Podcast: Play in new window | Download
第93回目のラジオ配信。「庫裏」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
今回はお寺の建物「庫裏(くり)」をテーマにします。
今、私のお寺円龍寺では、建物の工事をしています。重機が出入りしているので道路からも目立つため、お参りに行きますとご門信徒から何の工事をしているのか尋ねられます。
それで私は「今、お寺の庫裏の修繕工事をしています」と答えるのですが、庫裏と言われてもあんまり一般的な言葉でないのか、庫裏がなんなのかよく分からない人もいます。
庫裏というのは、簡単に言えば、お寺に住む人の寝たり食べたりお風呂に入ったりする居住空間と思っていただけたらOKです。
庫裏という漢字は、車をとめる車庫の「庫」と、表裏の「裏」のからなります。
読み方を知らなければ庫裏とまっすぐ読めないと思いますが、車庫の庫と裏という漢字で、お坊さんが住んでいる空間を表す庫裏という言葉になります。
さて、庫裏についてもう少し詳しくお話します。
庫裏の一文字目の車庫の庫は、ものをしまっておくための空間という意味があります。
例を挙げると、車をしまう車庫、お金をしまう金庫、書物をしまう書庫、大きなものをしまう倉庫などがありますね。また兵庫県の庫もこれと同じ漢字ですね。兵庫と書いて「へいこ」とも読み、武器をしまっておく空間という意味があります。
次に二文字目の裏という漢字は、表裏の裏という漢字なのですが、裏という意味だけではありません。裏という漢字はたくさんの意味を持っていて、ここで使われる裏は内側という意味です。
これは天皇がかつて住まわれていた宮城の私的な空間を表す内裏(だいり)と同じような言葉の使われ方です。内と裏の漢字の内裏は、天皇の私的な居住空間です。
お寺の庫裏はこれと同じように、寺に住む人、僧侶の私的な居住空間の意味でよく使われています。
お寺のメイン・表に建つのは、仏さま・ご本尊をおまつりしている本堂です。本堂の仏様に皆さまはお参りし手を合わし、お寺の僧侶は本堂を信仰の場所として大切に守っていきます。
しかしお寺の空間は本堂だけではありません。山門もあれば鐘撞堂もあり、お墓などもあります。門を開け閉めしたり、時には鐘を鳴らしたり、お墓や庭を掃除することもあります。それらは誰がするかといえばお寺の人間、お寺に住みこんでいる住職や僧侶の仕事です。
都会のお寺はわかりませんが、香川のような地方のお寺だと、庫裏は本堂と建物がつながっています。本堂はご門信徒全員の財産であり仏さまをまつる空間ですが、その本堂を大切に守り、いつでも駆けつけることができるようにしているのが庫裏です。
田舎のお寺では、庫裏がメインの本堂とつながっています。
つながっているおかげで、お寺の人間は日常生活しながらお坊さんの仕事ができます。掃除もしやすいですし、火の始末をしやすいですし、仏様へのお花やご飯と言ったお給仕もしやすいです。法事の後の食事も本堂に続いて庫裏でしやすいですし、急な応接も庫裏で対応できます。庫裏があることで、お寺でのいろんな法務が生活の延長線のなかでしていくことができます。
これが庫裏です。
大きなお寺、歴史のあるお寺だと、庫裏は本堂と別に独立した場所に建てられていることもあります。僧侶が多く、別に食事をする食堂をたてたり僧侶の住む僧堂があったり、それぞれの役割をもった建物がありますが、浄土真宗をはじめとする大部分のお寺はお寺を守っていく、メインの本堂を守りすぐに駆けつけることができるように、本堂の裏、内側に、住職がすむ庫裏を隣接して建てています。
お寺の空間、メインの表の空間の本堂は、お寺の住持職「住職」が守っていく使命があります。
住職というように寺に住み込み、いつでも本堂にかけつけられるように待機します。そしてその待機場所、生活場所が内側の庫裏になります。
古くから妻帯していた浄土真宗では、僧侶の住職をサポート、寺坊を守っていくために、住職の妻のことを坊守(ぼうもり)とよんでいます。
似た言葉にその他の宗派では、庫裏を守っているということから住職の妻のことを「お庫裏さん(おくりさん)」とも呼ぶそうです。
「お庫裏さん」はお寺の人間が生活する寺の庫裏が、お寺にとって欠かせない、とても重要な空間だということを表している言葉だと思います。
当然、庫裏があることで住職やお坊さんがお参りに出かけて不在の状態でも、庫裏に坊守やお庫裏さんがいるおかげで、ご門信徒は安心して、お寺の留守を任せられているのだと思います。
お寺を守ることができるのは、庫裏のおかげといっても過言ではないでしょう。
寺の庫裏の使われ方
「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。