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お寺に納骨する時、納骨堂と本堂に建物が分けられている理由

真宗興正派僧侶のかっけいです。

近頃では「墓じまい」という言葉が流行っていますね。(お坊さんの私は墓じまいという最近の造語はあまり使いたくなく、昔ながらの「廃墓(はいぼ)」という表現の方がしっくりきます)

お墓を維持するのを止める時、中に納められているお骨はどうしますか。

散骨というのも言葉として時々耳にしますが、まだまだ難度は高いでしょう。現在では許可を受けた場所や団体でないと散骨できないはずです。個人で勝手に散骨をしますと『遺骨遺棄罪』に該当する恐れがありますからね。他にも『墓地、埋葬等に関する法律』という法律もあり、なかなか個人が勝手な判断でお骨を扱うのは難しいのが現状です。

また仏教的な考え方からも家のお仏壇にいつまでもお骨を置いておくのは望ましくありません。

そこで解決策として、頼りにしている檀那寺や菩提寺の寺院、もしくは納骨堂に預けるという方法が一般的です。

例えば自坊のお寺には納骨堂(名称:偲朋堂)があり、ご門徒さんであればこの納骨堂に納められることを規約で定めています。

また京都にあるご本山興正寺にも納骨堂(名称:浄華堂)が用意されており、本山でも納めることができますし、各別院でも納骨堂が用意されており求めれば納めることができます。

このようにどこかの宗派に属しておれば、檀那寺やその上の別院・本山で用意されている納骨壇に納めることがまず考えられます。

しかし最近では特定の宗派・宗教に属していない家庭や宗派が分からなくなった家庭も増えており、その場合は民間が運営している納骨堂(納骨施設)に納めるケースも都会を中心に増えつつあります。

納骨に関する前置きが長くなりましたが、今回はお寺に納骨しに行った時の疑問から、『お寺にはなぜ本堂とは別に納骨堂が建てられているのか』について書きます。

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本堂の役割。寺院のメイン建物

本堂とはご本尊(仏様)を安置するためのお堂です。

そのためそのお寺を代表する建物ですあり、最も重要な役割を担っています。

本堂の中は内陣(ないじん)と外陣(げじん)と大まかに2つに分けられます。

本堂の納骨場所。内陣は仏様の空間

本堂のつくり

外陣とは参拝者がお参りする場所で誰もが立ち入れる空間です。一方、内陣は仏様の空間を表し僧侶が入りお勤めやお給仕をします。

仏様の空間である内陣はお浄土を表しているとも言えます。(お浄土の様子を表していることから、真宗の本堂内陣はきらびやかな金色の彩色を施していることが多いのです)

本堂とはお参りに来た人が仏様のお姿を目にし、仏法を聞き頂いていく役割があります。

納骨堂の役割。お骨を粗末にしないため

納骨堂とはお骨を納めるためのお堂です。

仏様(ご本尊・仏像)をおまつりし仏教儀礼をすることよりも、亡くなられた人の最後の姿である遺骨を粗末にならないように偲ぶための建物です。

お墓の屋内バージョンだとイメージするとわかりやすいと思います。

納骨堂とはお浄土に還られた故人をおまつりし、私たちが偲んでいく中で仏法をいただくご縁にあずかるのです。

なぜお寺には本堂と納骨堂が別にあるのか

浄土真宗の立場で説明します。

寺院にお参りしていきなりお墓が正面に見えることはありませんよね。たいてい本堂の裏や横と控えてあるはずです。

お寺は第一に仏様(ご本尊)を安置している建物、すなわち本堂が境内の正面に建てられています。

お墓または納骨堂は本堂とは別の場所にあるはずです。

それはお寺の役割とは異なっているからです。

繰り返しますが、お寺とは仏様をおまつりし仏法を聞き頂いていく場であります。まずはご本尊を安置する建物が肝心となり、そのために本堂が必要なのです。

特に真宗ではお骨を礼拝の対象としていません。お骨にご先祖の霊や魂が宿っているわけではないからです。

お寺には納骨堂という建物は本来必要でなく、仏様を安置する本堂が必要なのです。またお骨は拝むものではないので、お骨を仏様と同じ空間に納めるということは基本しないのです。

