ほしい物リストより、お線香ありがとうございました

火葬場の仕組み。なぜ休みの日があるのか

僧侶のかっけいです。

火葬場が不足している

最近、そのような話が出てきていますよね。

私の住む香川のような地方では、まだまだ不足しているように感じる人は少ないかもしれませんが、実際には葬儀のとき、一番に駆け込むのが火葬場の予約です。

火葬時間が決まらないと、通夜・葬儀の日時も決められないからです。

東京のような人口が集中している所は、亡くなる人も多いため、純粋に火葬場が足りていません。

地方と異なり、火葬する炉が空いていないのですぐに葬儀ができず、遺体をしばらく安置し、1週間ほどたってからようやく葬儀ができるほどです。

じゃあ考えてみてください。

  • 火葬場を年中無休のフル稼働したらいいじゃない
  • 友引に休むのはなぜ

今回はなぜ火葬場に休みの日(休館日)があるのかを書いていきます。

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公営火葬場は公務員の職員

火葬場はそれぞれの市町村区ごとに用意されていることがほとんどです。

そして自治体がそれぞれ火葬場を設置していることが多いです。ですので役場に死亡届を提出した時に、合わせて火葬許可証認可の申請も提出するのです。

もちろん組合や民間といった民営の火葬場もありますが、全国的に見れば公営火葬場の方が圧倒的に多いです。

さて公営の火葬場は自治体が運営されているので、公務員の職員が数人配置されています。ただし所長や管理者や受付という名目であり、実際には火葬や炉のメンテナンス・清掃・接客・保安管理などは民間委託職員に任されています。

役場のお仕事ですので、公営火葬場の営業時間は朝9時~夕5時・休日をしっかり用意されています。

公営のお仕事ですのでお休みの日はしっかりと設けています。

(なお公営火葬場の休日は各自治体の条例に定められていますが、だいたいの場合、1月1日と長が必要だと認めた日(友引)となっています。)

なぜ友引が休みの日となっているのか

さて多死社会といわれる今日、遺体の火葬が追いつかないところもあります。

お坊さんからすれば友引の日も火葬をしてほしい・葬儀をしてほしいと思っているのですが、公営ではなかなか友引の火葬業務をしてくれません。

友引という迷信があるから

友引(ともびき)に火葬をしない公営の火葬場は多いです。

友引とは、一日の運勢を6パターンから占う暦の名称(六曜)のひとつです。友引・先勝・先負・仏滅・大安・赤口からなります

六曜は仏教と関係なく、また友引であろうが、仏滅であろうが、先負であろうが、宗教的な儀式とは無関係です。縁起が悪いということはありません。

しかし「友引」という文字から、「友を引く」という葬儀に参加した人たちが死者の世界に引き込まれるというふうに迷信(間違った解釈)が生まれたのです。また一部ではこの迷信を深く信じている人もいます。

ですので友引の葬儀・火葬は忌み嫌われるだろうというイメージから、公営の火葬場は友引を休館日としているのです。

炉のメンテナンスの意味もある

炉というのは高温短時間で遺体を焼き上げます。

きちんとご遺体が焼きあがり骨だけにならないといけないので、炉は常に万全の状態でないといけません。

炉のメンテナンスは必須であり、また休みの日も設けないといけません。

火葬場に行きますと、炉が10基あっても稼働しているのは5基だったりしますよね。連続で使用すると壊れるかもしれませんので、休めながら炉をサイクルしつつ焼いているのです。(どの炉も年間の使用数が均等になるように調整されています)

ですので火葬場の休館日は、炉専門の委託職員が炉の保守管理をせっせとしているんですね。

「すべての炉をフル稼働したらいいじゃない」と考える人もいるでしょうが、友引とは別で、現実問題としてそれはできないのです。

単純に職員の休みの日が必要だから

お坊さんのお仕事は年中不定休であり労働基準法なんてあってないようなもんですが、公務員が働いている公営の火葬場ではそうはいきません。

きちんと休みの日と勤務時間を自治体の長が設けていないと、怒られちゃいます。

ですので多くの公営の火葬場では、元日の1月1日(1月2日や大晦日のことも)を休館日にしています。

そしてもうひとつ休むのにぴったりなのが、「友引」の日です。

仏教と友引は無関係ですので、お坊さん的には友引の日の葬儀もウエルカムですよ。でも現実的には火葬場が開いていないので、葬儀ができないのです。

喪主や遺族が友引に葬儀・火葬してほしいと願っても、火葬しないと言ったら休みなのです。

六曜の迷信が都合よく使われているのかは知りませんが、火葬場の職員の休日を決めるときにこの迷信が利用されることになりました。これが文化・伝統だと。


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さいごに。火葬場の不足は今後30年は続くだろう

現代は多死社会であり、火葬場が不足している場所があります。今は大丈夫でも、都会のように火葬まで数日遺体を安置しないといけない時代もくるかもしれません。

生まれてくる人が100万人いかないのに、死んでいく人が130万人います。

これから団塊の世代がますます高齢になり、亡くなる人は今後も増え続け、2040年頃には160万~170万人ほどになると推定されます。その後もしばらくは横ばいの状態だと考えられます。

今は火葬の時間と休みの日の融通が利きませんが、これからは一日の火葬受付時間を増やしたり、友引にも火葬をしたりと、火葬場の運営方法を変化させる必要があるでしょう。

もちろん火葬場を増やしたりすればどうだろうと考える人もいるでしょう。しかしそれは現実問題としてもっと難しいです。

どういうわけか、遺体を焼く火葬場が街中にあることを嫌う人もいます。建てようとすると反対する人もいます。

火葬場とはただ火葬するだけでなく、故人を見送る最後の空間ですし、亡き人の焼きあがった姿を見て遺骨を拾う厳粛な空間でなければなりません。

ただ単に焼き上げる炉だけを作るわけにはいきません。テキトーに火葬場を増やそうとはならないのです。

民間の火葬業者が増えていくだろうと思う人もいるかもしれませんが、賢明な業者なら葬祭業の方が儲かると分かるでしょう。(公営の火葬料金が2万円以下が多いからね。)(可能性があるなら、葬祭業と火葬業の複合業者が現れることですが。)

今後は地方であっても、火葬がスムーズにできるかどうかも不明ですし、場合によっては近隣の自治体の火葬場に2~3倍の火葬料金を出してでも火葬をするケースが増えるかもしれません。

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