こんばんは。 真宗興正派の僧侶のかっけいです。
お坊さんや仏具店の店員にお仏壇のお飾りの仕方を訪ねますと『普段は三具足(みつぐそく)で、法事の時は五具足(ごぐそく)にして下さい。』と言われますよね。
しかし一般の人が急に「具足(ぐそく)」という聞きなれない言葉を使われても理解できないでしょう。
今回は具足の意味と具足の飾り方について説明します。
具足の意味は、満ち足りていること。
具足には数多くの意味があります。(辞書には15種類くらいの意味が載っています)
具足には、家来や従者、武具や甲冑、鎧などの意味もあり、鎌倉時代前後の武家社会でよく登場し歴史好きの人にはなじみのある言葉でしょう。
しかし今回の具足はお仏壇のお飾りに対して使われる言葉です。
【具足】(ぐそく)
①物事が十分に備わっていること。揃い整っていること。
日本国語大辞典ー第二版-
具足は、完全に具(そな)わっていて何一つとして欠けるものが無い、満ち足りた状態を表しています。
そのために「円満具足(えんまんぐそく)」や「輪円具足(りんえんぐそく)」とも表現されます。
円満とは具足とほぼ同じ意味で、「完全に満ち足りていること・すべて備わっていること」や「功徳・願いなどが十分に満たされること」を表します。
つまりはお仏壇のお飾り(荘厳)で使われる具足とは、仏様に対してしっかりと丁寧にお飾りができていることを意味します。
その丁寧なお飾りの仕方を三具足や五具足といった形で表現しているのです。
三具足と五具足の飾り方。
今回は自坊のお寺で三具足と五具足のお飾りの仕方を写真で示しましたが、お仏壇でも具足の飾り方は同じです。(仏壇とはお寺のミニチュア版だから)
三具足の特徴。仏壇での並べ方が肝心。
先ほども説明しましたように具足とは、仏様に対しての丁寧なお飾りの仕方のことです。
ですので並べ方が決まっています。
仏さまの方に向かって、左から花瓶(花立て)・香炉・燭台(ろうそく立て)の順番が正式です。
よくある間違いが、花瓶と燭台の位置が逆になることです。逆は正しくありません。
三具足は日常のお飾りであり、お盆やお彼岸や祥月命日といったお勤めではこの三具足で充分です。ろうそくも白色で大丈夫です。
五具足の配置は「一対」がキーワード。
五具足は仏様の方に向かって、左から花瓶・燭台・香炉・燭台・花瓶の順番になります。この順番ですよ。
これも三具足と同様に並べ方が決まっており、花瓶と燭台の位置が逆になっていることが多いです。花瓶が一番外側に置かれます。
一対がキーワードであり、左右の両端に花瓶を一対に、その内側に燭台を一対に、真ん中に香炉を配置します。
三具足の場合と比較して仏具の数が増えており、見るからに丁寧なお飾りになっていますね。
五具足のお飾りをするのは、一周忌や三回忌といった年忌法要や報恩講法要、また結婚式や葬儀式といったあらたまった仏事の時にします。
具足・仏具を置く向きの豆知識。
花瓶や燭台といった仏具の場所を置き間違える人は多いです。また、飾り方が間違っていることに気が付くお参りの人も多いです。
しかしまだ細かい注意点があります。
香炉や燭台は三本足です(たまに違いますが)。三本足の場合は一本足がお参りの人の方に向くようにして置きます。
また燭台が鶴亀のデザインであることがあります。大谷派・高田派・仏光寺派は鶴亀のことが多いですよね。
鶴亀の燭台の場合は鶴のくちばしが正面にくるようにして置きます。(覚え方は鶴と亀の顔が内側に向くようにです)
四具足というのも実はある。
一般家庭のお仏壇では三具足と五具足の説明を受けるでしょう。
でも実は仏具を4つ置いた四具足というのもあります。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、上の写真は四具足の例です。
四具足は仏飯器を除いた仏具で、華瓶(けびょう)1対と燭台と火舎香炉(かしゃこうろ)で構成されます。
この四具足のお飾りをするのは、仏壇の上段、お寺で言えば仏様の目の前の上卓(うわじょく)がある場合です。
華瓶は花瓶と違い、樒(しきみ)などの青木を用意します。色花はお飾りしません。
こんなお飾りもあるんだあと参考程度に考えてください。基本は三具足と五具足ですから。
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さいごに。具足は仏様のお浄土の様子を私たちに見せるもの。
仏様にお参りする時は、3つ大切なお供えがあります。
お香とお花とお光です。
それを満たしているのは三具足ないし五具足です。
別に具足をしっかりとしなくてもお仏壇にお参りでき仏様に向かって合掌することはできます。
しかしお仏壇とはお寺の内陣をコンパクトにしたものであり、仏様のお浄土を表現したものです。
3つの大切なお供えを仏さまにお飾りするというのは、仏様が満足するということではなく、お参りの人に仏様へのお給仕の機会を頂いているのであり、具足をする中で自然と仏様とのご縁を頂いているのです。
具足の飾り方を見ていただいたら気づかれるでしょうが、お供えは仏様には向けません。私たちお参りの人に向いています。
これは私が用意したお飾りではあるのだけれども、そのお飾りのすがたを通して先祖を偲び、仏さまを念ずることができるのだと思います。
具足のお飾りを丁寧にすることは仏様にお参りする・向き合う気持ちを起こさせてくれるトリガーだと感じます。