香川の僧侶のかっけいです。
近年、香川県はインバウンド(訪日外国人観光客)の増加が著しいです。2012年からの5年間では、外国人宿泊客の延べ人数が11倍以上に増え、全国1位の伸び率を記録しています。(4万人から45万人ほどへ増えた)
実際地元のホテルでは外国人宿泊者のおかげか、以前よりも部屋が埋まることが多くなっています。また古民家をリフォームした民泊も増えつつあります。(自坊のお寺のすぐ近くにもできました)
四国には空海ゆかりの88ヶ所寺院のお遍路巡りが有名です。一昔前は日本人のお遍路さんばかりでしたが、ここ数年はアジア圏の人たちでしょうか、団体客がバスに乗って札所寺院に観光に来ています。(一人歩きのお遍路さんは、ヨーロッパやアメリカの欧米人の特徴にも見えます)
さて数字の上では全国の中で香川県はかなりのインバウンド(訪日外国人)の増加となっています。香川に住んでいる私たちも外国人が増えたなあと肌で感じるほどです。
しかしどうでしょうか。
- インバウンドが増えたからといって、私たちの生活に何か変化があっただろうか。
- 観光寺院(札所)やこんぴらさんや栗林公園といった有名観光地以外の場所に来ているのか。
- 地方の一寺院はインバウンドの増加の恩恵・変化を受けているのだろうか。
正直なことを言えば、インバウンドの増加した香川に住んでいながら、訪日外国人と接する機会というのは全くありません。
今回は「インバウンドが増えていく中で、地方の一寺院ができること」について、私が思うことを書いていきます。
香川県に訪れる外国人が増えている理由
地方のお寺ができることの前に、なぜ香川県に多くの外国人が訪れるようになったのか説明します。
- 高松空港の民営化・交通アクセスの改善・国際線の増便
- 瀬戸内国際芸術祭やサミットの開催
四国に訪れる外国人は高松空港からの割合が最も大きいです(約30%)。関西空港や成田・羽田から日本に訪れる人よりも多く、香港やソウル・台北・上海各線の増便拡充により、以前よりも気軽に四国にアジア圏の人が来られるようになっています。高松空港も民営化し、空港の整備や空港からの観光地アクセスなど、高松空港の利便性が向上しています。
2016年5月に伊勢志摩でサミットが開催される直前に、香川高松で四国初めてのサミット関係閣僚会合がありました。その後も日台観光サミットが開かれるなど、香川の知名度向上に役立ったと思います。また瀬戸内国際芸術祭が2010年から3年毎に開かれ、海外からのアーティストも参加し海外からの知名度も増え、前回の第3回瀬戸芸では外国人来場者が13%ほど占めていました。
香川県の地道な努力が少しずつ結んできている結果だと思います。(外国人だけでなく、国内からの訪問者も増えています)
地方の一寺院ができること
- 東アジア諸国に向けてアピールしていく
- 宿坊といった宗教体験型宿泊をすすめる
東アジア諸国のインバウンドに対応する
香川県に訪れる外国人の8割は東アジア諸国です。
2016年の統計では、
- 中国から28%
- 台湾から25%
- 韓国から14%
- 香港から3%
となっており、全国の都道府県平均よりも香川は東アジア諸国からのインバウンドが多いことが言えます。
魅力を世界に発信する・グローバル化を考える時、どうしても英語による情報発信やサービスをイメージしてしまいがちですが、現実的には英語よりも中国語(繫体字・簡体字)や韓国語の対応をメインにした方が良いのです。
もちろん東アジア諸国に比べて、ヨーロッパ・アメリカ諸国の人々の「SHIKOKU・四国」の認知度はずっと低いです。(台湾・香港からの認知度は4割、中国からは3割に対して、アメリカやヨーロッパからは5%ほどです。)彼らに対して英語でアピールをしていくことも考えられますが、それは地方の一寺院の取り組みではなく、行政の役目ではないでしょうか。
以前よりもホームページは手軽に作れるようになっており、各お寺は独自に魅力を世界中に発信できます。
香川に訪れた外国人の多くは、観光ガイドブックに載っている場所にしか行きません。こんぴらさんや栗林公園や地中美術館や小豆島などです。
そこしか知らないから当然のことです。
しかし例えば丸亀市であれば、丸亀城や中津万象園も見どころとなるでしょう。また各お寺でもそれぞれに歴史・仏様・教えがあり、いくらでも香川に来た人たちに対してアピールすることができます。
興味をもっている東アジア諸国の人たちに対して、その国の言葉をもってアピールします。
お寺に宿泊し宗教体験をする
香川県に観光に訪れた訪日外国人のうち、65%が宿泊します。3分の1は宿泊せずに県外に出ていきます。
宿泊することにより香川県の魅力に触れる機会は増え満足しますし、また経済効果も期待できるでしょう。
今、香川県は宿泊場所が不足気味で、高松ではホテルが急ピッチで建てられています。
対して一寺院ができることは、宿坊といったお寺で簡易に泊まってもらうサービスができるのではないだろうか。
有名な場所・歴史的な場所に訪れるのが今までのインバウンドかもしれません。しかし彼らは日本の文化やその地域での暮らし・雰囲気も味わいたいでしょう。
伝統的な建物で宗教施設であるお寺は格好の場所と言えるでしょう。
その地元に住む人(僧侶)との交流もでき、徒歩・レンタカーによる地域散策もでき、読経や写経といった宗教体験もできます。
お寺ごとに取り組めることは違うでしょうが、仮に宿泊ができなくても、お坊さんが地元のガイドや自坊のお寺の紹介などを受け持ってもいいでしょう。
ただ香川に外国人が来ているだなあと眺めるのではなく、迎え入れる場を提供することが地方の一寺院の仕事になるのではないだろうか。
(なお自坊ではお寺の宿泊は無理そう。でも近くに古民家の民泊があるからそこに泊まっていただき、宗教体験や地元観光ガイドはできそう)
広告 - Sponsored Links
さいごに。壁となるのが語学力の問題
私の住んでいる場所は魅力がない・観光資源が乏しいと思っている人もいるかもしれない。
でも日本に訪れる訪日外国人観光客は、その地域に興味があって来ています。特に四国訪問経験者のアジア圏の人は、訪日回数4回以上が4割ごえと何度も訪れています。
近いからこそ気軽に何度も訪れられるのでしょうし、何か体験したい・見たい・知りたい・感じたいと期待しているのでしょう。
私たち地元の人からすれば当たり前のように感じていることも、海の向こうのアジア諸国の人からすれば全く別の文化・習慣に感じることでしょう。
これからもインバウンドが増えていくと思われる中で、地方の一寺院ができることとは、奇をてらった面白おかしいことではなく、この場所に来てくれた外国人観光客に対して温かく迎え、仏教寺院を通しておもてなしをしていけばよいでしょう。
ただしどうしても紹介するには語学力というのが必要です。
英語でも満足に紹介できないのに、中国語や韓国語と複数の言語を使えるだろうか。(私は無理)
伝えたいことはたくさんありますし、迎え入れたい気持ちもあります。しかし外国人観光客と積極的にかかわりたくても語学力の壁があり、不十分なコミュニケーションとなってしまうかもしれない。
一寺院ができることはたくさんあるでしょうが、語学力の問題から尻込みしてしまう恐れもあります。
続きの記事:中国語ホームページ(多言語化)はかなり難しい理由