初物と仏教。高額な初競りを見て思ったこと

丸亀に住む真宗僧侶のかっけいです。

先日、香川県特産の真っ赤なミカン「小原紅早生(おばらべにわせ)」の初競りがありました。

初競りってどうしてあんなに高額な落札があるんでしょうね。今年は2.5キログラムで100万円がつきました。平均取引額は3600円余でした。(ちなみに昨年の最高は25万円で、平均は約4000円)

高額な落差がある理由はご祝儀相場によるものだそうです。

高額な初競りを見てお坊さんが思ったことを書きます。

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初物はめでたい。が、高額なのはそれだけが理由なの……

初競りとは、その年に初めて行われる市場での競りのことですよね。

今年最初に市場に出回る、いわば初物を取り扱うので、景気づけと言いますかその年の仕事始めとして色をつけてしまうんですね。めでたい出来事にはご祝儀相場がありどうしても高額になります。

それだけならいいんですが、最高額だけが異様に高く、他の競り品は常識の範囲の価格にとどまっています。

とんでもなく高額な金額にすることで、複数のメディアで大きく取り上げられればCMや新聞広告よりも高い宣伝効果があり、入札額に見合った効果が期待できると想像する私は邪推ですかね。

実際初競りはほぼ間違いなくニュースになるので、それを一番の価格で競り落とせば当然インタビューもあり業者の名前も表示されますよね。

初物はめでたくて高額。でも祝い方は値段だけじゃないよね

さて初物は非常にめでたいです。しかし本当にめでたいと感じる消費者はどれだけいるのでしょうか。

今の時代は物にあふれており、食べ物も季節感を感じにくく、一年中不足なく手に入ったりします。また食べたくても食べられない貧しい時代を経験していないので、食べ物が手に入った・収穫できた時の感動が湧きにくいのではないでしょうか。

お仏壇があり日常のお参りができている家庭では昔から次のようなことを言われます。

  • 「初物や人からの頂き物はまずお仏壇に飾るんやで」
  • 「初物は仏様に一番に供えるんやで」

どうしてこんな面倒なことをするんでしょうか。

それは仏からのお下がり(おさがり)を頂くという感謝からです。

お仏壇にお供えするのは仏様が食べるからでしょうか。いいえ、食べませんよね。仏さんがお腹を空かせいるからですか。いいえ、違いますよね。

よく食事の時には「いただきます」と口にしますよね。あれは何に対していただいてるのですか。

すべてのいのちに対してですよね。言い換えればすべての縁に対してです。

仏法をつきつめて単純に言えば「縁」を説いています。

初物や頂き物というのは自分だけの力で手に入れたのではなく、大地の恵み・生産者・流通者・販売者・人々の気持ちなどなどあらゆる繋がりによって成り立っており、それに気が付き感謝するのが大切なのです。

昔の家族そろってちゃぶ台を囲む時代には、家長が箸をとってから周りの人が食べ始めます。しかしその家長の前よりも先に食べ物が置かれるのが仏様でした。

様々なつながりやはたらきがある中で、初物や食べ物があることを仏様にまずお飾りすることで「仏さま(縁)への敬意・感謝の表現として・日々を新たに生きる機会として」、初物を祝う姿が大事なのです。

ですから何が言いたいかというと、「お金を高くつけるだけじゃなく、きちんと仏様(もしくは神様)にお飾りしましょうね」ということです。


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さいごに。お寺に高額な寄付でもないかなあ…。宣伝にならないからダメかなあ

神社やお寺は維持するのが大変ですよね。行事にはお金がかかりますし、建物は傷みますし修理費用も高いです。

古くから神社や寺院には寄進者の名前(金額も)を記した石を周囲に巡らせることがありました。

今思えばあれは宣伝になっているような気もします。また名前が後世に残ることで、この信仰の場が自分たちの手によって永代に渡る護持ができているんだという気持ちにもなりますよね。

でもあれがあっても「じゃあ自分も高額な寄進をしよう」とは思わないでしょう。維持したいという気持ちがあってもやはり常識的な金額になります。それは初競りと同じ現象ですし、正常だと思います。高額な競り落としが一つ二つあっても、全体を見れば常識的な取引平均額になります。

神社仏閣への寄付というのは宣伝効果を期待してではなく、純粋な気持ちがあれば十分だと思います。

しかし一つだけ提言させていただくと、今後、神社や寺が生き残るためには高額寄付してくれた人の名前や金額などを広く宣伝するのも手かもしれない。(宣伝になると初セリのように常識を逸した金額をする人や企業があるかもしれない)

(ただ神仏への寄付には、名前も金額も表に出してほしくない人もいるので、無節操に誰もが閲覧可能で、誰それが○○円と書くのは問題です)

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