僧侶のかっけいです。
西暦2024年は日本の元号では令和6年ですね。
日本では今現在の年を数える方法として、元号と西暦の両方を使うことが多いですが、その他にも様々な暦の数え方をしている人がいます。
その代表的なものが、仏暦(ぶつれき)や皇紀(こうき)です。
今回は仏暦をテーマに暦について書いていきます。仏暦と皇紀の覚え方も紹介します。
暦の数え方にはどんな種類があるのか
西暦はキリストが生まれた翌年から数える
日本人にとって一番よく使用されているのが「西暦」ですね。グレゴリオ暦とも表現されます。
これはキリスト教の救世主イエス・キリストが生まれたとされる年の翌年を一年目、西暦元年として数え始めています。
復活した年と間違えられることもありますが、誕生した年が起点です。
元号は新たな時代の節目
日本でなじみのあるのが「元号」ですね。
元号は皇帝や天皇が即位する時や、世の中が天変地異等によって混乱しているときに、新たな時代を迎える為に用いてきた数え方です。
鎌倉時代のような世の動乱期には、元号がたびたび変わっていました。天皇一代で5回も元号を変えることもありました。
皇紀は初代天皇神武が即位した年から数える
皇紀を使っている人は少ないように感じますが、ご年配に話を聞きますと、尋常小学校で元号と一緒に覚えさせられたとも言います。
ご年配の方には懐かしい数え方ではないでしょうか
皇紀(こうき)・皇暦(こうれき)・神武暦(じんむれき)など表現はいろいろありますが、正式なのは「神武天皇即位紀元」とされ、明治政府の時に西暦紀元前660年が神武天皇が即位したとされる年として神武天皇即位紀元元年とするように定めました。
仏暦はお釈迦様が亡くなった年を基準に数える
さて今回のメインテーマ「仏暦(ぶつれき)」は「仏滅紀元(ぶつめつきげん)」とも表現されます。
六曜の仏滅とは関係ないですよ
仏滅紀元とありますように、釈迦仏が入滅した(亡くなった)年が基準です。
南伝仏教の地域、東南アジアでは、西暦紀元前624生まれ~前544年入滅の説が主流です。
一方で、中国・韓国・日本に伝わった北伝仏教では、西暦紀元前463生まれ~前383年入滅の説もあります。またその他にもたくさんの説があります。(西暦紀元前3世紀のアショーカ王の仏跡巡礼などから計算されていることが多いです)
仏暦のことを「タイの仏暦」・「タイ暦」ともいわれることもありますように、南伝仏教による入滅の年を仏滅紀元元年としています。
日本でもどういうわけか、西暦紀元前543年が仏滅紀元元年として、仏暦をカウントしています。
西暦はイエス・キリストの誕生した年が基準です。同じように仏暦も、お釈迦様の誕生した年からだと勘違いしがちです。
仏暦は仏滅紀元と表現するように、お釈迦様が亡くなられた年を基準とします。
その他にはどんな紀年法があるのか
- ユダヤ紀元:神が世界を創世したとされる日が元年
- 檀君紀元(だんくんきげん):朝鮮神話の最初の王が即位したとされる年が元年
- イスラム暦:預言者ムハンマドがメッカからメジナに移動した年が元年
この他にも世界中には数多くの暦の数え方があります。
お坊さんは仏暦を使うのか
ほとんどのお坊さんは仏暦の存在を知っているはずです。
先ほども説明しましたが、お釈迦様の亡くなられた正確な年は分かっていません。
しかし全日本仏教会は1994年10月の機関誌「全仏」第402号にて、世界的に普及している仏暦(没年を西暦紀元前544年)そしてタイの公文書でも使用されている仏暦を採用するように報告しています。
しかし実際問題として一般のお坊さんは仏暦を使っているのでしょうか。
使っている人もいれば、使わない人もいる
そりゃ当たり前でしょうと思うでしょうが、日常生活において元号が使いにくいように西暦による考えが浸透している現代では、あえて仏暦を使う必要がないのです。
しかし全く使われていないかと言えば、そんなことはありません。
仏教ではお釈迦様のお生まれになった日を降誕会として法要をいたします。それと同時に亡くなられた日も涅槃会として盛大に法要をいたします。
仏教では死が穢れであったり、死が不幸なことではありません。
むしろ避けることができない事実としてとらえ、その事実を見つめ、先に亡くなられた方々を諸仏として偲ぶ中に、後の人が仏法に出あうご縁をいただいていきます。
ですので他の紀年法が誕生や即位などを記念するのとは異なり、仏教を開かれたお釈迦様の亡くなられた年を起点とする仏暦とは、仏法を聞きいただいていく後の私たちにとって「最大のご縁」であり、「最大の関心」となるのだと思います。
例えば私たちは祖父母や両親が亡くなった後に、毎年誕生日のお祝いをしますか?
