雨の日のお参りは、お坊さんにとって少し大変です

香川県丸亀にいるお坊さんの「かっけい」です
雨の日、外を歩くのは誰にとっても大変なものですが、実はお坊さんにとっても同じです。
特に困るのが、法衣や足袋が濡れてしまうことです。
お坊さんが身に着ける衣や袈裟は、濡れると「雨シミ」と呼ばれる独特の跡が残ってしまうことがあります。とくに金襴(きんらん)を使った衣は水に弱く、できるだけ濡らさないよう注意が必要です。
傘を差していても、雨や風の具合によっては、どうしても足元が濡れてしまいます。
そこで使うのが、雨の日専用の履物―「雨履き(あまばき)」です。

雨の日専用の履物「雨履き」とは
雨履きは、一見すると普通の雪駄(せった)や草履とよく似ています。
しかし、雨の日のお参りのために、特別な工夫が施されています。
特徴①:つま先を守る透明カバー
雨履きの最も分かりやすい特徴は、つま先部分についている透明なカバーです。
これは、
- 雨粒
- 泥はね
- 水しぶき
から足袋を守るためのものです。
透明なので目立ちにくく、見た目を損なわずに機能性を高めています。
雨の日にお参りに来たお坊さんの足元を見ると、この透明カバーに気づくかもしれません。
特徴②:厚みのあるかかと
もう一つの特徴は、かかと部分に少し厚みがあることです。
これによって、
- 少しの水たまりなら水が染みにくい
- 地面からの水の影響を受けにくい
- 濡れた路面でも滑りにくい
といった効果があります。
わずかな高さですが、この違いが雨の日にはとても重要になります。
それでも防げない「かかとが濡れる問題」
雨履きはとても優れた履物ですが、完全ではありません。
実は、どうしても防ぎきれない問題があります。
それは、かかとが濡れてしまうことです。
つま先はカバーで守られていますが、かかとは露出しています。
特に急いで歩いていると、自分の足で跳ね上げた水が、かかとにかかってしまうのです。
これは雨履きの構造上、ある程度は避けられない問題でもあります。
濡れたかかとで正座する時の、あの感覚
足袋のかかとが濡れた状態で、お参り先のお宅に上がるのは、申し訳ない気持ちになります。
さらに困るのが正座のときです。
正座をすると、濡れたかかとがお尻のところにぴったりと当たります。
あの、
- ひんやりとした冷たさ
- じっとりとした湿り気
何とも言えない、不快な感覚があります。
お経を読みながらも、心のどこかで「冷たいなあ……」と思ってしまうこともあります。
もちろん表には出しませんが、雨の日ならではの悩みの一つです。
かかとを濡らさないための歩き方のコツ
かかとを濡らしにくくする歩き方のコツを教えてもらったことがあります。
それは、足をそっと地面に置き、そのまま真上に持ち上げるように歩くことです。
通常の歩き方は、 「かかとから着地しつま先で蹴り上げる」という動きになります。
この「蹴り上げる動き」が、水を後ろに跳ね上げ、かかとを濡らしてしまう原因になります。
歩幅を少し小さくし、静かに歩くだけでも、水はねはかなり減ります。
しかし、昔の緩い時間設定と違って、今のお参りは時間との勝負です。何時何分に伺いますと約束してます。
「次のお宅まであと5分・10分」
そんな時はどうしても急ぎ足になり、「また濡れてしまった」と後悔することもあります。
もう一つの悩み ―― 滑りやすさ
雨の日は、濡れるだけでなく滑りやすいという問題もあります。
特に私が注意しているのは、 次の3カ所です。
- 玄関先のタイル
- 濡れたアスファルト
- 車を乗り降りする場所
雨履きには滑り止めが付いていますが、それでも油断すると滑りそうになることがあります。
お参りの道具を持ちながら歩いている時などは、特に慎重になります。

足全体を覆うカバーがあればいいのに
時々思うことがあります。足首まで覆ってくれるカバーがあればいいのにと。
女性用の草履には、足全体を覆う透明カバーもあるそうですが、男性用ではあまり見かけません。
構造の違いなのか、需要の問題なのかは分かりませんが、もしあればとても助かると思います。
私は台風のような強い雨の日には濡れてしまうことを前提として、替えの足袋を持参して対応することもあります。
それもまた、お参りの準備の一つです。
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雨の日のお坊さんの足元には、工夫があります
もし雨の日にお坊さんがお参りに来たときは、少し足元を見てみてください。
透明なカバーのついた履物を履いているはずです。
そこには、
- 足袋を濡らさないための工夫
- 安全に歩くための工夫
- 丁寧にお参りしようとする心
が込められています。
雨の日のお坊さんにとって、衣を濡らさないこと、足袋を濡らさないこと、安全に歩くことは、とても大切なことです。雨履きは、そのためにとっても役立っている履物です。
それでも完全ではなく、小さな苦労もあります。
雨の日も、できるだけ失礼のないように。その思いで、一歩一歩お参りにうかがっています。
雨の日にお坊さんを見かけたとき、足元の小さな工夫にも目を向けていただければ幸いです。
※English version is available here.


