香川の真宗僧侶のかっけいです。
法事お参りの時に『金封やお布施袋の水引の色や表書きの言葉をどのようにしたらよいのか』、ときどき相談されます。
表書きの言葉は宗派によって違いがありますし、水引の色は地域ごとによって傾向がちがっていることもあります。
ですのでこれからの説明は、私の所属する真宗興正派の水引の色、そして香川県で使われている水引の色として参考にしてください。
なお私の住むところでは黄色と白色の水引の色が一般的ですが、興正派のすすめている色ではありません。
真宗興正派での正式な水引の色の使い分け
まず最初に真宗興正派の正式な使い分けを説明します。
- 慶事……金色
表書き「御祝」 - 弔事……銀色(黒色)
表書き「御佛前」「御香儀」「御香典」 - そのほかの法要……赤色
表書き「御佛前」「御香儀」
(寺院に対して)「御布施」「御礼」
上のまとめを見て疑問に思ったいる人もいるはずです。
黄色の水引を使わないの?私の周りでは、黄色と白色の水引が多いよ?
私が住んでいる香川の丸亀、西讃といわれるところは普段の祥月命日や報恩講参りでは、8割以上の家々で黄白の水引が使われているように感じ折ます。
真宗興正派では正式には上記のように決まっているのですが、それほどご門信徒の皆さんには浸透していません。
そこでこれより以下は、水引の歴史と一般的な水引の色の使い分けを説明します。
水引がはじまった歴史
水引の起源は飛鳥時代、隋の使者の貢物に対し献上品であることを意味する紅白に染めた麻紐が掛けられていたことがはじまりとされています。
当初、この紅白の麻紐の名称は高級な口紅を染料としていた為「くれない」と呼ばれていたそうです。
室町時代になると日本は明という国、今の中国と貿易をしていました。
その明からの輸入品には赤白の縄がつけられており、明にとっては輸入品とその他の品物を見分けるためのただの目印であったとされています。
しかしその時の日本人は違った見方をしたんですね。
この赤白の縄は贈答品にする文化だと勘違いしたんですね。
これ以後日本では赤白の縄を贈答用に用いたといわれています。だからお喜びの時には赤色の水引を使います。例えばお寺でする結婚式(仏前式)ですね。
一般的な水引の色の使い分け
現在、一般的に仏教的儀礼で使われいるのは【赤白】【黒白】【黄白】【黒銀】【金銀】ぐらいではないでしょうか。
これらをどの場面で使うのが一般的なのか説明します。
①慶事は【赤白】【金銀】、表書きに「お祝い」
慶事とは読んだ通り、お祝い事全般のことですね。
仏教的儀式で例を挙げますと、
- 仏前結婚式
- 初産式:(赤ん坊の初めてのお寺参り)
- 入仏(開眼)法要:(新しく仏さんを迎える法要)
- 遷仏法要:(お仏壇やお墓の場所を移動する法要)
- 開闢法要:(新しくお仏壇を迎える法要)
- 建碑法要:(新しくお墓を建てる法要)
などなど、基本的に新しく何かを始めるときに用いるのが【赤白】【金銀】と覚えていただいたらいいと思います。
②弔事では【黒白】【黒銀】、表書きに「御香儀」「お香典」「ご霊前」
弔事はよろこびごとの反対ことですね。悲しい出来事のことです。
仏教的儀礼ですと、
- 通夜
- 葬儀
- 中陰法要
この3つが一般的となります。悲しみ、嘆いているときに用いるのが、【黒白】【黒銀】と覚えていただいたらと思います。
なお「ご霊前」と表書きに書くことが多いと思いますが、浄土真宗では「ご仏前」と書きましょう。
③その他の法要【黒白】【黒銀】【黄白】【赤白】
その他の法要とは、慶事や弔事ではないお参りのことをさします。
仏教的儀礼ですと、
- 百カ日法要:(卒哭忌ともよばれ、悲しみ・哭くのを終える法要)
- 祥月命日・月命日
- 年忌法要
- 納骨法要
- 彼岸・お盆参り
- 永代経法要
- 御正忌報恩講法要
- その他、ご縁のあるお参り
などがあげられます。これら以外にも様々な法要が宗派・地域によってはあると思います。
注目すべきは【黒白】【黒銀】は弔事でも用いられているということです。つまり、もしも色に悩んだら【黒白】【黒銀】の水引の色にすれば、事足りるいうことですね。
ただしどういうわけか、【黒銀】の水引は分厚く立派そうに見えるらしいので、【黒白】よりも多額のお布施を包むときに用いることが多いそうです。
