僧侶のかっけいです。
葬儀の喪主というのは人生において、そう何度も経験するもんではないでしょう。
葬儀の慣習もよく知らないので、言われたままよく分からない状態で進行してしまうこともあると思います。
お坊さんの私はこんな質問をされます。
『中陰のお勤め表を頂いたのですが、初七日や49日法要の日どり・曜日を間違っていませんか?ズレていませんか』
- 日曜日に亡くなったのに、お勤めが土曜日であること
- 中陰表に二つの日にちが書かれていること
今回は逮夜(たいや)の説明をしながら、なぜ初七日~49日法要といった中陰のお勤めの曜日がズレているように感じるのかを書きます。
中陰のお勤め表の例 [前置き]
お寺では故人の中陰のお勤め表(中陰表)を作成し、喪主にお渡しします。喪主はこれを親戚等に印刷し配り、中陰のお参りをすすめます。
上の中陰表を見てください。
金曜日の5月10日に亡くなった人がいたとします。
しかし初七日には二つの日にちが書かれており、さらには水曜日・木曜日のお勤めとなっているではありませんか。この表を見て、お寺が用意した中陰表の日付・曜日が一日ずれていると感じるようです。
逮夜(たいや)とは前日の大切なお勤めのこと
私の住む地域では「おたんや」という言葉があります。逮夜(たいや)がなまったと言われています。
今ではおたんやのお勤めが減りつつあるように感じますが、昔は大切なお勤めとされていました。
逮夜とは命日の前日のお勤めのことを意味します。
逮夜とは、明日の正しいお勤めの前夜(夕方ごろ)から有縁の人が集まり、次の日に及ぶ夜のお勤めをしておくことです。
自坊の昔の法事の記録を見てみますと、昔の年忌法事では二日間にわたって営まれていたこともよくありました。当日のお勤めだけでなく、前夜にも集まり、一座読経しお食事をしていました。宵からの法事なので「宵法事(よいほうじ)」とも呼びます。
今でこそ一日のはじまりは午前零時や日の出の時刻とされているでしょうが、仏教的には六時礼讃(ろくじらいさん)といい、日没の逮夜が法要のはじまりでした。
今でも浄土真宗の本山では宗祖の命日法要では逮夜法要から開始していますよね。
中陰のお勤めが二日書かれている理由
初七日~49日法要(満中陰)の表には二日分の日にちが書かれていることがあります。
これは下の段が正式なあたりの初七日の日で、上の段がその前夜(逮夜)のお勤めを表しています。
なぜこんな書き方をするかというと、先ほど説明したように、逮夜のお勤めが大切だからです。逮夜から二日間にわたって故人を偲んでお勤めする習慣は失われつつありますが、伝統として書き続けているのです。
最近では意味合いが変わって、「この二日間のどちらかで中陰のお勤めをして下さい」と案内することもあります。ただしその際は、「上の日では、夕方の逮夜ごろでお願いします」とも説明されるでしょう。
下の段の日が命日から数えてちょうど七日毎の忌日にあたるので「中陰正当日」といい、上段はその正当日の逮夜のお勤めですので「中陰逮夜」とされます。
(なお、逮夜のお勤めをするかどうかは地域色があり、関東ではあまりなじみがないらしいです。)
初七日が命日の曜日と違っている理由
さて上の中陰表をまた見てください。命日が金曜日なのに、初七日以降の中陰のお勤めが水曜日・木曜日となっていますよね。
これについてはカレンダーを見ればすぐに理解できるでしょう。
初七日(しょなのか)とは、命日(死亡した日)から数えて七日目のことです。亡くなった日が基準ですよ。
金曜日が命日の場合、初七日などの中陰のお勤めも金曜日だと勘違いしている人は、カレンダーを数えてみてください。
死亡日が10日(金)のとき、数えて七日目は16日(木)となります。17日の金曜日は八日目のお勤めになってしまいます。
このように中陰のお勤め日が命日の曜日と異なるのは、非常に単純なことなのです。二日間書かれているのは、中陰の逮夜のお勤めを表しているからです。
(なお百ヶ日法要の曜日は、命日の翌日となります。5月10日金曜日命日の場合は、土曜日と逮夜金曜日となります。)
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さいごに。逮夜のお勤めについて
繰り返しになりますが、仏事では逮夜のお勤めがありました。今では失われつつありますが。
中陰表には逮夜を含めた二日分の日取りが書かれているので、葬儀経験の乏しい喪主が混乱するの仕方のないことでしょう。
亡くなった日(命日)が1日目であり、初七日の正当日は曜日が一つズレた7日目となります。逮夜はさらにその前日です。
命日とは曜日が2つもズレているので、お寺が間違えていると勘違いすることもあるでしょう。(間違っていませんよ)
逮夜は本当のあたり日の前夜のお勤めのことです。
縁ある人たちが故人の命日をたよりにお参りをし、その人の死のご縁を通して、自分自身のいのちを見つめていく場です。
現代では逮夜のお勤めはかなり減っているでしょうが、家の人だけでも前日の夜に前もって仏前にて手を合わしていただければ幸いです。夜を通して故人を偲んでいただければ。