僧侶のかっけいです。
お坊さんと聞くとまず何をイメージしますか。
おそらく、黒い衣を着て、首から何かひも状の物を垂らして、念珠を持っている様子をイメージするのではないでしょうか。
人は見た目が9割とも言われ、服装が人に与える印象は非常に強いですね。
とりあえず髪の毛を短く整えて、黒い衣を着ていればお坊さんのように自然に判断してしまうことでしょう。
さて今回のお話は『お坊さんはなぜ衣や袈裟を身に付けるのか』・『衣や袈裟によって僧侶らしくなるのか』と、「衣とお坊さん」について書いていきます。
なおここでの僧侶とは、かしこまったお坊さんのニュアンスで使っています。
人は制服どおりの人間になる
ナポレオンの『人はその制服どおりの人間になる』という名言があります。
簡単に言えば「服装がその人に与える影響は大きいよ」ということです。
- お坊さんって真面目な人が多いと思いますか。
- お坊さんってお念仏がいつも口から出ていますか。
いやいやお坊さんも結構だらけていて、面倒な仕事はしたくないですし、勉強だって避けています。何でもない時に、本堂やお仏壇にお参りするということもそんなにありません。
でもどうしょうか、衣をきて念珠を持つと急にお坊さんらしい振る舞いになるんですね。
それは皆さんも経験があるでしょう。
子供なら学生服を着れば「学校に行かなきゃ、宿題をしなきゃ」と思うでしょうし、社会人ならスーツを着れば「今日も仕事を頑張るか」と気合が入るでしょう。
看護師や医者やホテルマンや警察官など専用の服がある人は、着替えることによって立ち振る舞いや言葉づかいなどにスイッチが入ることでしょう。
意識を変えようとするならば、服装を変えることが一番手っ取り早いのです。
衣と袈裟はお坊さんのユニフォーム
私は制服が好きです。(嫌いな人もいるでしょうが)
それは制服を着ることで、身が引き締まるからです。
- 襟を正す
- 威儀を正す
お坊さんは衣や袈裟を着ると僧侶らしくなるのでしょうか。
馬子にも衣装とでも言いましょうか。私のように大したことの人でも、衣や袈裟と外見を整えますとそれなりの人物に見えるかもしれません。
衣や袈裟を着ることで他人からお坊さんらしい人物だと思われるかもしれません。また同時に、着ている人自身も、内心を改め慎んだ態度をとるようになることでしょう。
お坊さんは衣や袈裟を着ることによって、よりお坊さんらしく僧侶になるのです。
衣や袈裟はお坊さんにとってのユニフォームとも言えるでしょう。
- 集団に対する帰属意識
- 連帯感・一体感を高める
- 社会的印象や自己意識
現代のお坊さんの衣の色は黒色が基本です。(その由来についてはまた別の機会に紹介します)
黒い衣を着ることがお坊さんのシンボルであり、宗派は違えど同じ仏教仲間だという仲間意識をを与えてくれるのでしょう。
そして仏教者としての自覚を持つと同時に、周りの人にもお坊さんらしい態度を自然に振舞えるのでしょう。
衣や袈裟といったお坊さんのユニフォームを着ることによって、人々からもお坊さんとコミュニケーションをはかりやすくなるでしょう。
極端なことを言えば、たとえ立派なお坊さんであったとしても、衣や袈裟(ユニフォーム)がなければ、社会的な信頼は得られないでしょう。
衣や袈裟はお坊さん自身にとっても、お坊さんと接する人にとっても大切なユニフォームなのです。お坊さんは衣や袈裟があるから僧侶になれるのです。
服の着脱はオンオフをはっきりさせる
オンオフをはっきりすることができるのが制服・ユニフォームです。
上でも紹介しましたが、服が人に与える影響は大きいです。
朝起きて寝ぼけた寝まき姿の私も、黒い衣と袈裟を着ると急にシャキッとします。オフからオンに切り替わるのです。
一方でお参りから帰り、カジュアルな服装に着替えると、テレビを見たりインターネットをしたりと気持ちがだらけるんですね。オフの状態です。
スーツや学生服と同じで、着替えるという行為がオンオフの切り替えに重要な役割を持っているんですね。
もちろんお坊さんですから常にオンの状態が理想なのでしょうが、私たちは人間として日常生活を送っているのでどこかで俗な生き方をしなければなりません。
僧侶としてのオンの時間と私的なオフを適度に持つことによって、人生をより充実して生きられると私は思います。糸をいつも緊張させたままにするのではなく、適度に緩めるのもまた大切なのと同じです。
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さいごに。お坊さんの私の姿を紹介
仏教宗派によって呼び名は変わるでしょうが、私の属する真宗興正派では、白衣(はくえ)と道服(どうぶく)がお坊さんの基本スタイルです。
この白衣と道服を、下着と半襦袢(はんじゅばん)の上に着ます。
また宗派の規定には無いが、私は冬の間に道中袴(どうちゅうばかま)を白衣の上に着ることがあります。
法要時の色鮮やかな衣(法衣)の時には切袴(きりばかま)を着るのですが、こちらの道中袴は名称の通り、屋外で日常的に身に付けることができる俗袴(ぞくはかま)の一種です。
スカートと同じ構造をしているので、非常に動きやすい袴です。また座りやすい。
これを着るとやっぱりお坊さんらしく恰好が付きますし、何より温かいんですね。冷え込む冬は道中袴を着たくなります。
「黒い衣・白衣・袈裟・足袋・念珠・袴」と着飾ると私もお坊さんらしく見えるでしょう。
お坊さんとしてのやる気スイッチですね。