こんばんは。 僧侶のかっけいです。
墓地には様々な形のお墓があります。
どのお墓も同じように見えるかもしれませんが、よくよく観察しますと微妙に形が異なっています。
特にお墓の上部が尖っていたり、平らであったり、屋根型になったりと目につきやすいところにも違いがあります。
今回はお墓の形の違いについて紹介します。
お墓の形の違いはどのような理由があるのか。
一言で表すなら、「その時代の流行り」です。
上の尖ったお墓は神道形式。または戦没者の墓。
墓石の一番上の部分を竿石・棹石(さおいし)と言います。
一般の墓地や最近造成された墓地ではそれほど数が多くはないお墓の形です。
棹石の上部が尖ったお墓は神道形式のお墓とされています。
角錐型のこのお墓の形を兜巾(ときん)型とも表現します。
明治時代から第2次世界大戦が終わるまで日本は神の国とされていました。
そのため戦争に行き死んでしまった人は英霊として、国家のために死んだ忠義の人として敬われました。
この先が尖ったお墓は諸説ありますが、明治以降に英霊を弔い敬うためにデザインされたものです。
この先が尖ったデザインは砲弾の形であったり、神器の剣(天叢雲剣・草薙剣)を表しているとされています。
墓石の上部が平らなのはなぜか。
特に理由はないですね。
そもそも墓石とは埋葬した人がどこに埋められているのかを残された人がしるための目印です。
ですので昔のお墓のデザインは今の時代と同様にバリエーション豊かでした。
例えば五輪のお墓ですね。
五輪の墓は五輪塔とも呼ばれています。
仏教の世界観の地・水・火・風・空を表しているとされます。
五輪のお墓と似たような形に上のようなデザインもあります。
これは宝珠を表しているとされています。宝珠とは仏舎利といったお骨や仏など尊い建築物の上に飾られるものです。
別の説としては、香箱(こうばこ)型とされ、お香を焚く香炉等の蓋の曲線を模した形ともいわれています。
そして最近では平らなお墓が多いです。
これは単純に石を切り分ける時に今では真っすぐスパッと切りだせるからです。
またカクカクカクとしている方が整然としていて綺麗でしょ。
そして大体石の数が下から積み重ねられているのを数えると4~5程度になっていると思います。(もちろん一つだけのお墓もありますよ)
これも単なる時代の流行ですが、おおよそ五輪の墓を模してデザインされているようです。
また最近のお墓の上部は角が丸くなっていることが多いです。
これも理由は単純で、水が流れやすく汚れにくく、掃除がしやすくなるためです。
また最近では減りつつある形ではかまぼこ型のお墓もあります。
これは私的には江戸から昭和前半までのお墓に多いような印象です。
これはどういう意味があるかと言えば、お位牌の形を模しているとされます。
上の写真の様にお位牌の上部はややカーブを描いています。
本来は位牌がお墓にデザインを寄せそうなのですが、その逆パターンですね。
ちなみに昔のお位牌には夫婦で一つの位牌というのもしばしばあり、かまぼこ型のお墓にも夫婦の名を連ねたものもあります。
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さいごに。墓の形はその時代の流行。
お墓に行きますと、様々な形のお墓があります。
四角中のカクカクとして整然としたお墓が多いようにも見えますが、よくよく見ますと縁取りが丸かったり、台座が蓮の形をしていたり、そもそも石の種類が違うなどバリエーションが豊富です。
しかしこれらの違いに何か明確な理由があるかと言えばそんなことはありません。
一応、仏教式・神道式、またはキリスト教ではこういうようなデザインですよと昔からされているだけで、その形でなければならないとは限りません。
今回の話の導入部で説明した先が尖った墓石は戦没者の墓として目立たたせるためです。
それこそお墓の形は自由な形でいいのです。それはお仏壇のデザインにも共通します。
「オリジナル仏壇」なんて言葉があるでしょう。でもそもそも昔のお仏壇はすべてオリジナル仏壇で同じ構造の仏壇はありませんでした。
お仏壇は仏様の浄土世界を模したお寺の本堂内陣をよりコンパクトに表したものです。ですので仏壇のデザインとは仏壇店が独自に決めたデザインです。
お墓やお仏壇の形とは、その地域の文化や習慣、またはその時代の流れによって絶えず変化してきています。
ですので正解はありません。
余談ですが、浄土真宗のお墓は形に制約はありませんが、できれば正面に彫る文字は「南無阿弥陀仏」か「倶会一処」が相応しいとされます。理由は浄土真宗では遺骨そのものを拝む宗派ではないからです。(といっても遺族の心情としては「○○家の墓」と書きたくなりますが)
最近では既存の墓のデザインにこだわらない現代風のお墓も見られています。
サッカーボールやたばこやアニメキャラクターや肖像画などの故人の職業や嗜好品、趣味や姿などをモチーフにしたモダン墓があります。
しかしこれらはこの時代の流行であって、反対するお坊さんは少ないでしょう。
ただお墓の基本的な考え方は、自分が満足するための自己完結型のデザインではなく、後々に残された人たちがそのお墓に参るご縁を通して、亡き人・遺骨をの向こう側の仏さまにお参りする場です。
ですので最近ではお墓に埋骨しない別の方法として、散骨などが話題になっていますが、あちらはお坊さん的には否定的な思いです。
話の内容がずれてきたので今回はここまで。