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法事と正座と足のしびれ

こんばんは。 僧侶のかっけいです。

皆さんは法事の時に正座をしていますか?

お坊さんの私は必ずしています。会館などで椅子が用意されている場合を除いて。

皆さんもお勤めしているお坊さんが正座をしているのに自分たちだけが椅子に腰かけているのは悪いと思っているのか、法事の時に椅子に腰かけている人は少ないように感じます。

今回は「法事と正座と足の痺れ」についてのお話です。

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正座の意味は、正しい座り方ではない。

しばしば正座とは「正しい姿勢で座ること」と説明されます。

しかし正しい姿勢とは何でしょうか。

正しい座り方なんて存在しないでしょう。

正座とは、「姿勢を正して(ただして)座る」という意味です。

言葉を変えれば「膝を正す」とも表現されます。

正して座るとはどういう状態でしょうか。

それはきちんと座ることであり、かしこまって座ること、相手に向かって真っすぐ向いて座ることです。

法事ではなぜ正座が勧められるのか。

正座というのは嫌われやすい座り方です。

なぜなら、足がしびれ、膝が痛くなり、すぐに立ち上がることができなくなるからですね。

お坊さんでも一時間も正座を続けると痺れて痛いです。

そのようなデメリットがあるのにも関わらず、なぜ法事では正座をするように勧められるのでしょうか。

理由は単純です。

正座という座り方は姿勢が自然と正されて座れるからです。

もちろん畳で座るという江戸時代以降の習慣から現代でも自ずと「畳での座り方=正座」となった背景もあるでしょうが、何も座り方が足を折って座るだけでなく、足を崩したりあぐらにしたりと色々な座り方もあったはずです。

法事とは言うのは仏さまに向き合って座ります。

仏さまに失礼がないように体の正面を仏さまに向けて姿勢や足を正すと自ずと正座になってきます。

だから法事で正座が勧められるんですね。

ただ正座は強制ではない。椅子に腰かけてもOKよ。

お寺でも最近では椅子席を用意しているケースが多くなりました。自坊でも椅子をお参りの人のために用意しています。(お坊さんは畳に座りますが)

家でする法事の時でも椅子を用意する家庭は多くなりましたね。

でも法事に椅子を用意されてもお坊さんは嫌な顔をしないはずです。もっと言えば胡坐(あぐら)をかいていても文句を言わないはずです。

なぜなら正座というのは足がしびれて痛いから。そして高齢であったりして膝の状態が悪く正座ができない人がいるからです。

正座とはどのような人でも痺れていきます。そのことはお坊さんが一番よく分かっています。

ですのでお坊さんはこのように言います。

「読経中は足を崩してお参りください。でも合掌礼拝するときには姿勢を正していただければ幸いです。(できる範囲でお願いします)」

仏さまにお参りする時に正座をするのは、体を痛めつけるためではありません。正座が正しい座り方だからでもありません。仏さまにまっすぐに向き合いかしこまってお参りしてほしいからです。

ですのでたとえ胡座(あぐら)であっても背筋を正して合掌礼拝していただければそれが正座となります。

足を投げ出して座るのはさすがに法事では相応しくない座り方です。

正座は痺れる座り方と思われるがそれは勘違い。

正座をすると痺れるから椅子に腰かけたり胡座をかく人がいます。

確かに正座は痺れます。

しかし実は椅子や胡座でも痺れているんですよね。

でも椅子や胡座では痺れた実感が湧かないでしょう。それは体をごぞごぞと動かしているからです。

姿勢を正して椅子に腰かけるとだんだんとお尻が痛くなり足がしびれていきます。姿勢を正して胡座をかくとやはりお尻が痛くなり足がしびれます。実は腰痛持ちの人にとっては正座が一番楽な座り方です。

お尻をすっぽりと足の裏をクッションとしてカバーしているからね。

正座はなぜ痺れる座り方と思われるのだろうか。

それは体を動かすと目立ってかっこ悪いからです。姿勢を正すために正座をしているのにごぞごぞしていると逆に目立ってしまいます。ですから正座をする人は椅子や胡座の人と違って体を動かすことができずに足を痺れやすくなってしまうのです。

正座も椅子や胡座のように体を動かしながら座れば痺れにくいんですよ。

正座は慣れることによって痺れにくくなる。

法事・仏事のお勤め時間は30分以上と長いでしょう。

浄土真宗の場合は中休みをとりながら2時間程度も法事時間を要します。最初から最後まで正座を通すのは無理でしょう。

でもお坊さんは正座を続けられていますよね。

なぜでしょうか。

理由は単純で、ただ正座をすることに慣れているからです。

人によっては全く痺れなくなるそうですが、私の場合は痺れて痛いのですが立ち上がる数秒の動作の中で足の痺れが無くなります。ですから涼しい顔してスムーズに動けるんですね。

膝を怪我しているや高齢で軟骨が擦り減っているといった特別な理由がない限り、正座が痺れて座れないという人は単純に正座をして座ることに慣れていないだけです。

正座は脂肪が多い女性や体重が軽い子供は血管が圧迫されず痺れにくいです。

子供に正座を勧めるのは小さい時に正座に慣れておくことで、将来正座をしたときに痺れにくくするための前準備となるからです。


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さいごに。

私はお参りの人が法事の間ずっと正座をしている必要はないと考えます。

法事の時に正座をするのは修行だという人もいます。

しかし足に痛みを抱えてお参りするのは辛いでしょうし、故人を偲ぶという仏事の大切な意義を見失うことになるやもしれません。

ですので正座というのは強制されるものではないでしょう。

法事の間ずっと正座をするのではなく、焼香・合掌・礼拝といったと要所要所で姿勢を正して敬いの気持ちを表してお参りをしましょう。決して足を投げ出してお参りすることは避けましょう。


 

もちろんお坊さんが「どうぞ足を崩してください」と言っても頑なに正座をする人もいます。

お寺に椅子を用意して椅子が空いているの畳に座る人もいます。

それは仏さまにお参りするのに楽な思いをして座るのは申し訳ないと感じているからです。

仏さまに対して楽な姿勢でお参りしてもいいのですが決して気持ちがだらけてしまってはいけません。

正座というのは慣れていても足がやや痛くなります。その適度な痛みが緊張を生み気を引き締め、仏さまに対して真っすぐに念じることができるのです。

(椅子に腰かけたり胡座をかいている人は頭がうなだれていたりのけぞっている人が多い印象です)

お参りの人で椅子があるのにあえて正座をするのはそういう考えの人もいるということも知っておいてください。

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