真宗僧侶のかっけいです。
今日はお寺で四十九日法要がありました。
最近、お寺での法事が増えているように感じています。
これは自坊のお寺(香川県)だけのことではないと思います。自坊では年に5~10回程度はお寺での法事があります。
今回は、お寺での法事の増加傾向について感じることを書きます。法事場所をお寺にすることはメリットが多いので、施主や参列者によろこばれています。
法事をする場所は自宅だけではない
法事前に施主が決めることとして、法事をするためにすぐに決める3つのことを紹介し、まず「場所を決定すること」をあげました。
香川のような田舎でしたら、家が広いためか、ご自宅で法事をされる方が多いです。
実際、自坊のご門徒での内訳は私の体感では、
- 80%は自宅
- 12%はお寺
- 6%は葬儀社などの会館
- 2%はホテルや食事処
- 1%未満に公民館などの広い場所
これは私の感じてる印象ですので、実際にはもっと違った割合かもしれませんが、イメージとしてはこんな感じです。(数字は適当ですよ)
おそらく都会や住宅密集地で生活している人では自宅の割合が減り、法事の場所を別に用意しているのではないでしょうか。
法事の場所の変化について
平成の時代になってからの30年間で法事をする場所は、変化してきたように思います。
自宅が減り、お寺や葬儀会館などが増えています。
一昔前の法事は自宅が主流
一昔前では、自宅で法事をするのが当たり前でした。
その理由は亡くなった人が生前に生活をしてきた場所だからです。また家の仏壇前にて故人を偲びたい気持ちもあるでしょう。
法事をする理由は、故人を偲び、亡き人を通じて仏縁に出逢わしていただくためです。
法事では兄弟・両親・子・親戚をはじめとして、たくさんのご縁のある人がお参りに来ますね。
田舎の家は広い間取りのため、仏間とお座敷をつなげれば30人でも入ることはできますが、別の問題があります。
その問題とは、駐車場を確保することです。
香川のような地方では車社会ですから、車という移動手段がないと非常に困ります。
都会みたいに電車やバスという交通インフラは不十分です。
広い家でも、駐車場問題がついてきます。
現状は家の人がお参りの人を迎えに行ったり、複数人で乗り合わせたり、近所の親戚宅や公民館などを駐車場として利用することをお願いすることで対応しています。
実際これでなんとか対応できているので、今でもこの方法を採用しているところが多いです。
平成のはじめ、30年ほど前の法事の場所
- 9割以上が自宅
- 5%がお寺
徐々に葬儀会館の法事が増えた
10年ほど前から自宅での法事のあり方が変化してきました。
それは葬儀社の流行りとも関係していると思います。
勘違いされている人もいると思いますが、お坊さんは葬祭業をしていません。喪主からの依頼があり、仏式葬儀や仏式法要を執り行っています。
昔は葬儀に関することは全て親戚・地域の方・講中が助けてくれていました。
役場に死亡届を出すのも火葬場に火葬の連絡をすることも、寺院の手配や、食事の用意や、遺体を運ぶ車もすべて自分たちでしていました。
葬儀社を使わなくても葬儀は普通にできます。
なぜこの20年ほどで、葬儀社を使うのが爆発的に流行るようになったのか。
理由は簡単、お金さえ払えば楽に葬儀ができるから。
葬儀社に依頼すれば、役場への火葬許可も寺院の手配も参列者への連絡も何から何までお金を払えば全てしてくれます。
葬祭業をするのが葬儀社なのですが、いつのまにか法事をする会場としても利用されるようになりました。
葬儀社も儲かりますので、法事に使ってくれればうれしいですよね。友引の日はけっこう法事が入っているでしょう。
10年ほど前からの法事の場所の変化
- 9割が自宅
- 1割が葬儀社の会館
- 5%がお寺
5年ほど前からの食事処やホテルの法事も増えた
自宅での法事の一部が会館に流れていきましたが、ここ数年でまた変化があったように感じます。
その変化はホテルやお食事処での法事が可能になったことです。
お坊さんはご門徒さんから、施主に変わって法事の手配をお願いされることがあります。
施主の希望を聞いて、法要日時、仏前のお飾り(お供物や引き出物など)の金額や規模、法事場所や食事場所を決定します。法事の会場をホテルや旅館にしたい希望もあります。
実は昔からホテルや旅館での法事の希望は一定数ありました。しかしホテルや旅館に相談をしても断られることが多かったです。
それはホテルや旅館では通常の宿泊客や、結婚式や同窓会などのパーティーが開催されていることがあります。
その場所に衣を着ている僧侶や、暗めの服を着た人たちがやってきて、お勤めの声が響くことを嫌ったのです。
でも今では違います。
ホテルや旅館・食事処も葬儀社会館にまねるように、簡易な祭壇を用意して、仏具もそろえて法事ができるようにしたところが増えました。
初期費用を投入してもホテルや旅館・食事処にはメリットがあります。
それは法事をすることで、
- そのホテルや旅館に宿泊してくれるということ。
