こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
旧暦11月28日は浄土真宗の宗祖親鸞聖人の御命日です。
浄土真宗では親鸞聖人のご命日を偲ぶお勤めを報恩講と呼んでいます。そして報恩講参りとして 各お寺のお坊さんがご門徒さん宅のお仏壇の御本尊前にてお勤めをいたします。
今回は報恩講のお坊さんがやってくるときに、お仏壇をどのように用意するのか、どのような段取りでお参りが進行するのかを紹介します。
(報恩講さん参りには地域性があるかもしれません。ここでの内容は参考としていただければ幸いです。)
【前置き】なぜ報恩講の時分にお坊さんがお参りにくるのか。
先に少し前置きをしておきます。
報恩講とは「宗祖親鸞聖人の恩に報じる講」という意味です。浄土真宗のお坊さんはよくこのように説明しますよね。
でもなぜ「恩に報じる講」が「お坊さんがお参りに来るのか」となるのか理解しにくいかもしれません。
真面目に説明すると難しい話になるのでここでは簡単に説明します。
恩に報じる講とは、親鸞聖人の恩に報じるために集まった人たち・集まりですね。
どのようなことをすれば恩に報じたことになるのでしょうか。
結論から言えば、お寺・お仏壇にお参りをし手を合わし、いま私にお念仏のご縁が届けられている恩を知っていくことです。
信心があるから仏様に参るのではないのです。
恩を報じるためには、まず恩を知らなくてはいけません。しかし私たち人間というのは勝手な生き物で、自分の力ではどうにもならないような場面に出くわさないと何かに頼るようなことをしません。日常の生活をただ過ごしているだけでは、恩を知ること・支えられて生きていることに気が付きませんし感謝することもできません。
報恩講さんの時にお坊さんが半ば強制的にお参りに来ますよね。うっとうしいなあと感じる時もあるでしょう。
しかし報恩講参りとは、だれでもどのような人でも必ず救い取ってくださるぞと願われた「南無阿弥陀仏」のお念仏の教えを届けてくださった親鸞聖人のご遺徳を偲ぶ中で、この私がそのことに気が付いていくご縁となるのです。
なぜお坊さんがお参りに来るのか。
それは報恩講を通して、恩に気づきお念仏を称える身となれる縁をいただいていくためです。
報恩講の仏壇のお飾り用意。
この写真は報恩講参りした時のとある家のお仏壇の前の様子です。1点を除いて非常に丁寧なお飾りができています。
報恩講を迎えるにあたって注意するのは3つのポイントがあります。
- 朱蝋燭(赤色のろうそく)を用意する。
- 三具足から五具足にする。
- 打ち敷(うちしき)を用意する。
順に説明します。
報恩講のお勤めには朱蝋燭(赤色のろうそく)を用意します。
普段のお勤めでは白色のろうそくをお仏壇にお供えされているでしょうが、浄土真宗の場合、大切なお勤めの場合には赤色のろうそくを使うようになっています。報恩講法要とは宗祖のご命日だけでなく、私が仏法に出会うご縁の場でもあるので赤色のろうそくをお飾りして仏様に供えます。
朱蝋燭(赤ろうそく)については以前に詳しく説明しています。よろしければこちらもどうぞ。『法事には赤いろうそくを準備しましょう。真宗僧侶が赤の意味を説明します。』
次に三具足から五具足にお飾りを豪華にします。
3具足とは写真のように、左から燭台・香炉・花瓶の並びで仏前をお飾りすることです。 浄土真宗ではポピュラーなお飾りで、普段はこのようにお飾りします。
一方で報恩講の時は普段よりも丁寧に仏様をお飾りするので、三具足から五具足にします。
燭台・香炉・花瓶のお飾りから、花瓶・燭台・香炉・燭台・花瓶の並びのお飾りになります。このような豪華なお飾りは報恩講のような特別なお勤めをするときにします。
そして最後に打ち敷をかけます。
