こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
皆さんお気づきですかね。浄土真宗のお寺やご家庭に行きますと、お仏壇の横に紋が描かれた黒い箱が置かれているんですよ。
あの箱の中身って、知っていますか。
意外と浄土真宗のご門徒さんも黒い箱をただ置いているだけで、箱の中身を知らないことがあるんですよ。
実はあの箱の中には浄土真宗徒にとって非常に大切でありがたいものが入っているんですね。
あの箱が何のために置かれていて、何が入っているのかを紹介します。
浄土真宗のお仏壇で見られる光景ですので、他の宗派では見られない箱ですよ。
また浄土真宗でも用意しない宗派もあります。
黒い箱の正体は何?何が入っているの?
箱の中には和綴じで綴じられた黒い本が納まっています。
最近の箱にはほとんどの場合、浄土真宗の各宗派ごとの紋がデザインされています。上の写真は真宗興正派の紋で、箱の上部に興正派の抱牡丹紋、側面に八藤紋が描かれています。
古い箱には紋が描かれていないこともありますが、ここ100年の箱には描かれていることが多い印象です。
この黒い箱に入っているこの和綴じの本は、本願寺の蓮如上人が書かれたお手紙が入っているのです。
蓮如上人とは浄土真宗の本願寺の8代目の住職です。本願寺では中興の祖。本願寺を大いに発展させたお坊さんとして称えられている人ですね。この黒い箱にはこの蓮如と呼ばれるお坊さんが書いたお手紙・文章が納められています。
ただこの和綴じの本・蓮如上人の書いたお手紙は浄土真宗の各宗派ごとに名称が異なっているんですね。
- 真宗興正派や仏光寺派だと御勧章(ごかんしょう)(人に勧める文章だから。)
- 本願寺派だと御文章(ごぶんしょう)
- 大谷派だと御文(おふみ)
このように宗派によって蓮如上人の手紙の呼び名が異なっているので、真宗興正派だと御勧章と呼ぶので箱の名称は御勧章箱。本願寺派だと御文章箱、大谷派だと御文箱になります。
和綴じの本の中身はどんな感じなのか。
蓮如上人のお手紙ですから、その当時に蓮如上人が実際に送ったように、漢字カタカナ交じり文の文章です。
一見読みにくいですが、慣れれば淀みなく目を通すことができます。
ただ500年も古い昔の言葉遣いであったり、真宗的な仏教的な表現も含まれているので、今の時代の人にとっては文章をただ読むだけでは意味が通じにくいかもしれません。
一般家庭のお仏壇にある蓮如上人のお手紙は、たいてい一冊(一帖)だけだと思います。
蓮如上人のお手紙は200通以上残っており、その中から1帖~5帖の5冊(およそ80通)に絞りまとめられているのです。
ご家庭によっては一帖目から五帖目まで計五冊すべてを用意されていることもありますが、五帖目のみの一冊だけ用意している家が多い印象です。
ちなみに本山から求めた御勧章の場合は、お手紙の最後に本山の印が押されていると思います。(写真右は真宗興正派の「円頓山 興正寺 華園院」の印です)
なぜ浄土真宗のお寺・お仏壇には蓮如上人のお手紙を用意するのか。
注意、真宗宗派によっては蓮如のお手紙を用意しないところもあります。
先ほども言いましたように、一般家庭では五帖目のみを用意しお仏壇の横にお飾りしている場合が多いと思います。
それは五帖目が真宗の肝要。
つまり浄土真宗にとって大切な考え方、阿弥陀様の仏法いただき方、お念仏のいただき方をご門徒さん向けにわかりやすく書いているからです。
つまりは蓮如上人のお手紙というのは、蓮如上人からの御法話とも言えるのです。
ですので浄土真宗の一部宗派では、朝夕のお勤めの後であったり、法事の後、葬儀の後、通夜の後など、仏様にお参りするときにこれが蓮如上人からの私たちに届けられた御法話だといただいて、拝読させていただいているのです。
ちなみにですが、一帖目から四帖目までは日付がお手紙に記されておりお手紙が書かれた順番にまとめられており、五帖目は日付不明の手紙を中心にまとめられています。不思議なことに五帖目が真宗の要を端的に書かれているお手紙が多いんですね。
五帖目には真宗ご門徒にとって有名なお手紙がたくさあります。例えば、白骨の御文(お手紙)・聖人一流の章(お手紙)・末代無知章・信心獲得の章・御正忌の章などが収められています。
実はこれら五帖目の中でも特に有名な蓮如上人のお手紙は、ご門徒さんが日常のお勤めで愛用しているお経本にも収められていることがあります。
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さいごに。なぜお仏壇の左側に置くのかなどを説明。
さて、お仏壇に置かれているあの黒い箱には蓮如上人のお手紙が納められていて、仏様にお参りするご縁のたびに拝読するものだと紹介しました。
ただこのお手紙が入っている黒い箱の置き場がよくわからないようですね。
この箱は基本お仏壇に向かって左手側に置くことになっています。
それは本山でも同じことです。真宗興正派では本堂余間壇(仏様に向かって左側)に置かれています。そしてこの御勧章を拝読時には右外陣(仏様に向かって左側)にまで持っていき、本堂の真ん中の方を向いて拝読します。(なぜその場所で拝読するのかはわかりませんが、おそらくその場所は本山の歴代の住職らが描かれた掛け軸の前だからだと思います。)
ですので、一般家庭でも左手側に箱を置き、拝読時には後ろ(お参りの人側)に向き直します。
これは蓮如上人の御法話なのですから、お参りの人に聞こえるように向き直して読みましょう。
ちなみに私は真宗興正派の僧侶で、真宗興正派はそれほど蓮如上人とは関係がなく、なぜ蓮如上人の書かれたお手紙を読むのか疑問に思うかもしれませんが、この蓮如上人のお手紙とは、浄土真宗の大切なことがわかりやすく書かれており、今の時代でもぜひ皆様に聞いていただきたいお話だからです。
本山興正寺でも毎日のお勤め、法要時には御勧章を拝読しています。
ちなみにですが、実は御勧章の内容にはその場その場に相応しい、ぜひ読んでいただきたい・聞いていただきたい内容があるのです。(例えば、有名なのでは葬儀での白骨の御文であったり、報恩講での聖人一流章ですね。)
ただ、どのお手紙も蓮如上人からのありがたいお手紙ですので、日々のお勤めではどれでもいいので、ぜひ読んでいただきたいものです。ただお仏壇の横に置いているだけではもったいないですよ。