  • 仏様を安置し聞法するのは、寺院中心の本堂
  • お骨を納め弔うのは、お墓または納骨堂の役割

と明確に分けるのです。

基本的な考え方として、お寺の本堂はお骨を納める空間ではないと理解してください。

京都の浄土真宗各本山の納骨堂は寺院と離れた場所にある

例えば真宗興正派のご本山に納骨しに行ったご門徒さんがいます。するとよくある間違いとして、本山興正寺にそのまま行ってしまうケースです。

本山に納骨するといっても本山興正寺では納骨いたしません。

真宗興正派ならば、親鸞聖人のお骨が納められている霊山本廟にある納骨堂(浄華堂)に行かなければなりません。下京区ではなく1kmほど離れた東山区に行きましょうね。

本願寺派本願寺でも西本願寺に行っても駄目ですよ。納骨堂は別の場所に建てられており、親鸞聖人のお骨が納められている大谷本廟に行きましょう。

大谷派東本願寺でも同じこと。東本願寺ではなく大谷祖廟に行きましょう。仏光寺派仏光寺も親鸞聖人御廟所に行きましょう。

このように本山に納骨といっても、仏様をまつっている本山のメイン境内の本堂(阿弥陀堂・御影堂)に行くのではなく、本堂とは別に立てられた納骨場所(廟所)で納めることになります。

興正派末寺の当寺でもお骨を納めるのは本堂ではなく、その隣に建てられた納骨堂で納めます。

例外。末寺では本堂で納骨されているのはなぜか

本来ならば納骨場所と仏様を安置する場所を分けるべきです。

といってもなかなか本堂の他に納骨堂を設けるのは難しいのです。金銭的にも場所的にも。

特に末寺は本山と違い、本堂という建物で寺院境内の多くが占められており、別に納骨堂を建てるだけのスペースがありません。

そのため納骨堂が用意できないお寺は本堂の中に納骨をするための空間を設けるのです。

真宗寺院では内陣には余間と呼ばれる左右に畳の間があり、ここに納骨するスペースを設けたり、本堂の裏の通路(裏戸)などに納骨するためのスペースを設けたりします。

しかしこれらは納骨堂というよりかは、納骨壇と表現する方が相応しいと思います。納骨するためのお堂が用意できないので、納骨するための棚をしかたなく作っているのです。

例外。仏様の近くに納める須弥壇納骨

基本的に真宗ではお骨そのものは拝む対象ではないので、仏様とは別の場所に納めます。

家のお仏壇の中にお骨を納められないのはこのためです。中陰にお仏壇横にお骨を置くための棚(中陰壇)を設けるのも同じ理由です。

家のお仏壇とは本堂の内陣の様子をコンパクトに表現したものです。仏壇とは仏様を安置する場所であり仏様の世界を表した空間ですので、お骨を置くことは好ましくありません。

しかしお寺にお骨を納めるときに例外として須弥壇納骨と呼ばれる納骨方法があります。

須弥壇(しゅみだん)とは仏様がまつられている場所のことです。一般の人は祭壇(さいだん)と言いがちですが。

ご本尊は少し高い位置に安置されているでしょう。

その壇とは仏様の世界である須弥山を表していることから須弥壇と言われているのです。(お坊さんは祭壇とは言いません)

本当ならば仏様とお骨は別々の場所でそれぞれにお参りするのですが、少しでも仏様の近くの場所へ納め故人を偲びたいという遺族の思いから本堂に安置している仏様の足元、すなわち須弥壇下に納骨する場合があるのです。

似たような納骨方法として、本山では宗祖の廟(墓)の下や周りに納骨するパターンもあります。


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さいごに。お骨にお参りする時は本堂にも手を合わす

末寺の多くのお寺では、納骨堂が用意できておらず本堂内に納骨壇を設けて納骨を承っていることでしょう。

しかしいざ本山や別院などの大きな寺院・正式な寺院に行きますと、本堂とは別の場所に納骨堂や墓地が用意されています。

その理由はお寺とはご本尊をおまつりする本堂が何よりも大切であり、故人のお骨は拝む対象ではないからです。

故人を納めた墓地や納骨壇に合掌礼拝をするのは、故人のお骨を通して仏様のお浄土に思いをはせているのです。私たちは法事やお盆といった故人とのご縁があるから、手を合わすことができ、また仏教施設(お寺)にお参りする事ができるのです。

もし寺院に納めたお骨にお参りをするときは。なるべく本堂にも立ち寄ってくださいね。

本堂内の納骨壇にお参りした時も、まっすぐ納骨したスペースに行くのではなく、まず仏様の前に行き焼香合掌をして下さい。

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