- 法事の後の食事(お斎)を法事をした建物でしてくれること。
つまり法事をすることで、前日の宿泊や、法事の後の食事、さらには法事後の宿泊の延長も期待できるということです。
法事会場として受け入れることでそれらに関するあらゆることが、そのホテルや旅館にお願いされる可能性が十分にあります。
結婚式や同窓会などがあっても階層をずらすことで、問題もなくできることに気がついたようです。
近頃は親戚も遠方に散らばっているケースが多くなりました。
お参りのために施主が宿泊場所を手配することもあるでしょう。その時に喜ばれるのが、宿泊場所と法事の場所が一緒であるということです。
だんだんとホテルや旅館、食事処での法事が増えてきている印象です。
5年ほど前からの法事の場所のイメージ。
- 80%は自宅
- 10%は葬儀社会館
- 5%がホテルや食事処
- 5%がお寺
法事の場所としてお寺が見直されてきた
この数年、お寺での法事が増えてきた印象です。
今までもお寺での法事は一定の割合でありました。葬儀もお寺のお堂ですることもあります。
香川県のような地方では自宅で法事をされることが多いです。しかし駐車する場所がないという問題があります。
お寺は一般家庭と違い、広い駐車場を用意しています。
またこの駐車場のこと以外でも、この数年でお寺で法事をすることのメリットがだんだんと知られてくるようになり、お寺での法事が増えてきています。
この数年ほどの法事の場所のイメージ
- 80%は自宅
- 10%がお寺
- 10%は葬儀社などの会館
- 5%はホテルや食事処
お寺で法事をするメリット
利点を最初にまとめます。
駐車場があるのは当たり前ですね。自坊のお寺でも20台以上は停められるようになっています。
意外と思われるでしょうが、檀那寺での法事は意外とお金がかからないんですね。
お寺にある須弥壇(祭壇)は常に立派な状態で仏様を安置していますので、葬儀社が料金に含める祭壇料は発生しません。お花やお餅、果物といったお供えも自坊のお寺の場合、施主から頼まれた範囲でお供えを注文しておいて、当然領収書付きの立て替え払いにして支払っており、法事の後、施主から建て替えた金額分を受け取ります。
ですのでお寺でしようが自宅で法事をするように、発生する金額は同じなんですね。ただし施設使用費だけはお願いされることがあります。
サービスは控室がないことやおしぼりがないなど細かなサービスを提供することはできませんが、お寺ではお飾りに関するすべてのことを用意していますので、時間通りに来ていただければ、すぐに法事が開始できます。
法事の後のお斎もお寺の座敷で続けて食事をとることもできます。これは事前にお寺と相談しなければなりません。黙っては駄目ですよ。あくまでもお寺の場所を借りているのですから、必ず法事の用意は相談して決めなければなりません。
外で場所を変えて食事をしても大丈夫です。これも必ず相談してくださいね。
ここまでお寺の人がなんでもするように書いていますが、もちろん施主・家の人が用意することができます。
例えば法事の休憩時のお茶菓子の用意や皆様に持って帰っていただく食事の用意、当日の花・供物など、お寺と相談できていればお寺と施主がそれぞれに用意するものが細かく決められます。
会館ですと施主が自由に決められないことが多いです。料金・コースが用意されており、融通がききにくいですし、お飾りの持ち込みができないこともあります。
お寺で法事をすることのデメリット
お寺で法事をすることはメリットばかりですが、やはり欠点も存在します。
施主の代わりにお寺の僧侶が頼まれた法事の用意をします。
言い換えますと、施主はお寺にその都度、細かなことを伝えなくてはならないということです。
法事の準備をしますと、法事の日が近づかないと出欠の返事が届かないという経験があると思います。
引き出物や食事の用意をする場合は、正確な人数を把握しないといけません。またお寺側も椅子席や湯呑み茶碗の用意など、正確な人数を知らなければなりません。その他にも、施主が決めた金額でお茶菓子やお供え、引き出物、食事などの内容の確認などをお寺から確認の電話をすることもあります。
またお寺は大抵の場合は正面が石段になっていて、お年寄りや足の不自由な方は本堂へのお参りが難しい人もいます。スロープやエレベータがが設置されているお寺はまだまだ少ないでしょう。
また本堂では冷暖房機が備わっていないことが多いです。
自坊では本堂用の巨大なガス暖房機を複数用意したり、巨大な扇風機を用意していますが、広いためかそれほど効果がありません。酷暑の夏や寒風が厳しい冬では、ホテルや会館などと比べると快適ではありません。
お寺によっては本堂以外の建物で法事ができるお堂を用意していることもあるので、この点は大丈夫なこともあります。
自坊も本堂以外の建物を用意し、段差もほとんどなく、椅子や冷暖房機も完備し、控室や便所も用意しています。
お寺によって欠点はちがうでしょうが、これらの点がよくあるデメリットです。
