こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
12月になりますと、あちらこちらから「一年が早いなあ」「もう年末近いなあ」とボヤキのような何とも言えない、時間のあっという間の過ぎ去りが身に染みているようです。
そして後10日もすれば新年を迎えます。食べて寝ていたらあっという間のことです。
真宗寺院である自坊円龍寺も無事に報恩講法要が終わりました。
後はのんびりと年末年始・お正月を迎えられればなあと思うのですが、いやいやお寺はそんなにのんびりと年を越せられないんですよ。
そんなお話を今回します。
師走だからお坊さんは忙しいの?
『寺院が12月・年末年始のは忙しいのは「師走(しはす)」だからでしょ。』と言われます。
辞書にも、家々で師(僧侶)を迎えて読経などの仏事を行い、僧侶があちこち走り回るからというような説明があります。
う~ん。でもどうでしょうね。
正直、師走だからお坊さんは忙しいとは思いません。むしろ11月の方が慌ただしいです。
その理由は私の以前の記事『師走(しわす)って本当にお坊さんは忙しいの?真宗僧侶がお答え』に書いています。ちなみに11月の方が忙しく感じるのは報恩講参りが浄土真宗ではあるからです。
じゃあ、どうして年末はお坊さんは忙しいの?
それはですね。
年末の大掃除と、年賀はがき作成と、他のお寺の報恩講法要があるからですね。
年末の大掃除について。
例えば一般家庭でも年末年始は大掃除をしますよね。お寺でも同じように年末に大掃除をします。
特にお寺の場合はお煤払い(おすすはらい)と言って、本堂に一年の間で溜まっていた埃を取り除くことをします。お寺によっては仏具のお磨きもしているでしょう。
西本願寺や東本願寺といった有名なお寺では毎年12月20日に、全国から集まったご門信徒によるお煤払いが行事として行われていますよね。
次に年賀はがきの作成です。
お寺の場合はご門徒に新年の挨拶となる年賀はがきを送ります。全員送れるかはわかりませんが、とりあえず連絡先が分かり毎年年賀のやり取りをしている家には送っています。
さらには寺院同士でも年賀はがきのやり取りをしている場合があります。
また寺には喪中はがきが多く届きますので、これらの名簿を確認していますと年末は宛先確認が非常に時間がかかります。
他のお寺の報恩講法要に参加するから。
さて自坊ではすでに報恩講法要が終わっています。
しかしまだまだ他のお寺では順次報恩講法要が営まれています。近くのお寺で遅いところでは12月28日に報恩講法要をしています。
私の住んでいる地域では「つとめあい」という習慣があります。
それぞれのお寺のお坊さんが互いに法要にお参りし、読経に参加することです。
浄土真宗では11月28日が宗祖親鸞聖人のご命日で、多くのお寺が本山の法要が終わった後に自坊で法要をします。すると自ずと年末付近が混み合ってしまいます。
なかなか年末が近づいてきたからってお坊さんはのんびりできないんですね。
もちろん「年賀はがき・掃除・法要」以外にも、ご門徒さんの祥月命日や年忌法事といった仏事もあります。
「年末年始付近に法事なんてするの?」と思う人もいるかもしれませんが、普通にしますよ。
12月31日や1月1日に亡くなる人もいるんですから。
まあ実際には大晦日や元日や正月三が日に法事をされる人は非常に少なく、数日ずらすケースが多いですが、一方で年末年始付近は家族が帰省し集まりやすく法事をしやすいと考えもあります。
私も明日法事がお願いされています。
お寺は年末は少し慌ただしい。でもすごく忙しいわけでもない。
さてお坊さんの師走だから忙しんでしょうと思われています。
確かに年末付近は少し慌ただしいです。のんびりと気楽に過ごすことはできません。
しかし自坊の報恩講法要が終わると少しは落ち着きます。
あとはちょっとずつ掃除をしたり、年賀はがきを作成したり、他のお寺の法要に参り、法事を勤めていきます。
寺院の年末年始には除夜の鐘を撞くイベントがあったり、除夜会・元旦会・元日会・修正会といった法要が営まれていることがあります。
年明けには初参りとしてお寺にお参りに来られる人もいます。ですので当然ではありますが、お寺を留守にすることはできませんね。
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さいごに。時間が経つのは本当に早い。ほんとうに早いんやで。
大晦日の夜、お寺から除夜の鐘の音が響き渡りますね。
あの音を聞いて皆さまはどのようなことを感じますか。何にも感じませんか。
「今年も何とか一年を越せた。また来年も頼みます」と思いますか。
仏教では諸行無常という考えがあります。あらゆる出来事が常に変化しているということですね。私らは目の前の楽しみばかりを見とるんやけども、いざ振り返ってみますとあっという間の取るに足りないようなことばかりです。
最終的には今のこの私がピックアップされないといけないのですが、そのために過去と未来を見つめないといけません。
ただ何気な~く時間を過ごし、一年を過ごし、人生を終えていくようではちょっと空しいように感じませんか。
なかなか忙しい日常の生活をしていますと人生について考える時はないのかもしれません。年末年始は人生を振り返る有難い機会です。
お坊さんの私もお寺の掃除をしながら、年賀はがきを作成しながら、報恩講法要にお参りしながら「ああだいぶ人生生きたなあ」と感じるところです。
(人の一生なんて長くてもたかだか100年の事。あっという間のこと。ちょっと寝たらすぐ来るで)