こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
お寺にお参りをしないと気が付かないことってたくさんありますよね。
仏様周辺のお飾り(荘厳)も正にそうです。
今回は仏様(阿弥陀様)にお供えする御仏飯の数についての話です。
お仏飯の数は1つor2つ?
まずはこの写真を見てください。
これは自坊円龍寺(真宗興正派末寺)で実際にお飾りしている御本尊へのお仏飯です。
2つの仏飯器がありますよね。
このお飾りの仕方が正式な形となっていまして、御本山の興正寺でも毎朝、御本尊の阿弥陀如来像前にはお仏飯が2個飾られています。
阿彌陀仏像にはお仏飯2つ
なぜ阿弥陀仏にはお仏飯を2つお供えするのか。
よくある間違い。
- 1つは御本尊の阿弥陀如来に対して。
- もう1つはご先祖たちに対して。
正しい考え方。
- 1つは御本尊の阿弥陀如来に対して。
- もう1つは釈迦如来に対して。
さてさてなぜ浄土真宗では阿弥陀如来に対してだけでなく、そこにお姿がない釈迦如来にもお仏飯をお飾りしているのでしょうか。
キーワードとして「釈迦・弥陀二尊」という言葉があります。
浄土真宗における阿弥陀仏とはどういった存在なのか。
それは阿弥陀仏という仏さまは、悩みや苦しみの中で生きている私たち人間がどれほど頑張っても得や損などにとらわれ救われがたい存在であり、大菩提心よりすべての人々が救われるお念仏の教えを願われたのです。
ですので阿弥陀仏は願い主(願主)であると同時に救い主(救主)と言われるのです。
しかし阿弥陀仏とは歴史上実在の方ではありません。
ではどうやって私たちに阿弥陀仏のみ教えが届いたのか。
それは釈迦如来(釈迦牟尼仏・お釈迦様)という多くの人々に様々な仏法を説かれた仏さまが実在したからです。
この釈迦如来と言われる方が阿弥陀如来の願い・教えを説かれなければ、私たちが南無阿弥陀仏のお念仏に出あうことはできなかったのです。
ですので釈迦如来のことを教主とも言われているのです。
後の世で説明された言葉ではあるのですが、七高僧のひとり善導大師の二河白道(にがびゃくどう)の図が有名であり、東の岸から釈迦如来が西の岸からは阿弥陀如来が悩みや苦しみや憎しみなどの狭間で生きている私たちに一筋の道を示してくださっています。
このように浄土真宗では阿弥陀仏と釈迦仏の関係が深いのです。
ですので御本尊には私たちが目に見える形で表された阿弥陀仏の姿があるのですが、その向こう側には釈迦仏もまたいらっしゃるのです。
お仏飯を2個(1対)お飾りするのはその二人の仏様(二尊)に対してのお供物となるのです。
ちなみに誤解が生じてはいけないのですが、少しだけ触れておきますと浄土真宗では先祖供養のためのお参りはしないので、ご先祖のためのお仏飯はお飾りしません。
お仏飯をさしていただくのは、私たちがいのちを保つために食している食べ物が多くのいのちのご縁やご苦労・お世話を通して成り立っており、直接目にすることができない数限りないいのちの上で今のこの私があることに気づかさしていただき、感謝を申し上げるのです。
決して仏様が食べられるわけでも、ご先祖が食べられるわけでもありません。
仏飯器をお飾りする法則。
あまり仏飯器をお飾りする法則について説明されている方は少ないと思います。
でもやっぱりルールというのがあるんですね。お寺さんはテキトーな荘厳をしているわけではないので。
宗派によって異なるかもしれませんが、お仏飯をどこに配置すればいいのか参考となれば幸いです。
お仏飯を配置する場所の考え方。
- 必ず「口」がある所の前にお飾りする。
- 特別な理由がない限り一か所に付き1つ。
「口」がある所とは言葉の通りで、私たちが物を食べるときに開く部位です。
つまりはお姿が描かれている「絵像」や彫られている「仏像」が対象となります。
ですので例えば『南無阿弥陀仏』などのお名号が祭られている前にはお仏飯をお飾りしません。
そして例えば、仏像一体にも複数の口が存在している時がありますがお仏飯は1つです。
また掛け軸に複数の人物や仏様が描かれている場合もお供えするお仏飯は1つとなります。人物や仏様が仮に7名や20名描かれていたとしてもお仏飯は1つです。
真宗興正派のお仏壇にお祭りする仏様や人物は、以下の通りです。
正面の御本尊に当たる所に、阿弥陀仏の絵像か木像もしくは南無阿弥陀仏の六字名号。
向かって右側に、帰命尽十方無碍光如来の十字名号もしくは親鸞聖人の絵像。
向かって左側に、南無不可思議光如来の九字名号もしくは本寂上人の絵像。
ですので一般のお仏壇では、正面の御本尊が絵像か木像の阿弥陀仏にはお仏飯を2つ、左右が親鸞聖人と本寂上人の御絵像の場合はお仏飯を一つずつとなります。
名号は文字なので口が無く、お仏飯の荘厳は不要です。
さいごに
さてさてどうですか。
お仏壇にお仏飯を何個お飾りしたらよいのかを疑問に思われてこの記事を見た人は普段から仏さん参りができている人でしょう。そのような方には説明するまででもないのですが、無理にお仏飯の個数にそれほどこだわる必要はないんですよ。
真宗寺院の場合は釈迦・弥陀二尊の考えから御本尊阿弥陀如来の前にはお仏飯を2つお飾りしますが、家のお仏壇では御本尊前に2つもお飾りするスペースを確保しにくいでしょう。
お仏飯とは限りないいのち・ご縁への感謝であり、形ばかりにとらわれては本末転倒となってしまいます。
無理のない程度にお仏飯をお飾りし、無理のない程度に続けていくことが大切です。
そしてお仏飯とは一日中お飾りするものではなく、朝にお飾りするとお昼までには下ろします。法事などの仏事では法要中にお飾りしておくのですが、きちんとお参りの方に見えるように盛りましょうね。それも新しく炊いたお米を。
家によってはかなりの月日を仏飯器にお仏飯を持ったままの人もいますし、ほんの小指くらいの量しか盛らない人もいます。
今回の話とは少しテーマがそれてしまいますので、お仏飯の盛り方については今後説明します。
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追記。お仏飯の盛りつけ方、作法について。
8月18日に浄土真宗におけるお仏飯の盛りつけ方法とお飾りの方法について書きました。
詳しく書いたため、ボリュームが多くなってしまいましたので別記事として紹介しました。
よろしければこちらもどうぞ。「浄土真宗における正しいお仏壇の作法・盛り方などを紹介」