ご門徒さんの家系図はお寺にありませんよ.#306

第306回目のラジオ配信。「家系図」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)

内容まとめ
  • 法事では本家新家の話で盛り上がることがある
  • 本家でも家の家系図が出てこないことがある
  • それぞれのご門徒さんの家系図は、お寺にない
  • お寺にあるのは過去帳
  • お寺の過去帳は、ご門徒さんの先祖の没年月日などが記録されている
  • 家ごとに記録しているわけではない
  • お寺の過去帳の閲覧は難しい
  • お寺の過去帳から家系図をつくるのは大変

かっけいの円龍寺ラジオ

これは香川県丸亀市にいる浄土真宗のお坊さん、私かっけいの音声配信です。

今回は家系図・過去帳についてのお話しをしていきます。

先日、法事の席で、お参りの方々の昔話をいろいろ聞かさせていただきました。

その中で、自分の家は新家や、あの家の人が本家やで。

本家の家は元々あの場所にあって、自分から見てあの時に、今の場所に移ったんや。本家の先祖は誰それらしいよといったように、自分たちのルーツについて盛り上がりました。

補足をしますと、私の地域では、自分たちの先祖の大本の家のことを本家といい、そこから別れた家のことを新家といいます。

他所の地域では、本家・新家と言わず、宗家・分家ということもあるらしいですね。

話しを戻すと、法事の席で、新家本家の話が大いに盛り上がったんですね。

今の人は、あんまり自分たちの家・家族がどこからの別れなのか、どこの家がどこの土地が自分たちの大元に関係するのかなんて、あまり気にしないかもしれませんが、ご年配の方は、そういう先祖の話になると昔を懐かしむようにこういった物を見たことあるよ。あの人とこんな話しをしたことがあるよ。といったように、今日よりも、家のつながり、地域のつながりが強かった頃の思い出を多くしてくださります。

お坊さんの私はその昔の話を聞いて、いろいろ考えさせられることも多々あります。

さてそれで、そんな本家や新家の話しの中で、家系図の話しが出てきたんですね。

本家に家系図があるのを見たことがあるという人がいたんですが、肝心の本家の人がその家系図の存在を知らなくて、さあ困ったなあ、見たいなあとご年配の方々が言うんですね。

でも今の本家の人が知らないもんですから、この法事の席で出てくることはないです。

すると、お参りの人から、お坊さんにこんな風に尋ねられました。

お寺には私のところの家系図がありますよね。と。

う~ん。お寺にはご門徒さんの家系図はないんですね。

おそらくちょっとした勘違いをされているんだと思います。

お寺には過去帳というものはあります。

お寺の過去帳には、このお寺のご門徒さんの先祖の皆様の没年月日や、法名・俗名、親子関係などの記録が記されています。

このお寺の持っている記録のことを、家系図のことだと勘違いされているのだと思います。

詳しく説明すると、お寺の過去帳は、家ごとに記録されているわけではありません。

ご門徒の人たち全員を、お亡くなりになった順にその都度書き記しています。

だからどこそこの家単位で、まとめるようにして過去帳に記しているわけではないんですね。

最近はブームが過ぎたように思いますが、ちょっと前まで、家系図を作ってみよう・調べてみようという流行りがあったと思います。

私のお寺でも、県外から急に見知らぬ人がやってきて、先祖のルーツ・お墓を探している、お寺の過去帳を見せて欲しいなんて相談がたまにありました。

過去帳を見せて欲しいと簡単げに言いますが、お寺の過去帳は気軽にお見せすることはできません。

お寺の過去帳は個人情報の塊なので、どうぞご自由に見てくださいとはなりません。

また先ほど言いましたように、家ごとに記されているわけではないので、何々家の先祖だけをピックアップして閲覧することはできません。

どうしても、無関係の色んな人たちの情報が目に入ってきてしまいます。また肝心の自分の家の先祖を見過ごす可能性もあります。

お寺の過去帳はそう気軽にお見せできるものではありません。

そういうわけで、お寺にはご門徒の家系図というものはありませんし、先祖の人たちの記録を見せて欲しいと尋ねられても、他の人たちの記録も目に入ってしまうので、気軽に見せることもできません。

滅多にありませんが、見ることができないならお寺の人に、お寺の過去帳から先祖のことを書き写してほしい、家系図のようなものを作ってほしいと依頼されることがあります。

できないことはないですが、かなり大変な作業で、お時間を相当にいただきます。半年以上はいただきます。

なぜ大変かというと、確認することが多いからです。

お寺の過去帳だけでなく、その家のお仏壇にあるお位牌・過去帳をお預かりして、照らし合わせながら作成することになります。

先ほども言いましたように、お寺の過去帳はご門徒さんたちの亡くなった順に記されますので、一つの家だけを探していくのは大変です。

また先祖によっては、親子で同じ名前であったり、死別であったり、結婚を繰り返していたり、子が親より先に亡くなっていたり、と今よりも親子、親戚関係が複雑だったりします。

その家の過去帳とお寺の過去帳で書いている内容が違うこともあります。

そういう時は、お墓に行って、何と刻まれているか確認したりもします。

お寺にはご門徒の記録があるんだから、先祖の家系図をささっと作ってくれるだろうと想像するかもしれませんが、実際には、かなり大変です。

過去帳を調べても結局よく分からない、書けないということもあります。

今回は家系図とお寺の過去帳についてお話しました。

お寺にはご門徒さん全体の過去帳はありますが、家ごとにまとめているわけではないので、お寺にご門徒さんの家それぞれの家系図があるわけではありません。

かっけい
かっけい

以前、「お寺の過去帳を調べてもらうこと」をテーマにお話したことがあります

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