こんばんは。 僧侶のかっけいです。
香川にある小さなお寺の僧侶なのですが、現在自坊には防犯カメラがいくらか設置されています。
一昔前は地方にあるごく普通の神社仏閣に防犯カメラが設置されるなんて考えられなかったと思うのですが、現在ではそうも言ってられない状態です。
今回は僧侶の視点からみたお寺にカメラを設置する理由です。
なぜお寺に防犯カメラが必要なのか。
①防犯のため。(犯罪抑止)
防犯カメラの必要性とは一般的に考えられているのは、やはり犯罪抑止のためですね。
神社仏閣では昔からの戒めとして、「仏様やお天道様が見ているから悪いことをしたら駄目だよ。」、「罰があたるよ。」などと教えられてきていたので、お寺や神社(社・祠)に悪さをする人はそんなにいなかったでしょう。
しかし現在では年間の神社仏閣への犯罪の割合はそれなりにあります。
刑法犯認知件数は減ってきているのですが。
平成14年では刑法犯認知件数はおよそ3万6千件だったのですが、平成28年では1万2千件を切っています。
その中で神社仏閣への侵入窃盗被害の認知件数は全体のおよそ2.9%になっています。
侵入窃盗犯罪件数の約3%が神社仏閣
お寺というのは侵入しようと思えば、比較的しやすい方ですからね。
建物の敷地面積に対して、人がそんなにいないのですから。
田舎のお寺や神社では無人の建物もあるくらいです。
神社仏閣への被害としては例えば以下のものがあります。
- 仏像の盗難やイタズラ、破壊
- 建物への落書き・破壊
- 賽銭泥棒
- 放火
- 金品などの窃盗
- お墓などのお供え物の窃盗
他にも細かいことを挙げればきりがないのですが、たくさんの被害があります。
田舎の神社仏閣は犯罪されやすい状態。
お寺というのは、悪さをしようとする人にとっては最高の環境ですね。
不特定の人が自由に敷地内に入ることができ、持ち物も検査されることもない、さらに死角も多いですからね。
純粋にお参りに来ている人と、悪さを企てている人は見わけがつきません。
更に田舎だと、夜間はお寺だけでなくお寺周辺も暗闇になっているため、息を潜めていると誰にも気づかれないことも可能だったりします。
照明や防犯カメラもないですからね。
大きくて有名な神社仏閣でないとお参りの方がいないことが普通であるため、日中でも不審な行動をしていても大丈夫なことがあります。
人がそもそもいないので、犯罪抑制が難しいのです。
②お骨を預かるようになったため。
自坊円龍寺の場合は、ご門徒さんのお骨を預かる様になったことが一番の理由になります。
今の日本ではかつてのように家にある代々のお墓を守り続けるのが難しくなりつつあります。
香川のような田舎でもそうです。
最近では廃墓(はいぼ)が増えつつあります。(最近作られた表現だと「墓じまい」です。)
お墓を廃止にすると中に納めていたお骨をどうにかしないといけません。ただ日本には墓地埋葬法はあるので、テキトーに扱うことはできません。またご先祖の大切なお骨ですので粗末にすることもできません。
そこで円龍寺ではご門徒さんだけのお骨を預かるスペースを新しく用意しました。
ご門徒さんのお骨ですからお寺では大切に納めていますし、お参りの方もお墓と同じ感覚でお参りしていただいています。
しかしそのような墓と同じような状況になったことにより、見知らぬ人もお参りに来るようになりました。
疑いはよくないのですが、大切なお骨を預かっている立場なので、防犯カメラをつけることを決めました。
ただこれは監視をするためではなく、何か問題ごとが起きた時のためや犯罪抑制のためです。
納骨される方にはカメラが備え付けられていることを説明しています。
近くのお寺でも不法侵入が増えている印象です。
円龍寺では幸いにも不法侵入などの犯罪は確認されていません。
いくらか対策もしていますので。
しかし近隣のお寺さんからは泥棒に度々侵入されたり、近くの神社(お宮さん)では頻繁に賽銭箱荒らしがいることを耳にします。
特に神社はお寺と違い誰も住んでいないため、夜間の犯罪が多いそうです。
最近ではセコムやアルソックなどの警備会社と契約しているところもだいぶ多くなりました。
どこのお寺も神社も護持運営が大変なのに、こんなつまらないことに檀家さんの懇志を使うのはやりきれない思いなのですが、犯罪をする人にはそのような大勢の人たちの心は伝わらないのでしょう。
お寺や神社は金目のものがあると勘違いされている人がいるでしょうが、それは妄想ですね。
盗むものがないので破壊や付け火をされることもあるので、本当にこわいです。
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さいごに。本当はカメラを付けたくなかった。
私もそもそもはカメラの導入には慎重な立場でした。
しかし近隣の神社仏閣に携わっている人の話を聞くと、これからの時代はなんらかの対策も必要であることが感じるようになりました。
円龍寺では現在防犯カメラを何台か設置していますし、その他の防犯対策もしています。
円龍寺では今からおよそ130年前にも失火(おそらく放火)の被害にあいました。その結果3日間燃え続け、多くが灰燼に帰しました。
窃盗によって個人的な持ち物が盗まれるのはまだいい方です。(良くはないですが。)
一番いけないのは、お堂を傷められることや御本尊が傷つけられることです。
お寺というのはお坊さんの所有物ではないんですよ。ご門徒さん(檀家さん)と共に永代に渡って維持し続けていく建物です。皆さんの信仰の場であるのですから。
一部の心無い人によって防犯上のカメラを付けなくてはならなくなったのは非常に残念です。