お寺で上げ法事をしてはいけないのか
上げ法事(あげほうじ)とはお寺で勤める法事のことです。
しかしお寺で法事をすることを「丁寧ではない・粗雑だ」いう理由で嫌う人もいます。
上げ法事の誤解の中に、「お寺での上げ法事は当家の人のみ、もしくは親兄弟や、子、近親者のみで法事をする。食事も引き出物もしない。」という考えがあるそうです。
どうしてそんなルールがあるんですかね。ありませんよね。
今回自坊のお寺であった49日の法事では、50名弱の人がお参りに来ました。
故人が生前にお世話になったお寺の御本尊に手を合わすことが、なぜ、丁寧ではないのか理解に苦しみます。
食事もお寺のお座敷があるのでお膳をいただくことができますし、お寺にバスを呼んで場所を変えて食事をすることができます。
家での法事と何も変わることはありませんし、故人が粗末に扱われることもありません。むしろお寺での法事は丁寧なおつとめとされます。
お寺での法事は気兼ねなくしていただけたらいいと思いますし、繰り返しおまいりしていただければ幸いです。
お寺はどなたでも手を合わすことができる場所であり、ぜひ有縁の方々に少しでも多くの仏縁の場となれば思います。
「お寺でする上げ法事と、家での法事の違い」の記事で、上げ法事の詳しい説明をしました。また上げ法事の様子も写真で紹介しました。
ここ最近では、家での法事が増えている
最近は自宅での法事が増えつつあるように思います。
- お参りの減少
- 参列者の高齢化
- 会館での金銭面や雰囲気
これらの理由があると思います。
自宅での法事が難しい理由に駐車スペースや家の広さが問題になることが挙げられます。
しかし最近では、法事の参列者が減少傾向にあります。
親子の縁・親戚つきあいや近所つきあいの希薄化であったり、参列者の高齢化が原因であるのではないでしょうか。
親子であっても仕事があるからや学校・習い事があるからという理由で法事に参列しません。遠くに住んでるから来ないという人もいますよ。
実際、親戚がお参りに来ていても、家の子や孫が法事に出席していないことすらあります。
皮肉なことにお参りの人数が減ったことで、自宅での法事が増えたと思います。葬儀や法事があっても、親しい人にも知らせず、こっそりとする家庭が増えた気がします。
また法事の参列者の高齢化も要因の一つだと思います。
かつて法事は土曜日・日曜日が多かったですが、最近では平日にするところも増えました。参列者が定年退職していたりして、曜日にこだわる必要のない方が増えたためです。実際平日の方がお寺も時間がとりやすいですし、食事の場所や、交通状況は休日よりもスムーズなことが多いです。
そして金銭的な面もあります。
ホテルや葬儀会館はサービスがいい反面、価格が高かったり、施主の希望が通らないことが多いです。指定の仕出し業者、指定の花屋、指定の果物やなど会館が決めたものの中でしか選択することしかできません。
それに須弥壇の雰囲気もいまいちです。
自宅や檀那寺では立派な御本尊やお飾りがされているのですから、そちらの方で故人を偲ぶように変化してきているのではないでしょうか。
ホテルや会館でするのであれば、自宅やお寺ですることを希望する人が増えている印象です。
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法事場所の変化(まとめ)
元々は故人を偲ぶのは、各ご家庭のお仏壇でするのが自然なことでした。
しかし時代の変化のためか、少しずつ家の外で場所を借りて法事をすることも増えました。
かつて | 10年前 | 5年前 | ここ数年 | 最近 | |
自宅 | 95% | 90% | 80% | 80% | 85% |
お寺 | 5% | 5% | 5% | 10% | 10% |
葬儀社の会館 | 10% | 10% | 10% | 5% | |
ホテル・食事処 | 3% | 5% | 3% |
表の数値は私の感覚的なところです。
細かな数字に意味はありません。どのような傾向で法事の場所が変化してきているのかを示しています。
公民館などの地域の集会所は、場所によっては活発に使われていることもありますが、地域のつながりが乏しくなった現代では、自治会にお願いすることも嫌なので、1%未満の利用状況でしょうか。
- 20年以上前自宅が主流
- 10年ほど前葬儀社の会館利用が増える
- 5年ほど前ホテルや食事処の利用が増える
- ここ数年お寺での利用が増える
- 最近再び自宅での法事が戻りつつある会館やホテル・食事処での法事が減少
今回の内容は、香川県にある地方の一寺院の僧侶が感じたことです。
日本全国のそれぞれの地域では事情が異なり、法事の場所の傾向はちがっているかもしれません。
葬儀のあり方が変化したように、この20~30年ほどの短い期間の間に、法事の場所だけでなく法事のあり方に変化があることを感じ取っていただければ。そして今後、法事をする場所を選ぶときの参考になれば幸いです。