Podcast: Play in new window | Download
Subscribe: Apple Podcasts | Spotify | Amazon Music | Youtube Music
第299回目のラジオ配信。「墓じまいの本」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
- 出版社:WAVE出版
- 書名:墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!
- 著者名:吉川 美津子(きっかわ みつこ)
- 発行日:2025年8月1日 第1版第1刷
- ISBN:978-4-86621-521-1
- 判型:A5判
- WAVE出版公式へのリンク『墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!』

かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀市にいるお坊さん、私かっけいの音声配信です。
墓じまいという言葉がメディアに取りあげられるようになって、20年ほどはたったでしょうか。
今では「墓じまい」はよく耳にする言葉になりましたが、さあいざ墓じまいとは何なのか?墓じまいはどうすればいいのか?ということになると、多くの人がよく分かっていないと思います。
先日、図書館に行くと、墓じまいについて書かれている本がいくつかありました。その中で、これは皆様におすすめできそうな本が一冊ありましたので、今回その本を紹介します。
これから墓じまいをしようかと考えている人、墓じまいとはなんなのか知りたい人、お墓をどうしようか、お骨をどうしようか、そんな風に墓じまいやお骨について悩んでいるすべての人におすすめできる本でした。
それでは本の紹介をします。
著作情報です。WAVE出版の本で、著者は吉川美津子、タイトルは「墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!」です。
第1版第1刷の発行が2025年8月1日で、ごく最近世に出されたばかりの墓じまいの本です。
私は著者の吉川美津子さんのことを知らなかったのですが、プロフィールを読むと、メディア掲載・出演実績が500本以上とあるので、ご存知の人もいるでしょう。
インターネット検索をすると、「終活&葬儀ビジネス研究所」というウェブサイトを運営しているようで、今回紹介する本以外にも葬儀業界やお墓に関する本をいくつか執筆しているようです。
さて、大事なのは本の中身です。
なぜ私がこの本はおすすめできるなあと思ったのかと言うと、墓じまいの基礎的な知識から、墓じまいの流れ、手続き書類・費用、周りとの相談、そして起こりやすいトラブルと。それらのことを必要以上に不安を煽らず、現実的な悩みを解決していけるように順を追って説明されているからです。
他の墓じまい本も多くが悪いわけではありませんが、「騙されないために」とか「損しないために」とか、お墓のしまいに関して損得を煽るかのように書かれていることがあります。
一方で、この本は墓じまいとは何なのか、墓じまいに関することを学びながら、それぞれの人にとってのよりより弔い方を考えていくきっかけとなるのが私のおすすめポイントになりました。
本によっては「お寺・お坊さん」や「石材業者」や「親族」など誰かしらを悪者にしたてあげてるものもありますが、この吉川美津子の「墓じまい 何をすればいいのか、教えてください!」はそういった誰かを槍玉にあげることなく、ただ墓じまいに必要な知識を紹介しているのがいい点です。
どこかの立場にひどく傾いて説明していないのがいい点でした。
言葉の説明も丁寧にされている印象です。
勘違いをされている人も多いでしょうが、墓じまいと改葬は意味が違います。
この本ではその墓じまいと改葬の違いもイラスト付きで説明されています。
他にもお墓をどうすればいいのか、お骨をどうすればいいのかを、移動先、弔い方、いろんなパターンを例に挙げて説明しています。
いろんなパターンを紹介していて、例えば、お骨を他の墓地に移す例を挙げると、民間霊園、寺院墓地、公営墓地をそれぞれ改葬先の候補地にあげていて、それぞれの良さ、それぞれの注意点を説明してくれています。
墓じまいと言うと、墓を無くすことだと考える人もいるかもしれませんが、実際はそうではないです。
今あるお墓をやめて、また新しいお墓や納骨場所にてお骨を納めたり、あるいは散骨をすることを言います。
墓じまいと言うのは先祖の弔いをしなくなる、止めていくことではなく、よりより形にしていくものです。
そのより良い弔いの形が一体何なのか、どうすれば実現できるのか、それをひとつひとつ説明しているのが、良い墓じまいの本です。
なのでこの本ではお墓の建て方、墓石の選び方も説明しています。
散骨についても説明しています。
最近は散骨もよく耳にしますよね。お墓がいらないとか、費用がそんなにかからないといったイメージがありますが、実際にはどうなのか、そういったことを書いてくれています。
散骨を特におすすめしている本も多くありますが、この本は散骨を持ち上げすぎていないのもいい点ですね。
とくに日本の法律には散骨に関して書かれてなく、グレーゾーンとされてきたということも一言書いてあります。
今では、厚生労働省が散骨業者に対して出している「散骨に関するガイドライン」というものがあることも紹介しています。
散骨は法律での改葬に当たらないこと、お骨と分からないように粉状にすること、漁業水域から離れた海域ですること、各自治体の条例もあるということなど、散骨についても書かれています。
また海洋散骨以外の散骨の形の他、一時的に、手元、家に遺骨を置いておくことについても書かれています。
一般に手元供養や自宅供養と言われているものです。
これについても説明をしてくれています。
さて、ざっとこの本について紹介しました。
この本では墓じまいは何なのか、墓じまいを知ることを通して、どのように弔っていくのがいいのかが書かれています。
お墓のしまいを決心したうえで、さあ、今のお墓を片付けようか、ここに新しく移して弔おうか、家族親戚にはどのように話していこうかといった現実的な話しが書かれています。
また墓じまいをしない、お墓を引き継ぐことになった場合、何を考えるのか、どのような管理をすればいいのか、お墓を承継する時のルール・手順を詳しく書いてくれています。
日本には「墓地、埋葬等に関する法律」があります。墓じまいをする場合、法律にのっとって行わないといけません。
行政の方にもたずね、必要な書類を役所に提出しなければなりません。
葬儀に関すること、お骨、弔い方に関することは、法律ではっきりと明らかにされていることと、そうではないことが入り混じっていて、それが分かりにくさの一因ではないかと思います。
さきほどの散骨もそうです。法律では散骨については何にも書かれていません。
昨今よく耳にするようになった、エンディングノートもそうです。エンディングノートには法的な効力がありません。自分の思いを書いたただのメモ書きのようなものです。
お墓のこと、弔いのことは、皆さま分からないことばかりだと思います。
分からないことがあったら、今回おすすめした墓じまいの本を読んでみたり、あるいは普段からお付き合いのあるお坊さんなどに、お尋ねしてみてください。
相談したからと言って、いますぐ決める必要はないです。よく考えた結果、今している弔い方供養の仕方が一番良ければ、そのままでいいんです。

この本は墓じまいに関することを幅広く説明しており、必要な手順・手続き・費用なども書かれています。
おすすめの本ですが、書かれていることすべてが私の考えと一致しているわけではありません。
例えば、この本では墓じまいと離檀がセットであるかのように書かれています。しかし墓じまいしたからと言って、必ずしもお寺との関係が失われるわけではありません。
他にも私がする説明と異なる所がいくつかあります。
本の内容だけでなく、親族やお寺、行政、石材業者などとも相談しながら、各々にとって一番よい弔いの形になるように墓じまいができればと思います。


