こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。住まいは香川県です。
なぜわざわざお寺の場所が香川県だと補足するかといえば、同じ浄土真宗でも地域によっては法事の時にかかる時間が違うからです。
浄土真宗は割と法事法要の時間が長いことで有名だと思います。
例えば、香川県では1時間~2時間の法要時間が普通だと思います。
つい先日も私が導師として2人で3回忌のお勤めしたところでは、最初のおうどんの接待から始まり、一座(無量寿経を読経)の後で中休み、お茶の接待を受けつつお話をし、二座・三座を続けて(正信偈・阿弥陀経をお勤めし、回し焼香をし)、最後に法話をいたしましたら、2時間30分もかかってしまいました。
ちょっと法事の時間が長くなりすぎて反省したところです。
というのも最近では49日法要や100日法要、1周忌や3回忌などの年忌法事では、1時間程度の短いお勤め時間の方が好まれているように感じるからです。
法事の時間は短くしてくれと施主にお願いされる。
浄土真宗の法事の時間は結構長いんですよ。
私の住んでいるところ(香川県西讃)ではお坊さん一人でお参りする一人法事では1時間~1時間15分くらい。役僧が付く二人法事では1時間30分くらい。お坊さんが3人以上でお参りする念入り法事では2時間くらいが目安ですかね。
特にお坊さんが3人以上お参りする法事(ここらでは念入り法事(ねんいりほうじ)と呼ぶ)だと、お寺から太鼓や饒・鉢やおりんの道具箱を持ってきて賑々しいお勤めになります。
でもですね。最近では長いお勤めって好まれないんですよ。
法事を案内する施主からは、「一時間以内で法要時間が終わりませんか」とお願いされることもあるほどです。
ただ浄土真宗のお坊さんの立場からすると結構難しいお願いなんですね。
なぜ浄土真宗の仏事は長いのか。何が原因なの。
浄土真宗に限らず、日本にある仏教宗派にはそれぞれの所依の経典(大切にしているお経文)があります。
浄土真宗では、「仏説無量寿経(大無量寿経・大経)」・「仏説観無量寿経(観経)」・「仏説阿弥陀経(小経)」が定められています。
この3つの経典と、親鸞聖人が書かれた「正信念仏偈(正信偈)」が大切なお経文とされています。
浄土真宗では大経・観経・小経の3つの経典のことを浄土三部経と呼び、法事の時ではこの3つの経典を順番にお勤めをしていました。
そのため経典を読経し終えるたびに、お坊さんが中休み、つまり途中休憩をしていたらしいです。
この中休み(途中休憩)が法事の時間を長引かせている要因の一つです。
中休みはおよそ10~15分程度とり、一回ないし二回取らさしていただくので、中休みだけで法事の時間が10分~30分程度長くなります。
また実は浄土三部経・正信偈をお勤めするのは時間がかかることも要因の一つです。
大経を読誦するのに約30分、観経にも30分、小経にも15分、正信偈和讃六首引きにも20分も必要なため、これら4つのうち3つをお勤めするだけで最低でも1時間を必要とします。
ですから私が普段勤めている二人法事の時間例を下に載せてみますと、およそ1時間40分程度かかります。
進行 | お勤め | 時間目安 |
一席 | 伽陀・表白 仏説無量寿経 念仏・和讃・回向 |
30分 |
中休み | 15分 | |
二席 | 伽陀 正信念仏偈 念仏・和讃六首引き 回向 |
20分 |
続けて三席 | 伽陀・表白 回し焼香 仏説阿弥陀経 念仏・和讃・回向 |
20分 |
法話・御勧章 | 15分 |
法事のお勤め時間を短くする努力は?
