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第263回目のラジオ配信。「あう」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。
私の属している宗派、本山納骨所の霊山本廟では求道という広報誌が毎月出ています。お参りに来られた人に配られています。
2025年一月号の求道を見ると、本山の霊山本廟に掲示している標語「たまたま遇う」という言葉が紹介されていました。
あうには、色んな漢字があります。
漢字によって意味が変わってきます。
広報誌求道には「あう(会う・合う・遇う・遭う・逢う・値う)」のそれぞれの漢字の意味を紹介していますが、紙面の都合上でしょうか、簡単な説明で終わっています。
今回は、六種類の「あう」という漢字の違いを話していきます。
まずは小学校低学年で習う二種類の漢字から話しますね。最もよく使われる「あう」の漢字です。
一つは会話とか、面会とかそういった熟語で使われる「あう」です。
これは簡単で、人と人とがあうときに、顔をあわせるときに使われる文字ですね。
人同士の出会いで使われるのが面会とか、会話とかの会うですね。お寺でする仏教法要も法会といったりしますよね。あれも人々が集まってする法要だから、人同士の出会いの会うが使われているわけです。
それでもう一つのあうが、組合とか、試合とか、集合とか、こちらの合うという字ですね。
こちらは人同士でない組み合わせのときに使われる言葉です。
また何かをぴったりと合わせるときにも使われます。
だから手と手を合わせる合掌も、声と声を合わせる合唱、タイミングを合わせる合図、数を合わせる合計などでは、この合うの漢字が使われます。
この2つの漢字は小学校低学年で習い、大人になってもよく使いますよね。
でも「あう」という漢字は他にもまだあります。
まずはたまたま出あうという意味の遇うからです。
熟語としては、千載一遇や、奇遇や処遇で使われる文字です。
今回広報誌求道に書かれている説明では、「好ましい出来事や良いものが思いがけず身に及ぶこと」とあり、ポジティブな意味、良い意味で使われる漢字で紹介されています。
そういう意味があるんですが、イメージとしては、この漢字の部首を人偏にすると、たまたまという言葉になるように、偶然にも、たまたまのめぐり合わせ、出会いというのが、このあう遇(ぐう)という漢字です。
浄土真宗では出あうことが難しい仏さまの教えにたまたま出あうことができたということで、この遇という遇うの文字を使うことが多いです。
それと反対に使われがちなのが、遭難・遭遇の遭の漢字です。この遭難の遭もあうと読みます。
好ましくない出来事、悪いものが、思いがけず身に及ぶときに使われる漢字です。
痛い目に遭うとか、闇討ちに遭うとか、そういった本当に悪いイメージをもつ漢字ですね。
それで次に紹介するのはあまり見ない、使うことのない漢字です。
口だけで説明するのは難しいですが、逢引といった熟語で使われる漢字です。
左に糸がつけば、縫い合わせるという意味になりますし、上に草がつけば、蓬莱の薬の蓬の字になります。
またしんにょうの部首のところが、山に変われば峰、火に変われば烽という字に変化します。
このちょっと難しい逢うという字は、お互いにであう・迎えるという意味になります。
求道には、親しい人、好ましい人とめぐりあうことといった説明がされています。
ポジティブな良い意味ですよね。
それじゃあ、二つ前に紹介した遇の漢字と何が違うのでしょうか。
あちらの遇のあうは、たまたま出あうというイメージです。
一方で、こちらの逢の字のあうは自ずと出あうイメージです。
イメージとしては、逢坂の関、関所や峠道のように、お互いが同じ道を通り、あるいは待つことで、逢う感じです。
遇の方の遇うは、お互いがお互いに動き、本当に思いがけずに出会うことができた感じです。
手の動きで表すと、右手の人差し指と左手の人差し指がまっすぐ進んで行ってくっつくのが逢の字のあうで、それぞれの人差し指があっちこっちごちゃごちゃ動きながらくっつくのが遇の字のあうといったイメージです。
ここまで5つのあうを紹介しました。
次で最後です。
あんまりあうと読む機会がない漢字です。
値段のね、価値のちの漢字です。
人偏に直すという字ですね。あたいとも読みます。
値段とか価値とか平均値とか、あたいといったように、数字に関係する文字のように思えるかもしれませんが、この漢字も「あう」と読みます。
これは正面から向かい合ってあうときに使われるようです。
でもそれだけじゃないです。
お坊さんの私はかつて法話でこのような説明を聞いたことがあります。
この値段のね、あたいの値うという漢字は、お互いに異なる性質、かたち、特徴のものが互いにひとつになるイメージだそうです。
例えばですが、握った右手と広げた左手があったとしますね。それがぎゅっと組み合わされた状態がこの値という漢字です。
違ったもの同士がぴったりと合わさる状態、これが値のあうです。
そのイメージは値段や価値という熟語にも当てはまりますよね。
例えば、白菜が一株あったとしますね。これが500円で売られていたとします。
白菜一株をお金という別のものに当てはめようとしたら、500円がぴったり合うよねというのが500円が値段になっているわけです。
でも時と場合場所によっては、100円のとき、300円のとき、1000円のときだってあるでしょう。
違う形、状態のもの同士が、合致する状態にさせたのが値段というわけです。
浄土真宗では仏さまの尊い教えに私が出あうことがかなったとき、仏さまの教えに聞くことができたとき、この値うという字が使われることがあります。
私に仏さまの教え、願いがぴったり合わさった時のあうですね。
さてちょっと長いお話となってしまいました。
今回は、6種類のあうと読む漢字についてお話しました。こんなときに使われる文字なんだなあとイメージをつかんでいただければ幸いです。