おそらくしないでしょう。
しかし毎年のご命日のお勤めはするでしょう。
もちろん仏教も生まれたということを大切にします。しかしそれ以上に、残された人たちに死という人間としての根源的な悩みを示す節目が重要なのだと思います。
仏暦は仏教の開祖であるお釈迦様の亡くなられた年を基準にしています。
普段は西暦や元号を使いますが、仏教行事をする時には仏暦も採用し、心の中の関心事として仏法のご縁を届けられた仏様に思いはせていくのだと感じます。
仏暦と皇紀の簡単な覚え方
仏暦と皇紀の簡単な覚え方を紹介します
キーワードは「こよみ」と「いいな」です
- 仏暦元年は西暦紀元前543年
- 皇紀元年は西暦紀元前660年
仏暦と皇紀は、西暦元年からの差は「543年」と「543年+117年」です。
- Q西暦1990年は仏暦何年?皇紀何年?
- A
- 仏暦2533年。(1990+543)
- 皇紀2650年。(1990+543+117)
語呂合わせで覚えると簡単です
「543・117」を「こよみ(暦)・いいな」で覚えてみて下さい。
「こよみいいな」を繰り返し唱えてください。語呂もよく覚えやすいでしょう。
仏暦は”Bhudda Era”で表現
皇紀や元号は「皇紀○○」・「平成□□」の表現をしますよね。
西暦だと世界中で使われており、キリストの誕生前も示します。
キリストが生まれる前の年を”Before Christ”から”B.C.”で、キリストが生まれた後を”Anno Domin”から”A.D.”で表現します。
仏暦も世界中で使われ、仏暦を示す言葉があります。
仏暦のことを”Bhudda Era”と表現します。eraには「時代、時期、紀元」の意味があります。
省略した形は“B.E.”となります。
ですので令和6年なら、仏暦はB.E.2567、西暦はA.D.2024となります。
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マイナーな仏暦とメジャーな仏暦の違い[2020質問回答]
仏暦の質問をいただきました
仏暦は『釈迦仏が入滅した(亡くなった)年が基準』と説明しました。
そして『西暦紀元前624年生まれ~前544年入滅の説が主流』であり、『全仏もタイ仏暦を採用』しています。
しかし西暦2020年(令和2年)を仏暦2563年とせずに、仏暦2586年と表す人もいます。
この違いは何でしょうか。
現在メジャーな「西暦の数字+543」の仏暦は、南伝仏教の東南アジア方面で考えられている釈迦仏の入滅年・亡くなった年が基準となっています。
釈迦仏が生まれた年 | 亡くなった年 | |
南伝仏教 | 紀元前624年 | 紀元前544年 |
北伝仏教 | 紀元前566年 | 紀元前486年 |
一方で中国や韓国・日本の方面に伝わった北伝仏教では『西暦紀元前566年生まれ~前486年入滅』の説で考えられることもあります。仏教では死のイメージがあるかもしれませんが、実際にはお釈迦様の誕生日を祝う花まつりがありますように、誕生を大切に祝う習慣もあります。
ですのでマイナーな「西暦の数字+566」の、お釈迦様の誕生年を基準とする仏暦を使用するお坊さんもいます。
この曹洞宗のお坊さんのブログ記事を参考にすると、明治の仏教学者高楠順次郎の「仏誕」に数字を合わせているようです。
仏教の暦と言えば、釈迦仏の入滅年の「仏暦(仏滅紀元)」がメジャーですが、曹洞宗では誕生年の「仏紀」を採用しているようでした。
学者によって釈迦仏の誕生入滅の年は違うので、年数が異なるのは当然のこと。でも日本では全日本仏教会が採用したタイ仏暦の仏暦がメジャーになっています。