お寺さんも法事の時間を短くするために、中休みを二回から一回に減らし、二席目と三席目を続けることがあります。
ただですねこれには問題もあるんですよ。法事には休憩時間も実は必要なんですよ。お参りの人のトイレ休憩が必要ですからね。後ですね、足の痺れを取り除く時間でもあるんですね。ず~と正座しっぱなしだと疲れますから、中休みでごぞごぞとしたり足を崩したりして足を休めるんですね。
お寺さんもこの休憩時間を利用して、施主やお参りに来られた人とお話・雑談をしたいんですね。
ですから現状私の考えでは、中休みは最低一回は欲しいところです。
それと施主からですね、こんなことを言われることがあります。
「お経文のええところだけ読んでくれ」
また無理難題を。ええところっていったいどこやねん。と言いたくなります。そりゃですね、ここが経典の中でも特に大事な箇所とはもちろんあるのですが、仏様の金言である経典の流れを無視し、急に結論だけ、伝えたいところだけお勤めしてどうするの?という感じです。
実のところを言いますと、一席目に仏説無量寿経をお勤めしているのですが、全文を読経しているわけではないんですよ。
真宗寺院にお飾りしている浄土三部経をみればわかるのですが、浄土三部経は四巻あるんですよ。仏説無量寿経は上巻下巻に分かれているんですよ。
仏説無量寿経を全文真面目に読もうとすれば、一時間は最低かかると思ってください。
それを今では世の中の需要に合わせてか、お坊さんが持っているお経本にも仏説無量寿経は一部省略されて半分程度の内容量になっているんですよ。
これ以上は経典の内容を省くのは難しいところです。
じゃあいったいどこで法事の時間を短くすればいいかというと、私の住んでいる地域の法事の形式を考えると次の2パターンしかないでしょう。
「早口でお勤めをすること」・「中休みや法話を含め、法事の進行を気持ち機敏にすること」
大経や小経は通常スピードなら30分・20分程度かかりますが、お坊さんのスピードにすれば25分・15分程度に短縮できます。(お正信偈は、お参りの人と一緒にお勤めするので早口ではお勤めできないです。気持ち速度アップはしますが)
また中休みや法話の時間を含め、それぞれの法事の進行を気持ち素早くすることによって、一分の短縮×5つの進行で、計5分短くできるかもしれません。
そんなこんなで、仮に1時間40分かかるお勤め時間でも1時間25分程度になることもあります。
ただ何となしに、お参りの人も慌ただしく忙しなく感じてしまい、法事の雰囲気が損なわれるかもしれないのが懸念する点です。
さいごに。お坊さんのお勤めが長いのは嫌われる。
お坊さんのお勤め時間が長い短いというのは、仏教宗派の特徴だけではなく、その場の地域性・文化性にも大きく左右されます。
傾向的には都会に行くほどお勤め時間は短く、田舎の方に行くほどお勤め時間は長くなります。
それは49日法要(満中陰法要)や100ケ日法要、1周忌や3回忌などの年忌法要のお勤めだけでなく、報恩講や祥月命日のお仏壇のお勤めでも当てはまります。(例えば都会では祥月お参りではお寺さんが来て出ていくまで20分程度らしいですよ。私が住んでいるところでは倍の40分くらいですかね。お勤め後の雑談もしますので。)
ただですね、祥月命日と異なり年忌法事では親戚の人がお参りに来ますね。ですのでお寺さんのお勤めだけでなく、施主の家はその後のお墓参りやお食事などにも段取りがありますので、お坊さんのお勤めだけでなく法事の全体が短くなるのが好まれる傾向があります。
お坊さんのお勤めが1時間30分で終わると思っていたら2時間、2時間だと思っていたら2時間30分とかかれば、施主は後の予定が気になって仕方ないはずです。
ですので私の場合は法事にお参りに行きましたら、何時何分にお勤めが終わる予定なのか、仕出しが届くのか送迎のバスが来る時間が決まっているのかなど、後の予定について聞いて、目標のお勤めの時間を想定しています。
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余談。昔の法事はめちゃくちゃ長かった。
法事って10年前までは家でするのが当たり前だったのが、今では葬儀社などの会館ですることも増えてきています。もちろんお寺でも法事ができます。
今から100年以上前にお寺での法事をしたときの記録をみますと、1週間くらい法事を続けていたようです。(極まれにですよ)(でも3日・4日間の法事もちらほらありましたよ)
わざわざに高札を掲げてしていたようですが、いったいどんなことをすれば一週間も法事ができたのか気になるところです。
田舎では法事のことを孫・子の正月とも言われ、普段生きるために毎日毎日働いていた家族・親戚も法事の日だけは仕事を休み集まり、故人・先祖を偲ぶ中で家族のつながりを感じたのではないでしょうか。
そんなことを思えば、最近の2時間程度法事時間は短いなあ~と感じるところです。(長けりゃいいってもんじゃないですが)