こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
突然ですが、「ほんこさん」って言葉をご存知ですか。
この言葉は浄土真宗で最も大切な法要である「報恩講(ほうおんこう)」という言葉を親しみを込めて呼ばれてきた名前なのです。
でもどうですかね。今では「ほんこさん」どころか、「報恩講」という言葉ですらなじみの薄いものになってしまったのではないでしょうか。
今回はなぜ、ほんこさんがなぜ浄土真宗で一番大切なお参りなのかを説明します。
「ほんこさん」とは親鸞聖人のご命日法要のこと。
親鸞聖人のご命日は旧暦の11月28日です。
親鸞聖人とは浄土真宗の宗祖であり、今からおよそ750年前の弘長2年・1262年に亡くなられました。
その親鸞聖人のご命日をご縁として、全国各地の真宗寺院では報恩講法要を勤め、各真宗門信徒のご家庭では家のお仏壇にて報恩講参りをするのです。
報恩講の始まりはいつ?
報恩講とは「恩に報じる人たちの集まり」という意味です。
親鸞聖人が生きている時には、親鸞聖人の師である法然上人のご命日(1月25日)に法然上人のご命日を縁としてお念仏の集まりがあったと言われています。
その後親鸞聖人が亡くなられたあとでは、浄土真宗では親鸞聖人のご命日(11月28日)に親鸞聖人の徳を偲んでお念仏の集まりをしていたようです。
報恩講という言葉が定着したのは、親鸞聖人からみてひ孫にあたる覚如上人(本願寺第3代)が親鸞聖人の33回忌のご命日法要に当たり、『報恩講式』を書かれたことに由来します。
「講式(こうしき)」とは、仏様や高僧の徳を讃えるために書かれた文章のことです。
これ以降、親鸞聖人のご命日法要は報恩講として今に至るまで大切にお勤めされてきているのです。
報恩講(ほんこさん)はなぜ最も大切なお勤めなのだろうか。
報恩講とは親しみを込めてほんこさんと呼ばれてきています。
報恩講とは単に浄土真宗の親鸞聖人のご命日をお寺でお勤めするだけではありません。
それぞれのご家庭のお仏壇にておまつりしている阿弥陀様の前でお念仏を申し上げるのです。
それはなぜでしょうか。
それは報恩講とは「恩に報じる講」だからです。
なかなか現代では恩という言葉が理解しにくいかもしれません。
恩というのは、「因」と「心」のパーツでできており、ものごとの原因を知る心と説明されます。自分に向けられた・届けられた恩を知ることで有難いなあ・もったいないなあと感謝の心が起きるのです。
ではどうやって恩に報じるのでしょうか。(報じるとは、お返しするという意味ですよ)
お釈迦様が説かれた仏法の中から、インド・中国・日本の高僧たち、そして親鸞聖人が伝えて下さった浄土門の教え・阿弥陀様の願いをいただき、朋に同じお念仏を申しよろこばさしていただく姿が、恩に報じる人たちの感謝の仕方になるのではないでしょうか。そしてその恩に報じていく人たちの集まりを通して、先人たちがよろこんでいただかれた南無阿弥陀仏のお念仏を後の人に伝えていけるのではないでしょうか。
決して親鸞聖人が偉大だったからという理由だけでご命日のお勤めをしているのではありません。
宗祖である親鸞聖人のご命日のご縁を通して、仏様にお参りするご縁をいただき、僧侶・門信徒一同が仏法を問い訪ねていく場に与れるのです。
報恩講はお寺だけでなく、各ご家庭でもお勤めします。
報恩講をお寺で勤めることを報恩講法要(御正忌法要とも)、家でお勤めすることを報恩講参りと呼びます。
もちろん家のご先祖たちのご命日の法事も大切ですが、まず第一にお念仏の教えを正しく伝えて下さった親鸞聖人のご遺徳に報じる報恩講が浄土真宗では一番大切なお勤めになるのです。
ですので、各ご家庭のお仏壇に檀那寺よりお坊さんがお参りに来て、親鸞聖人のお書きなられた『正信念仏偈(正信偈)」をご本尊阿弥陀様の前にてお勤めをするのです。
そして家でお勤めした後は、檀那寺の本堂にに安置されています阿弥陀仏像・親鸞聖人像の前にて報恩講法要が営まれるのです。
決して家で報恩講のお勤めが終わっていたとしても、必ずお参り下さい。
家での報恩講参りとは、親鸞聖人のご命日法要をお寺で迎える前に先にお勤めしているのに過ぎないので、きちんとお寺での報恩講のお参りもしてくださいね。
ちなみに報恩講とは親しみを込めて「ほんこさん」と呼ばれていますが、地域によってはご命日よりも早めにお寺さんがお仏壇でお参りをすることから、「お取り越し」や「お引き上げ」とも呼ばれています。
ちなみにお寺の報恩講法要では「お斎(おとき)」と呼ばれる料理が出されます。お寺に参った場合はお食事もぜひ召し上がってください。
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さいごに。真宗各派本山の御正忌法要(報恩講法要)の月日は違うので注意。
報恩講のお参りとは、各ご家庭のお仏壇、各末寺の阿弥陀仏像・親鸞聖人像、そして各ご本山の親鸞聖人像の前で行われます。
ご本山の場合は親鸞聖人のご命日に向けておよそ一週間の法要をします。
しかしその日程は年内と年明けとの2パターンに分かれています。
親鸞聖人のご命日を旧暦の11月28日ととっているのか、新暦の1月16日にとっているのかの違いなんですね。
参考に2017年11月と2018年に1月に迎える各派ご本山の御正忌法要を示します。
11月21日~28日 |
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11月22日~28日 |
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1月9日~16日 |
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各末寺はこれら本山の御正忌法要の前後に自坊にて報恩講法要をお勤めしています。ですので各ご家庭に報恩講参りに伺うのも大体10月~1月になりますね。
ちなみに自坊でも10月下旬ころから徐々にお参りをし、自坊の12月12日の報恩講法要までには大方のご門徒さん宅のお仏壇にてお取り越しとしてお勤めしています。家で報恩講のお参りをした後で、お寺の阿弥陀様や親鸞聖人像にお参りをしていただくためですね。
なかなか「恩」というものを言葉の意味として理解するだけでなく、この私に対して届けられた願いやめぐみとしていただいていくのは難しいかもしれません。
しかしそれに気が付いていき、感謝を申し上げていくのがこの親鸞聖人のご命日のお勤めです。
家のご先祖のお勤めも大切でしょう。でもこの私に気が付いてくれとよ呼び掛けて下さったお念仏の教え、そして先人たちの恩徳に感謝していくこの報恩講(ほんこさん)のお勤めが何よりも大切なのです。
余談ですが、浄土真宗では報恩講が一番大切なお勤めになります。ですのでお寺さんがお参りに来たときはお仏壇に赤色のろうそく(朱蝋燭)をお飾りしておきましょう。普段のお勤めとは少し違った雰囲気を出すための大事なお勤めとしての節目を表します。短いのでも大丈夫ですよ。