阿弥陀仏の仏像はなぜ前のめり.#292

第292回目のラジオ配信。「阿弥陀様の仏像の姿」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

内容まとめ
  • 浄土真宗のご本尊さまは阿弥陀仏
  • 立ち姿の阿弥陀様がまつられている
  • 仏像は仏さまの本当のお姿ではない
  • 仏像は意味のある形をしている
  • 阿弥陀様の仏像は10度くらい前のめりの前傾姿勢
  • 足は揃えず、少し前に出ている
  • 阿弥陀仏は私たち一人ひとりを放っておけない
  • 仏さまの方から救おうと向かってくれている
  • 阿弥陀様はどこまでも追いかけて見捨てようとしない

かっけいの円龍寺ラジオ

これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。

今回は阿弥陀仏ってどんな仏様なのかお話していきます。

浄土真宗の仏様、もっとも大切にしている仏様ってご存知ですか?

そう阿弥陀仏、阿弥陀如来ですよね。

他の仏さまや菩薩さまは、浄土真宗ではおまつりすることはあまりありません。

それはなぜかというと、他の仏さまと違って、阿弥陀様だけが本願他力の仏様だからです。

心配しないでください、今回は本願他力とはなんなのかといった難しい話しをするつもりはないです。もっと簡単な話をします。

さて皆様はお寺やお仏壇で必ず仏像を目にしますよね。

さっきも言ったように浄土真宗の場合は、ほぼ間違いなく阿弥陀様が安置されています。

皆様何気なく阿弥陀様の仏像を目にしていますが、他の仏様とは明らかに雰囲気が違うんですよね。気がついていますか?

そもそもの話しになりますが、仏像は仏さまの本当の姿ではありません。

仏さまとは教えそのもの、仏法のことであり、仏像というのは、私たちが仏さまをまつり拝むために、人間のような姿にしているものです。

なので、仏像とは本当は仏様本来のお姿ではないのですが、私たちは仏を拝むときには仏像を安置することで、仏の教えを感じ取っているわけです。

それでここからが、今回私がお話したいことの内容になっていくのですが、仏像は仏さまの本当のお姿ではないにしても、意味のある形をしているんですね。

仏さまのはたらきがなんなのかを私たちに示すために作られています。

例えば、仏さまには三十二種類の身体的な特徴があるとされます。

手足が長いとか、指の間には水かきがあるとか、体がなめらかであるとか、頭の髪の部分が盛り上がっているとか、そういう体の特徴が32種類もあって、それを元に仏像のデザインがされているんですね。

だから阿弥陀様に限らず、お釈迦如来や薬師如来や大日如来など、どの仏さまもだいたい似たような仏像の姿になります。

それでも浄土真宗の阿弥陀さまだけは他の仏さまとは見た目が明らかに違うんですね。

じゃあ、何が違うんでしょうか?

それは浄土真宗の阿弥陀様は、必ず立ち姿なんですね。

浄土真宗の阿弥陀様で座っている仏像はおそらくないんじゃないのかなあと思います。

なぜ阿弥陀様の仏像は立ち姿なんでしょうかね。

それは阿弥陀という仏様は、悩みや苦しみの多いこの人間の世界に仏の方から来てくださっていて、今まさに、いつもどこでもあなたを救いとりますよという願いが込められているからです。

阿弥陀という仏さまは、私達一人ひとりを放っておくことができない仏さまなんですね。

立ち姿の仏像というのは、たいてい仏さまをサポートする存在の菩薩さまや明王といったのが立った姿なんですが、阿弥陀仏は阿弥陀様自身が立ちあがって、私たちを救おうと来られているんですね。

だから実は浄土真宗のお寺にまつっている大きな阿弥陀様をみると、足がピタッと直立不動のようにそろってなくて、少し前に足が出ているんですね。

私たち人間の方から、仏さまの元に行こう、仏さまを敬おうと一方的に拝んでいるわけではなくて、阿弥陀様の方からも、私たちの方に向かってきているわけなんです。

浄土真宗の御本尊、阿弥陀様は必ず立ち姿です。これが特徴なんですね。

ただし、薬師様やお釈迦様でも、立ち姿で表されていることもあります。

でも浄土真宗の阿弥陀様にはさらに大きな特徴があるんですね。

それは浄土真宗の仏さまは、前のめりになっているんですね。適切な表現が分からないんですが、浄土真宗の阿弥陀様の仏像は、前に倒れるように、前傾姿勢の形になっているんですね。

家のお仏壇では、仏さまが小さくて表現しきれていないかもしれませんが、お寺の阿弥陀様をみると、大抵前のめりの姿勢になっています。

この音声をアップロードする円龍寺かっけいブログに自坊円龍寺の阿弥陀様の様子を載せておきますが、だいたい10度くらい前に倒れています。

他のお寺さんも角度はまちまちですが、だいたい10度くらい倒れています。

これは浄土真宗の仏様、阿弥陀様は、仏さまから逃げる私を誰一人としてこぼさずに救うと誓われているからです。

私たちは常には、仏さまのことなんか知らない、ほっといてくれ、私のことはどうだっていい、なんてそぶりをしますが、阿弥陀という仏さまはそんな人こそ、救わずにはおられないのです。

