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第126回目のラジオ配信。「化」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
この番組では香川に住む浄土真宗のお坊さん、私かっけいが、短いおしゃべりをするラジオです。
北京冬季オリンピックが終わって、早3月1日ですね。月日が変化するのは早いもので、数日後には今度はパラリンピックが始まります。
世の中の変化も激しいもので、今はロシアがウクライナに軍事展開?侵攻をしているので、争いや差別の絶えない世界に変化していかないことを切に願うところです。
ところで話のネタを探すために、音声配信予定日の3月1日が何の日なのかを調べてみますと、「再石灰化の日」というのがありました。
へえ~。そんな日があるんだと初めて知った言葉ですが、どうやら株式会社ヤクルトが決めたようです。石灰化とは石・灰・変化の化の文字で、歯磨き粉の活用をとおして、歯の大切さや口の中の健康を訴える日・虫歯予防の日としているようです。
歯の再石灰化というのは、唾液がエナメル質の結晶を新しく形成し修復し、歯が元に戻り健康に保つという意味とのことでした。
話のネタ探しに3月1日の日を調べたら、再石灰化の日という言葉に出あったので、今回はここからの一文字「化」の文字について短く雑談しようと思います。
化の文字は、一番わかりやすい言葉だと変化の化ですね。他にも化学の化や、文明開化の化がありますね。辞書的な意味だと、前と違った状態になることが化の意味です。他にも化けるとかの読み方で、あざむこうと別の姿かたちに変わったりすることも化の意味にあります。
さてそんな風に、音読みの「か」や訓読みの「ばける」といった言葉が当たり前のように多く使われるのですが、実は仏教では、「け」と読みます。濁って「げ」と読むこともあります。
たぶん皆さんの多くは、圧倒的に「か」の読み方に慣れていると思いますが、お坊さんは「け」の読み方に慣れています。
例えば、日本最初の元号は大化(たいか)からはじまり、文化(ぶんか)・弘化(こうか)と三度とも「か」と読みますよね。
皆さんは漢音読みの「か」に慣れているのでしょうが、お経を読むお坊さんは呉音読みの「け」に慣れているので、普段から「け」と読んでしまいがちです。
お経の言葉や仏教語はだいたいが呉音読みですから漢音の「か」よりも呉音の「け」の方がなじみ深いのです。
そして仏教では、「け」はとってもいい意味で使われる言葉です。お化けといった、人を驚かせたりだまそうといった意味はありません。
それこそ私の寺円龍寺で言えば、私からみて6代前の住職と坊守は院号に、方角の西と化の「さいけいん」、開くと化の「かいけいん」の名前がついています。
個人的な印象ですが、現代ではあんまり化の文字が法名・戒名に使われていないように感じます。
いい言葉なのに、使わないのはどうしてなのかなあと思うところです。
仏教で使われる化は、人びとを教え導くという意味です。
仏教に関係する化の言葉はとても多いです。例えば浄土真宗でなじみの深い正信偈では、入生死薗示応化・諸有衆生皆普化・報化二土正弁立と3度出てきます。
さきほど言った私の寺のかつての住職坊守の「かいけ・さいけ」も無量寿経や観無量寿経疏にでてきます。
仏教に関する化の言葉は多く、例えば「化導(けどう)」。仏や菩薩の功徳によって、人びとをよい方向に導いていくこと。
「化現(けげん)や化身(けしん)」。仏や菩薩が人びとを救うために、それぞれの状態にあったすがたで現れること。
「開化(かいけ)」。人の心を開き導く仏の教えのはたらきのこと。
「教化(きょうけ)」。仏の教えを伝え、導いていくはたらきのこと。
ずらずらといくつか例をあげましたが、このように仏教で使われる「化」は教え導く、よい方向に向かわせるといった、よい意味で用いられることが多いです。
ちなみに仏教宗派によって違うでしょうが、私のところでは宗派の代表のご門主が亡くなったときは、敬ってご遷化と言います。
仏の国に生まれ往き、また人びとをご教化・教え導いていくということを表わす言葉です。
さて3月1日の再石灰化の日から、変化の化、化学の化の一文字をとって、仏教での読み方。呉音読みの「け」について短くお話しました。
今回のかっけいのラジオはここで終了します。来週もまた聞いてくださいな。
ポッドキャストでも配信していますので、iTunesなどのアプリで「レビュー・評価・登録」してくれたら嬉しいです。
それと最後にお礼と感謝です。気づかないうちに、iTunesでの評価数がじわりと増えていました。コメントしてくれた人も有難うございます。私の放送内容はあまり変化することはなく単調だと思いますが、ご縁あれば、聞いていただけたら幸いです。
再石灰化の日
3月1日は再石灰化の日です。株式会社ヤクルトが制定し、記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定登録された。
「倉敷平成病院だより」によると、次のように説明されています。
【さ(3)い(1)せきかいか】の語呂合わせにちなんで記念日とされたそうです。
再石灰化とは、お口の中で常に起きている現象です。歯を脱灰から守る唾液の自然治癒のメカニズムです。
「3月1日は再石灰化の日 倉敷平成病院だより」より
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化野(あだしの)
化は一般的には、「化ける(ばける)」や漢音での音読み「か」が一般的です。一方、仏教経典を読むお坊さんは、呉音での音読み「け」で読むのに慣れています。
しかし京都には「化野(あだしの)」という場所があります。
平安時代からの京都の葬送の地として3つの有名な場所があります。
- 鳥辺野(とりべの)
- 蓮台野(れんだいの)
- 化野(あだしの)
化を「あだし」とは発音しないのですが、なぜ化野で「あだしの」なのでしょうか。
浄土宗法然上人が化野に建てた念仏道場として「化野念仏寺」がありますが、このウェブサイトには次のように説明されています。
「あだし」とははかない、むなしいとの意で、また「化」の字は「生」が化して「死」となり、この世に再び生まれ化る事や、極楽浄土に往来する願いなどを意図している。
あだしの念仏寺より
当て字として「化」の文字が用いられているようですね。
それと次の関連記事は、私が京都の鳥辺野に行ったときに感じたことを書いています。鳥辺野は浄土真宗宗祖の親鸞の火葬場所です。
化の訓読みは「ば(ける)」や「ば(かす)」がある。常用漢字にない読み方として「か(える)」や「か(わる)」もあります。
音読みには漢音の「カ」と、呉音の「ケ」の2種類があります。
お経文は一般的に呉音で読みますが、浄土真宗では阿弥陀経を漢音で読むこともあります。そのことを書いた記事がこちらです。