときはお顔を見えにくくし、見上げて拝むときにお顔がはっきりと見えるようにします。

実は仏様も半眼といって少し伏し目がちにしています。私たちが見上げるようにお参りするとちょうど仏様と目が合うようになっています。

華鬘のお飾りにはそういった働きもあるんですね。

ちなみに佛という漢字には、ほのか・かすかといった意味があるのをご存知でしょうか?

佛の漢字は、悟った人・仏陀の意味だけではないんですね。

佛の漢字を使った熟語には彷彿があります。彷も「ほのか」や「はっきりしない」といった意味があります。

彷彿には「ありありと思い浮かぶ・ありありと見える」といった意味があるように、ほのかに見えるものは、一見すると見えにくいかもしれませんが、いや実は逆にはっきりと浮かび上がってくるものだと思います。

華鬘のお飾りは一目、仏さまを見えにくくするかもしれません。
しかし垂れ下がった紐の隙間から仏さまのお姿を拝もうとする姿勢は、逆に仏さまをありありと見ようとするご縁になるのだと思います。
佛の一字には、ほのか・かすかの意味も含まれているということを今日ひとつ知っていただければと思います。

Keman shinran
華鬘でお顔が見えにくい親鸞聖人

華鬘には金属・木・皮で作られた金華鬘のほか、糸で編まれた糸華鬘があります。

正しい使い分けは分かりませんが、宮殿(くうでん)には金華鬘、厨子には糸華鬘らしいです。

かっけい
かっけい

8年ほど前に、華鬘と戸帳(とちょう)について書いたブログ記事があるので、以下にまとめますね。


お仏壇はお寺の内陣の様子をコンパクトなサイズで表現したもので、仏壇屋独自のデザインが施されていますが、基本となるものは同じです。

お仏壇に飾られているものは仏具と呼ばれ、それぞれに名称があり役割があります。

今回は一番目にするところにある仏具「戸帳と華鬘」を紹介します。

戸帳と華鬘の写真。
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戸帳(とちょう)と華鬘(けまん)について

写真は自坊の内陣に安置されている阿弥陀如来像です。今回紹介する仏具の戸帳(とちょう)華鬘(けまん)があります。

画像でどれが戸帳と華鬘であるか補足します。

華鬘と戸帳

戸帳は仏様への敬意を表す仏具

戸帳とは仏像の前にある布のことです。仏様が見えるように「Π」のような門構えの形をしています。

戸帳のことを仏教用語では「とちょう」と読みます。一般的には帳と書き、「とばり」と読まれることが多いでしょう。役割としては「帳(とばり)」とよく似ています。

とばり【帳・帷】(古く「とはり」とも)

1室内や寝所・帳台・厨子・高御座(たかみくら)、また、外部との境などに垂らして、区切りや隔てとしたり、光をさえぎったりなどするための布。壁代(かべしろ)、几帳(きちょう)、のれんなど。

2 物を隔て区切るもの、覆い隠して見えなくするもののたとえにいう。

日本国語大辞典ー第2版ーより

戸帳とは仏様と私たち俗の人とを隔てるために飾られているのです。

そんな説明をすると、仏様と私たちの間には壁があって排他的な存在だと感じてしまう人もいるかもしれませんが、そうではありません。

お寺で仏様を安置しているのは内陣と呼ばれ、本堂の奥側の一段高いところにあります。さらに真宗寺院では内陣は黄金色の彩色を施しています。仏様が安置されているところは須弥壇の一番上であり、仏様の世界を表しているのです。

戸帳とは、仏様の世界(浄土)と私たち(俗世)との間に布を垂らすことで、自ずと仏様に敬意を表しているのです。

似たようなものに御簾(みす)がありますね。

例えば時代劇を見ますと、天皇・帝に会おうとしても簾(すだれ)の向こう側にいて、直接お顔を拝見することはできませんよね。尊い人物として直接触れられないようにしているのです。簾を通して敬うことを簾中(れんちゅう)ともいいます。

今でも丁寧な家の仏間には御簾が掛けられていますし、お寺の内陣にも御簾が掛けられています。(ただし簾を下ろしますと内陣の様子がみえないので、常には上げられています)