それこそ、仏から逃げよう逃げようと背を背ける人に対して、覆いかぶさるようにしてまで救おうとするのが阿弥陀様のはたらきです。

こんな私では誰も救ってくれないと思っている人でも、阿弥陀という仏さまはどこまでも追いかけ、見捨てようとはしないんですね。

自分から阿弥陀様に対して拝んでいるわけじゃないんです。

阿弥陀様からの方からも、この私を必ず救うと願われているんです。

それが浄土真宗の阿弥陀様が前のめりの立ち姿になっているわけなんですね。

今日のお話のおさらいをしますね。

浄土真宗の阿弥陀様は立ち姿です。

そして10度くらい前のめりの姿勢をしています。

これは阿弥陀様が極楽浄土に誰一人として逃さず救いとるぞと、仏さまの方からいつでもどこでも働きかけている姿を表しているからです。

これで今回のお話はとりあえず終わりにしますが、実はまだ阿弥陀様の仏像にはいろんな特徴が施されているものがあります。

例えば、阿弥陀様の背中から放たれる光は48の線で表現されることがあります。

これは私たちを必ず救う48の願いをたてられた阿弥陀様の智慧慈悲の光が、私たちの方に届いていることを表わしているんですね。

一般的ではないですが、有名なものにはこんな阿弥陀様もあります。

頭の髪の毛がすごい盛り上がっている阿弥陀様ですね。

これは阿弥陀如来が、まだ菩薩だったころ、五劫という想像もできない長い時間をかけて修行して、あらゆる人びとを救う願い、南無阿弥陀仏の六字のお名号に込められて阿弥陀という仏になったことを表しています。

あまり見かけないですが、そんな頭がすごい大きな阿弥陀様の像もあるんですね。

他には、阿弥陀さまがまっすぐ正面を見ていない、後ろを見るかのような阿弥陀様もいます。

一番有名なのは、京都にある永観堂(えいかんどう)の阿弥陀様ですね。見返りの阿弥陀様と呼ばれる仏さまです。

有名なエピソードですが、永観(ようかん)というお坊さんが、阿弥陀様の周りを歩いてお念仏をしていたところ、あるとき阿弥陀様が永観さんと一緒に歩いてくださったんですね。

永観さんが歩くのを止めると、阿弥陀様が振り返ってくださったそうです。

阿弥陀様はあらゆる人達を救ってくださる仏さまなんですが、それはただ一言の「みんな」ではなくて、「あなた一人」を放っておきませんよという働きなんですね。

あなたが阿弥陀仏の極楽浄土に生まれ往くことができるように、いつも見守って念じてくださっている姿を表してるのが、正面を向かれていない阿弥陀様の仏像です。

見返りの阿弥陀様の仏像もそんなに多くないですが、阿弥陀様がどんな仏さまか巧みに表していると私は思います。

かっけい
かっけい

下に分度器を重ねた円龍寺の阿弥陀様の写真をのせました

だいたい10度くらい傾いていますね

Katamuki amidabutsu 10degrees
円龍寺の阿弥陀仏の傾き具合

私が今までに見た中では30度くらい傾いている阿弥陀様の像もありました。

これくらい傾くと、本当にもうほんとんど倒れているのと同じような印象を受けます。倒れないようにバランスをとるのも難しいでしょうが、限界まで前のめりにこだわった仏師やそのお寺さんの気持ちが伝わってきました。

倒れている表現の違い

浄土真宗の阿弥陀様の仏像は前に倒れています。

私はその適切な表現がわかっていません。

  • 前のめり
  • 前かがみ
  • 前傾姿勢

これらの表現がありますが、微妙にニュアンスが違うようです。

  • 前のめり:体が全体的に前に倒れようとする勢いのある姿勢
  • 前かがみ:背中を丸めて腰を曲げ、顔が前に出るような姿勢
  • 前傾姿勢:股関節から上半身を前に傾けた姿勢。前屈姿勢と同じ

辞書的な違いはこうあるようです。

浄土真宗の阿弥陀立像は上半身だけを傾けている、いわゆる「お辞儀」の形をしていません。

足元から体全体を前に傾けています。

そう考えると、浄土真宗の阿弥陀様は「前のめりの仏様」と表現できるでしょうか。

補足

「見返り(みかえり)阿弥陀」の仏像は永観堂にあるのが有名です。

永観堂は通称で、正しいお寺の名前は禅林寺です。そして禅林寺は浄土宗禅林寺派の総本山です。浄土真宗のお寺ではありません。

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