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第31回目のラジオ配信。「火葬のお金」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
先日、ご門徒さんから、「火葬の費用はどうして安いのか?」と質問を受けました。そこで2020年2月25日に放送予定の今回は、「火葬のお金」をテーマにお話します。
まず最初に言っておくことですが、火葬にかかるお金が高い安いというのは、人それぞれの感じ方なので、火葬の費用が本当に安いかというのは、私からはなんとも言えません。
ちなみに一般的な火葬の費用は2万円前後でしょう。
葬儀全体の費用が、20万・50万・100万とするならば、火葬の占める割合が2万だと安く感じるのかもしれません。
さて今回の質問は、火葬のお金はどうして安いのかということでした。
結論を先に言うと、現在の日本では、遺体をほぼ100%火葬するからです。
日本には『墓地、埋葬等に関する法律』がありますが、火葬を必ずしなさいというルールがあるわけではありません。
しかし火葬以外の弔い方では、公衆衛生や遺体を弔う場所の確保が難しくなるので、できることなら火葬するのが良いとされたのです。
加えて、仏教的な葬儀をする場合は、火葬をするのが相応しいという理由もあります。
私たちは仏教的な葬儀をする際に、お坊さんから法名や戒名をいただきますよね。あれは仏教の開祖であるお釈迦様・釈尊から釋の一字を受けて、お釈迦様の仏弟子であるという名のりなのです。
お釈迦様は生前に、弟子たちに対して、自分が亡くなった後の遺体の処理の仕方や火葬の仕方、お骨をまつる塔を立てることなどを言い残しました。
お釈迦様の火葬にならって、仏弟子だと名のった私たちもまた火葬をしているのです。
ですので、現代の日本においては99%以上、ほぼ100%火葬によって遺体が処理されているのです。
火葬をするのが当たり前になっています。火葬ができないとダメなのです。
遺体を火葬するのが必然となっているのに、仮に火葬の料金が10万や20万と高額になったら、どうなると思いますか?
火葬できない人も出てくると思いませんか?
どんな人でも火葬だけはできるようにと、火葬にかかる費用は安く・手ごろな価格になっています。
ちなみにみなさんは、火葬場には大きく二つのタイプがあるのをご存知でしょうか。
各自治体が運営している公営の火葬場と、民間企業が運営している民営とに別れています。
公営の火葬場では、その自治体管轄内の住民に対してはだいたい1万~2万円程度の価格で火葬を受け入れ、他の住民からの火葬依頼は約3倍料金のおよそ5万円で受けることが多いでしょう。
民営はそうではありません。公営と比べて、商売でやっているので、5万以上の火葬費用をとるところもざらにあります。
ただ東京都以外では、公営の火葬場が圧倒的に多く、各自治体ごとに1つは火葬場を設けていることがほとんどです。私の住む香川県では、民間がする民営火葬場はひとつもないはずです。
東京だけが公営よりも民営火葬場が多いのです。
東京以外で公営の火葬場が多いのは、火葬業で儲けようと考えてはいけないからです。火葬は赤字でするものだからです。
火葬はだれでもできなければなりません。しかし2万円では火葬業をすることはできません。日本では葬祭業をする葬儀社・葬儀会館はどんどん増えていますが、火葬は高い値段をつけることができないので儲けられません。公的なところが税金で予算をたてて、火葬業をしているのです。
例えば、私の住む丸亀市には、桜谷聖苑という火葬場があります。公的な建物なので所長さんのみ公務員で、後は民間から雇われた人が働いていると聞きます。火葬には特殊な炉を使います。その炉を休ませながらメンテナンスし運用するのには技術がいります。到底2万円では火葬はできません。
しかし火葬をするのが当たり前となっているので、公営では管轄内の住民に対しては2万円以下の費用で火葬をしているのです。
ただ東京だけは話が別で、東京は23区で一日に200人ほどが亡くなっています。7つの民営と2つの公営火葬場があって炉が約100ほどです。
東京以外の自治体だと、亡くなる人数が火葬炉の数より少なく、炉を休ませることができるのですが、東京だと、常に炉が使われている状態です。
だから民営の火葬場は値段が高くても需要がありますし、また東京の7つの民営火葬場はどれも葬儀式場や遺体安置室や会席室などを用意しており、火葬業・葬祭業などをすべて合わせて行い、利益を得ようとしています。
亡くなる人数と炉の数が他とは違っている東京だから、東京は民間が多く、他よりかは高くても火葬が行われているのです。
さて話をもどしますと、火葬はだれでもできるというのが、基本的な考えです。
ですので公営の火葬場によっては、自治体住民の火葬料金が0円ということもあります。
例えば香川県の宇多津町では町民の火葬料金は0円です。
これは私の想像ですが、宇多津町は香川県でも唯一、人口の増えている自治体でありお年寄りが多くない地域です。年間の死者数が100人ちょっとなので、宇多津町が火葬で得る火葬料金の200万~300万の予算をたてれば、町民は気持ちよく自分の自治体で火葬できると考えているのではないだろうか。
人によっては、2万円を支払うのが難しいと訴える人もいることでしょう。
しかし心配しないでください。多くの自治体では『葬祭費給付金制度』というのを用意しています。自治体によって、支給額は違いますが、だいたい2万円から3万円を支給してくれますので、自治体の火葬料金の2万円は実質、ただで火葬できますよということです。
火葬料金の高い東京都では、5万円から7万円ほどを支給してくれますので、こちらも実質、火葬料金は0円だと言えます。
今日の話をまとめます。
葬儀全体の費用に対して火葬料金はなぜ安いのかに対する答えは、日本の遺体の弔い方は、ほぼ100%が火葬だから。火葬をするのが当たり前となっているから、火葬はだれでもできないとダメだから安い。
火葬業のみでは儲けることができないので、亡くなる人が多い東京以外では、自治体が公営で火葬場を用意し、予算を立てて2万円以下で火葬を受け付けている。
葬祭費給付金制度を利用すれば、私たちは実質0円で火葬をすることができる。