本堂内陣は簾中。簾(すだれ)の内側
御簾と三段染めの房

お寺の簾の向こう側、戸帳の向こう側には尊いお方(仏様)がいらっしゃることを表しているのです。

戸帳は仏具(仏様のお飾り)なので、布には金襴が使われ美しく彩られています。

関連記事:神社仏閣の御簾の房飾りは、なぜ白赤黒色の3段染めなのか。

華鬘とは仏様に供える華飾りの仏具

まずは漢字の意味を説明します。

華鬘(けまん)の華とは「はな」とも読みます。美しい花・きらびやかな花・輝きや光の意味があります。

鬘とは「かつら・かずら」と読み、草や枝や花で作られた髪飾りのことです。

華鬘とは「華のような見た目で作られた髪飾り」という意味になります。

華鬘のデザインには花が描かれている。
華鬘には花がデザインされている

華鬘をお飾りする由来には主に二つの説があるようです。

  1. 古代インドでは、花を糸で結んでいた髪飾りから
  2. 戸帳・帳を上げるときにまとめる紐から

仏様のお供えにはお花とお香とお光が欠かせません。華鬘というのはお花のデザインが施されており、常にお花を仏様にお飾りしていることになります。

もう一つの説は帳を上げるときの紐からということです。

帳というのは何もしないと常に布が垂れた状態で向こう側が見えません。そこで紐を使って結んでたくしあげている必要があります。

もともと帳というのは宮中や高貴な人たちが使用していたので、紐の結び方も飾り結びと言われ、おしゃれな結び方だったそうです。

例えば次の結び方も飾り結びの一つです。

仏具。磬(けい)の飾り結び
華鬘の結びとは異なる飾り結び

このように帳と紐はセットにして使われるものであり、この紐がやがて仏様の戸帳をお飾りしていくことから、金属製や木製の金華鬘に、あるいは紐華鬘へと変化していったのではないでしょうか。


個人的には2つ目の説が正しいような気がします。

なぜなら仏様とは悟りをひらかれた方です。菩薩とは違い、身なり・身に着ける装飾というのは非常に簡素なものでいいはずです。着飾る必要がないのですから。

また髪飾りといいながら仏様に直接デザインを施すわけでなく、わざわざ戸帳の手前にお飾りしているのは、やはり由来が帳を結ぶ紐だったことの名残りではないのでしょうか。

関連記事:骨壺カバーの紐は、なぜ華鬘結びをしているのか。

仏壇のご本尊でも華鬘と戸帳をお飾りする

この華鬘と戸帳のお飾りは、何もお寺のご本尊だけにするのではありません。

最初に言いましたように、お仏壇とはお寺の内陣の様子をコンパクトに表したものです。

ですので家のお仏壇でも同じように、仏様を敬うために華鬘と戸帳をお飾りします。

華鬘・戸帳は仏様に一番近い仏具

戸帳も華鬘も仏様を尊いお方と自然と感じ取れるためにお飾りされます。

お寺のご本尊では正面だけでなく側面にも戸帳と華鬘をお飾りしていることがあります。

ご本尊側面の戸帳と華鬘
側面にも戸帳と華鬘が飾られる

これは仏様が安置されているところが須弥壇(須弥山)の一番上、仏様のおられる空間を表しているからです。仏様に最も近い仏具であり、浄土の尊い空間を表しています。


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華鬘を吊り下げる高さについて

『華鬘を吊り下げると仏様の顔が隠れるから嫌だ』という人がいます。

確かに華鬘のお飾りがあると仏様のお顔は隠れます。もっともそうな言い分ですが、私は少し違った意見です。

華鬘のデザインには花が描かれている。
華鬘で仏様の顔が隠れる
お仏壇の華鬘は仏様の顔を隠す。
華鬘で仏様の顔が隠れる

そもそも仏様を拝むときはどのようにしますか。正座をして仰ぎ見ますよね。

私たちが立った状態で仏様を見下ろしたり、同じ目線で拝むということはしないはずです

華鬘の位置は、紐の房に当たるところが仏様(ご本尊)のお顔正面に来ることが多いと思います。

これは華鬘があることによって、仏様と同じ高さにいるときはお顔を隠し、見上げて拝むときにお顔がはっきりと見えるようにするためです。

仏様は半眼といって少し伏し目がちなので、私たちが見上げるようにお参りするとちょうど仏様と目が合う形になります。

「華鬘があると仏さまの顔が隠れて嫌」に対する私の返答は「華鬘で仏様の顔が隠れるのはおかしなことではありません。仏様とは仰ぎ見て拝む存在なのですから」となります。お顔が隠れるのは、仏様を敬う気持ちが表れた飾り方なのです。

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