香川の僧侶のかっけいです。
梅雨が明けますと、あっという間に暑い日がやってきますね。7月下旬には、30度を超える真夏日が続きます。8月にもなると、35度以上の日も続きます。
僧侶の着る黒い衣は見た目以上に熱がこもるので、読経し始めると私はあっという間に汗をかきます。するとご門徒さんが「部屋が暑くてすみません。もう少しエアコンを効かしておいたらよかったですね」と気づかってくれます。
その時によく話題になることがあります。
どうも皆さんは、お寺の本堂は夏でも涼しいというイメージを持たれているようです。特にご年配の人ほど、その傾向が強いように感じます。
ところがですね。実際には夏、お寺の本堂はかなり暑いんですよ。
お寺の本堂は皆さんが思っている以上に快適ではないことをお話します。
なぜお寺の本堂が涼しいと思われているのだろうか
「お寺の本堂が夏、涼しくて過ごしやすい。」というのは有名な話だそうです。
なのでどうしてそのような印象を持たれているのか、理由を考えてみました。その理由は「お寺の本堂は、日本的な建築方法であるから」ではないだろうか。
お寺の本堂は、日本の気候に合った建て方だと思います。
日本の気候は高温多湿という特徴があり、床を高く仕上げています。また柱と扉で構成されており、開口部が多く広く通風に優れています。(日本建築の家は冬向きではなく夏向きに造られています。)
またお寺の建物は非常に大きく、古いです。
そのため建物のいたるところに隙間ができています。台風のような強風時には土壁や扉の方からだけでなく、畳の下からも風が吹いてきます。
お寺という建物は日本的な建物であることに加え、風通しがよいため、夏でも涼しいというイメージを持っているのではないでしょうか。
なぜ本堂は暑いのか
繰り返しますが、お寺の本堂は夏、非常に暑いです。なぜ暑いのだろうか。
お寺の建物は非常に大きいです。すると天井も高くなります。すると日中の熱を多くとどめてしまうので、いくら隙間風の多い建物だからといっても、なかなか熱が引かないのです。
昔と比べて気温が高くなったのも原因だと思います。昔は今よりも少し気温が控えめだったので、開口部の広い本堂の扉を開け放ちますと、本堂内には涼しい風が流れてきたのだと思います。でも今では、30度以上が当たり前であり、温風が吹いてくる寺の本堂は涼しく感じられないのです。
お寺というのは、エアコン(冷暖房機)が設置されていないことが多いです。
お寺の建物は古く、断熱性や気密性に優れておらず、冷暖房機を設置しても暑さ寒さをコントロールしようとしても効きが悪いのです。またお寺の本堂は非常に広いため(100畳以上のこともある)、現実的に冷暖房機の設置ができないのです。
(お寺の本堂に合う冷暖房機は高性能でなければならない。また炎を灯すことが多く堂内に強風が吹いてほしくないことや、大きな音が鳴ってほしくないから)
「熱がこもりやすい建物・外気温が高く涼しい風が吹かない・エアコンが設置されていない」、これらがお寺の本堂が暑くなる理由だと思われます。
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エアコンを設置する寺も増えているが……
最近の日本の暑い夏では、これまで涼しい場所と思われていた寺でも非常に暑く、過ごしにくい環境です。
またお寺は人が大勢集まるところなので、法要時には人の熱でさらに暑く感じてしまいます。
ここ最近では、本堂にエアコン(冷暖房機)を設置しているお寺も増えつつあるように感じます。
しかしエアコンを新しくつけるのも、なかなか難しいと感じます。
先ほども説明しましたようにお寺は古い建物なので、隙間が多く、気密性も断熱性も乏しいのです。
そのためエアコンを新しく設置したお寺というのは、エアコンだけではなく、お寺の建物そのものを改修している印象です。最近では耐震面からお寺を鉄筋コンクリートに補強することがあります。そのときに合わせてエアコン・空調を設置するようです。
寺の本堂は広い空間なので、それに応じたエアコンを設置しないといけません。つまり設置費用がかかります。
お寺はどこも維持していくのが大変な状況なので、なかなか新しくエアコンを設置できないのが現状です。
新しくエアコンを設置したお寺に行くと、法要時にはかなり電力を使うようで、たびたびブレーカーが落ちるという難点もあります。また室外機の並ぶ本堂というのも見た目がよろしくないので、エアコンの設置方法は難しいのです。
2019年8月に、ポッドキャストに次の音声配信をしました。今回と同じような話「夏のお寺の暑さ」について話しました。よかったら聞いてくださいませ。