Podcast: Play in new window | Download
第17回目のラジオ配信。「仏さまにお供えする時、果物の上下をどっちにする」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
仏さまへのお飾りについて、最初に、注意事項を言っておきます。
仏さまへのお供えの仕方、お飾りと言うのは、宗派によって異なります。さらにややこしいことに、同じ宗派であったとしても、地域ごとの慣習もまじりあっていて作法が異なることだってあります。
ですので今回お話する、仏さまにお供えする果物の置き方についても、絶対に正しいという答えではありません。しかし仏さまにお供えする時に、何を考えるのかと参考になると思いますので、ぜひ聞いてみてください。
で、今回のお飾りの仕方解説は、香川県に住む真宗興正派のお坊さん、浄土真宗僧侶がしています。さっさと本題に入りたいのですが、これは言っておいた方が、聞いている人にとって親切だと思いました。
さて浄土真宗では、10月から12月にかけて、報恩講と呼ぶお参りが各地がおこなわれています。
報恩講は大切なお勤めですので、この時期には、ご門徒さんのお仏壇はいつも以上に、丁寧に豪華にお飾りがされています。
で仏さまにするお飾りの基本ですが、山海里(さんかいり)と呼ぶ、山のもの・海のもの・里のものを用意するのが基本となっています。さらには四季の花・四季の果物をお供えしていきます。
この11月ですと四季の果物として、立派な柿がどっさりとお供えされるんですね。
ここで5秒ほど、考える時間・思い出す時間をあけます。
仏壇に果物をお供えする時、皆さんは柿をどのような向きでお飾りしますか。リンゴやミカンなども思い出してください。
さてどうですか。
私の経験上、9割以上の家で、果物の柿はヘタ(つまり葉っぱがついている方)を下にしているのではないでしょうか。
「そんなの当たり前のことじゃない。」と思う人もいるでしょうが、じゃあリンゴやミカンはどうでしょうか。他の果物はどうでしょうか。大抵の場合、ヘタ・葉っぱの方を上向きにしているのではないでしょうか。
どうして柿だけはヘタを下にしてお供えするの?
ちなみにインターネット上にあふれている情報では、ヘタを下にするのが正しいと書かれていることがほとんどです。
でもそれは間違いです。正しくは、仏壇では柿のヘタを上にしてお飾りします。
なぜインターネット上では、柿のヘタを下にするという答えが多いのでしょうか。それには次のような理由があるでしょう。
- 少しでも見栄えが良く見えるようにと、装飾重視のため。
- ヘタをした方が、腐りにくく日持ちしやすく、保存重視のため。
- ギフト会社や葬祭業者の法事用のカタログを見たら、ヘタを下にしていたから。
こんな理由が出てくるでしょう。
実際、果物屋の商品では、柿はヘタを下に向けて並べていることが多いと思います。
でもそれは仏さまにお飾りするためではなく、色づいた皮をお客さんによく見せたり、店頭に長く置くためにしているんですよ。
もう一度言いますが、仏壇では、仏さまにお供えする時には、柿のヘタを上にしてお飾りします。茶色や緑色のヘタが見えていて、パッとしないなあと思っても、これが正しい向きです。
ではどうしてヘタを上に向けるのでしょうか。
理由は単純です。
仏さまにお供えする果物は、枝になっている状態・自然に実っていた形のまま、お飾りするのが基本となっているからです。
もう一度言います。
仏壇にお飾りする果物は、自然になっていた果物の状態でお供えします。
これは柿に限らず、すべての果物に共通した考えです。
リンゴやミカンは枝からぶら下がった状態で実るでしょう。だからヘタを上にして仏さまにお供えします。それと同じように、柿もまた枝からぶら下がって実りますよね。だからヘタを上にするのです。
梨やザクロやイチジクやパイナップルやメロンや桃やオレンジなど、あらゆる果物でも共通のお飾りの考え方です。
もちろんブドウやバナナなど、立ててお供えできない果物もあります。その時は、横にしてお飾りして下さい。
お供えは美しく見えるように飾るという考えもあります。ただ、果物の上下の向きにおいては、自然な状態で、木になっていた状態をイメージできるようにお飾りするようになっています。
「ヘタを下にした方が保存が効く」と言いますが、仏前へのお飾りはほんのちょっとの間のことなので、それはおおめに見てくださいな。
さて、「実のなる木のように飾るのが正式」とお坊さんの私が言っても、インターネットにあふれている情報にはそんなことはほとんど書いていません。
ほとんどすべての葬儀社や仏壇屋のウェブサイトでは、ヘタを下にすると書きます。
いや、ヘタを上にするとは書けないというのが正しいだろうか。
なぜなら彼らが、パクると言ったら失礼かもしれないが、コピーする各仏教宗派が出すお飾りの本。作法の本には、果物の上下の向きなんて書かれていないからだ。
こういうお飾りは、作法として書き残すほどのことのではない。親から子へと、親がしてきた仏さまへのお給仕を子供が見て、受け継いでいたら自然とできていることなのです。
だからお寺の子供や、あついご門信徒・檀信徒の家では、正しいお飾りが自ずとできています。
今回の話は、ラジオの言葉だけではイメージしにくいと思いますので、この音声をのせているブログ記事の方に、今回説明した果物の飾り写真を掲載するとおもいます。ちなみにその写真をみた人は、こんなツッコミをするかもしれません。
「お供えする果物の数は奇数じゃないと駄目じゃないの?」「なんで偶数なの?」と。
しつこいぐらい言いますが、インターネットによる情報収集が盛んになった現代では、『偶数は割り切れることから、「故人との縁が切れる」とされます。そのため仏前のお供え物は奇数にすることがほとんどです。マナーですので注意しましょう』と、特定の名前は挙げませんが、多くの葬祭サービスや僧侶派遣サービスのウェブサイトで解説されています。そしてそれを鵜呑みにします。
しかし、お寺や僧侶が運営しているウェブサイトやブログで、奇数がダメな飾りであるなんて書かれることはありません。奇数でも、偶数でも、どっちでもいいからです。
例えばですが、大量の小餅をお供えするとします。あなたは、いちいち1000個あるのか、999個あるのか数えますか?
左右全体のバランスをみて、調和のとれたお飾りをすれば、奇数でも偶数でも何の問題もありません。
ブログの写真は果物4つの飾りですが、今回はこれがバランスが良かったから、たまたまこの形になっただけです。
仏様に関することをインターネットで調べるのもいいですが、実際に、自分の住んでいる地域のお坊さん、檀那寺・菩提寺に尋ねてみるのが一番です。
さて今日の果物の話をまとめます。
正しい果物の置き方は、自然な状態で木に実っていた向きで仏さまにお飾りします。
木にぶら下がって実っていた柿やリンゴやミカンなどは、ヘタを上に向けます。
ラジオの補足
「円龍寺かっけいラジオ」では、番組へのメッセージを募集しています。ご感想や取りあげてほしいテーマなどもお寄せ下さい。