打ち敷とはお仏壇が汚れないようにするためのテーブルクロス的な意味ではなく、仏様を豪華にお飾りするという意味で用いています。
そのため打ち敷には金襴が使われており豪華なデザインが施されています。
打敷は年中お仏壇に敷きっぱなしの家も多いでしょうが、正しくは年忌法事や祥月命日、報恩講参りの時ように節目のお勤めの時にお飾りをして普段は片づけておきます。メリハリをつけるためですね。
それはお寺でする報恩講法要でも同じことです。
打ち敷を掛けて、五具足にして、朱蝋燭を用意する。
上の写真のようなお飾りを家のお仏壇でも準備するのです。
まとめてますと、これらの3ポイントはすべて仏様を豪華にお飾りするという意味があります。報恩講のお勤めとは普段以上の立派なお荘厳をするのです。
報恩講さんはどのようにお参りが進むのか。
ここでは自坊を例として説明します。(私が住んでいるのは香川県で、真宗興正派の末寺です。)
報恩講さんのお参りとは各ご門徒さんのすべてお仏壇にお参りをします。
報恩講とは浄土真宗では何よりも大切なお勤め・ご仏事ですので、お坊さんは半ば無理やりのようにお参りにやってきます。
しかし当然ご門徒さんにもご都合がありますので、多くのお寺は何月何日にお参りしますと世話人を通じて連絡したり、お寺から直接電話をしてお互いの都合を合わせたりします。
ただ注意しないといけないのが各ご家庭への報恩講参りとは10月~12月といった短い期間の間にすることであり、お寺では報恩講以外にも通常の祥月命日や葬儀などのお勤めをしていますので、予定のお参り時間よりも遅れて来ることもあるかもしれません。
自坊では報恩講のお参りをするときの一軒のお参り時間をおよそ40分程度としています。しかし一軒当たり5分遅れるだけで最後の方は1時間程度予定の時刻より遅れることもあります。それはご理解いただきたいです。
報恩講のお勤めは「正信偈(正信念仏偈)」をお勤めします。多くのお寺が正信偈を読んでいるでしょう。たまに阿弥陀経を読経するお寺もあると聞きますが。
正信偈は親鸞聖人が書かれた歌であり、浄土真宗の教え、阿弥陀仏の教え、念仏が私に届けられた流れ・ご恩といった浄土真宗のエッセンスが詰まっています。
親鸞聖人が残された正信偈をお坊さんも家の人もともにお勤めをし、そして最後にお坊さんは振り返りご勧章(御文・お手紙・御文章)を拝読します。ご勧章とは本願寺の蓮如上人が残されたお手紙です。報恩講の時は、聖人一流の章(第5帖・第10通)や御正忌の章(第5帖・第11通)を拝読します。
お坊さんが報恩講のお参りに来た時に家の人がする大切なことを言います。
必ず、お坊さんと一緒にお仏壇の前に座り、ともにお正信偈を読み、ともに手を合わしお念仏を称えましょう。
お坊さんを一人にして「どうぞ勝手にお勤めしといてください」ではありません。報恩講をはじめご仏事のご縁というのは、この私のための仏縁なのですから。
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さいごに。報恩講は大切な仏事。
報恩講とは浄土真宗で一番大切な仏事です。
お寺で報恩講法要をするだけでなく、各家のお仏壇でもお坊さんがお参りにきてともにお勤めします。
宗祖親鸞聖人のご遺徳を偲ぶ仏事を通して、仏恩を知り恩に報じていくのです。
お勤めの種類によって優劣があるわけではありませんが、父母・先祖のお勤めだけでなく、この私に阿弥陀仏の教えを伝えてくださった宗祖・高僧・諸仏の恩に気づいてくお勤めには普段以上に豪華・厳かにお飾りをしていきましょう。
また別の機会で紹介しますが、「信は荘厳より生ず」という言葉があります。何気ないお仏壇のお飾りですが、お飾りをしていく中で信心や恩というのはいただいていけるのです。