【赤白】もめでたいときに用いるので、普段の法要でも同じように用いることができるのですが、一般の方には法要はめでたいものだとは思われなていないのか、赤白色は避けられている印象です。だから黄白の水引が使われることもあります。
【黄白】の水引を用いるのにはどのような意味があるのか
冒頭に紹介したように私の住んでいる地域のご門徒さんは、普段のお勤めでは【黄白】の水引を用いる方が非常に多いです。
これは真宗興正派の作法ではありません。ですのでひょっとしたら他の宗派の人は黄色と白色の水引をそれほど使われないかもしれません。
【黄白】の水引は元々は京都で使用されていたとされます。京都ではお葬式のお香典に用いていましたが、現在ではかわって【黒白】が多くなったそうです。
京都で【黄白】の水引が使われるようになったのは、皇室の水引が由来といわれています。
皇室への献上物用として用いられている【紅白】の水引が私たちのイメージする赤い水引ではなく、黒っぽく見えてしまうことから、【黒白】の水引を皇室の【紅白】と避けるために【黄白】を用いるようになったと言われています。
皇族が使う水引の色と勘違いしないために、あえて黄色を使うようになったと言われています。
私の住むところで【黄白】が当たり前に使われていますが、地域によっては全く用いないところもあるのではないでしょうか。
真宗僧侶へのお布施の水引の色
葬儀や中陰の時には【黒白】または【黒銀】
それ以外のお勤めでは【赤白】の水引で大丈夫
表書きは「お布施」「お供え」「お車料」「お膳料」などとします。
ここまで紹介した水引の色は、喪主や施主に対してにする使い分け方でした。
喪主や施主は葬儀や中陰といった悲しみの中での法要もあれば、結婚式などの喜びの行事のこともあります。参列者はその場に合った水引を用いますが、僧侶は式の執行をしているのであります。ですので真宗のお勤めの場合は【赤白】を用いていただけたらと思います。
しかし葬儀や中陰の時に【赤白】を用いるのは心情的に難しいようにも思われるので、そこは【黒白】【黒銀】にしていただいたらと思います。
表書きは「お布施」とするとオールラウンドに使えますが、必要であれば細かく表書きを分けていただいても問題はないです。「お供え」や「お車料」などと。
書き方に困ったら「お布施」と書いていただくのが一番無難です。こった家では「ご法礼」と書くこともあります。
なお浄土真宗僧侶には渡すお布施に「読経料」と書くのは避けた方がいいです。理由は仏事を執り行ったことに対する対価ではないからです。仏事の表書きや水引は、仏様の教え・法に出あえたよろこびの心・感謝を表したものであるからです。
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まとめ。金封やお布施の水引・表書きは宗派や地域によって違う
水引・表書きには宗派によって、地域によって大きく異なります。
私が説明した内容をみても納得できない方もいるでしょう。自分の知っているやり方と全然違うと。
でも地域や宗派によって正式な方法というのは存在していないのですから違って当たり前なのです。
水引は「金白・銀白・黒白・赤白」が一般的に使われる色です。ですが黄白も実際にはよく使われています。
色の使い分けというのは自分の気持ちを相手に伝えるために行われていたはずです。要は気持ちが伝わればいいのです。
もっと言えば、無理に水引を使わなければならない必要もないですよね。
白一色の包みもありますし、いまでもそうですがご門徒さんの中には半紙を丁寧に折って手作りしている金封・お布施のときもあります。このやり方される人は、形式にとらわれず、いつも温かい心でお参りしていただいています。自分の気持ちをどうしたら相手に伝えられるのか考えいく。このことが金封に込める想いではないでしょうか。
繰り返しになりますが、水引は宗派、寺院、地域の風土、施主・喪主との関係によって大きく事情が異なってきます。できればこのまとめを見るだけでなく、あなたの檀那時や菩提寺のお坊さんに聞いてみたり、相談しやすい親戚や地域の人に尋ねてみることをおすすめします。
今回の水引のまとめは、香川の真宗寺院のお坊さんが説明した、ひとつの参考としていただけたら幸いです。