こんばんは。 真宗僧侶のかっけいです。
ご門徒さんから「お坊さんには何とお声掛けしたらよろしいのですかと」尋ねられることがあります。
正直な話、お好きな呼び方をしていただいても結構ですし、お祖父さんやお祖母さんもしくはご両親がどのように呼ばれていたのかを見ていればその通りに呼んでいただけたら幸いなのですが、どうにもお坊さんの呼び方まで相続できていないこともあります。
今回は僧侶の立場からみたお坊さんの呼ばれ方を紹介します。
香川県の田舎のお寺であることに注意してください。僧侶の呼び名には宗派だけでなく地域色もありますので。
今までにどんな呼ばれ方をしたのか。
最初に私が今までにどのような呼ばれ方をしたのかを紹介します。
ちなみに私は30歳未満の真宗お坊さんです。住職ではありません。
- お坊さん
- お寺さん
- おじゅっさん
- 若坊さん・若さん
- 若院主さん
- お寺の跡取りさん
- お前
- あんた
- 〇〇寺さん:円龍寺さん
- 後住さん
- 法名で:かっけいさん
さて色々挙げてみました。
どれを使っていただいても構いません。
なぜどれを使っても大丈夫なのかと言いますと、意味が通じるからです。
ただし人をお声掛けするときには、丁寧な呼び方と相応しくな呼び方があります。
以下どのような呼び方がよろしいのか説明します。
ちなみにお寺の住職の場合は、
- ご院主さん
- ご院家さん
- ご住職さん
先代住職のことを
- 前住さん
- 先代さん
と呼ばれることもあります。
お寺の跡取りにはどんな呼び方が相応しい?
上で挙げたようにお坊さんにはたくさんの呼び方があります。
「お坊さん・お寺さん・若坊さん・若さん・若院主さん・お寺の跡取りさん・お前・あんた・お寺の名名称で・後住さん・法名で」
そしてこれらはどれも意味が相手に通じます。
大切なのは相手に不快な思いをさせないことです。
ですから「お前やあんた」という言葉はよろしくないですね。
当り障りがないのは「お坊さん・お寺さん」がいいですね。これは宗派に関わらず無難に使えます。
少し丁寧にお声掛けするなら「若坊(わかぼう)さん・若さん・若院主(わかいんじゅ)さん・若住職さん」があります。
私の感覚では若院主はムズムズしたこそばゆい感じなのですが、院主の若い方って少し考えると意味不明なのですがニュアンスは通用しますからねOKでしょう。
お手紙での呼称は「○○寺様・後住(ごじゅう)様」が改まった丁寧だと感じます。
特に後住(ごじゅう)とは次の代の御住職を意味しており、『私はあなたが次のこのお寺の代表者様なのですね』といったニュアンスになります。
ちなみにお寺さん同士では「○○寺さん」とお寺の名称で呼び合ったり、法名で呼び合ったりします。
ここ田舎では「新発意(しんぼつい)」という呼び方は聞いたことがありません。この言葉は辞書に載っており、新しく発心(ほっしん)を起こした者に使われることで真宗ではお寺の跡取り使われることもあるそうです。しかし私は使っている人を知りません。
まとめ
- 相応しくない:お前・あんた
- 無難:お坊さん・お寺さん・おじゅっさん
- 少し丁寧:若坊さん・若さん・若院主さん・若住職さん
- 手紙向け:○○寺様・後住(ごじゅう)様
お寺の住職にはどんな呼び方?
さてお寺の住職も無難な呼び方は、「お坊さん・お寺さん」がありますね。
正直これで十分なのですがもっと丁寧な呼び方をしたい場合があります。
その場合に使うのが「あなたがお寺の代表者として捉えていますよ」ということをアピールする言葉です。
お寺にはお堂の他に僧侶が生活するための建物の一部に院があります。一般家庭での家と似たようなものです。そこの主ということで「ご院家(いんげ)様」と呼びます。
しかし私はこの呼び方をする人をほとんど知りません。
お寺には○○寺の寺号だけでなく、山号院号もあります。その院を代表している人物ということで「ご院主(いんじゅ)」がよく使われます。
院に住むということで「ご院住(いんじゅう)」と呼ぶ人もいます。こちらは院家よりかは使う人が多い印象です。
やっぱり無難なのが役職名である「ご住職(じゅうしょく)様」がいいですね。
正直、浄土真宗では宗教法人の代表者を示す「住職」が一番丁寧であり使いやすいと思います。
私が住んでいる地域では8割がたこの呼び方だと感じます。
住職も手紙の最後は「○○寺住職」と表すことがほとんどです。
まとめ
- 無難でありよく使う:ご住職様
- たまに使われる:ご院主様
- 滅多に使われない:ご院家様
正直どれで呼ばれても丁寧ですので自由に使ってください。
お寺の前の住職の場合は。
意外と前の住職の呼び方に悩む人が多いそうです。
主に二パターンあります。
前の住職であるということで、「前住(ぜんじゅう)様」と呼びます。
後を継ぐ僧侶を「後住(ごじゅう)」ですのでその反対の呼び方です。
この呼び方が個人的には丁寧な印象です。
またお寺というのは一代で出来上がった建物ではおらず、代々その寺院に生活しているお坊さんが守っています。ですので前の代のご住職ということで、「先代(せんだい)様」と呼ばれる方もいます。
まとめと補足
- 丁寧なニュアンスだと「前住様」
- 滅多に使われないが畏まった印象だと「先代様」
なかなか代が変わった後の人物をご門徒さんから話題に出すことが少ないので、前住も先代も使われにくく、ここら辺では「前の院主さんはいかがですか」と尋ねられるケースが多いですね。
前の院主や前の住職で意味が通じるのでこの呼び方でも何も問題ありません。
なぜこんなに呼び方が複数あるのか。
実はお坊さんの呼び方ってそんなに種類がないんですよね。
例えば私は真宗興正派の僧侶です。すると興正派の法規というのが当然存在しています。
すると一般末寺のお寺の人間には「僧侶」の呼び方しか存在しないんですね。興正派の僧侶の定義をかいつまみますと、興正派の教義・宗風を守り得度の認証を受け、僧侶台帳に記載されることです。
そして真宗興正派ではお寺の人間は「僧侶」ただ一つです。これ以外にルールがありません。
後は役職名だけです。
例えば「住職」というのは、宗教法人である寺院の代表役員を表す役職名です。ですからご門徒さんの代表者「総代・世話人」も役員(役職)名です。
ご住職様は宗教法人上の代表者の人物ですよと言っているのと同じです。
他にも住職の妻を「坊守(ぼうもり)」と呼ばれるのもルールにあり、坊守名簿に記載された人物のみが該当です。(まあ、難しく考えずに「お寺の奥さん=坊守」でいいですが)
そしてお寺の人間であり、持続名簿に登録されている人物が「寺族(じぞく)」とされています。
ですから上では紹介しなかったのですが、お寺にお参りをして初めて見る顔の人には「このお寺のご寺族様ですか」と尋ねることもできます。
話を戻しますと、法規では「僧侶」の名称しかありません。そして登録名称として「住職・坊守・寺族」があります。
「お坊さん・お寺さん・ご住職様・ご院家様・若坊さん」などと呼ばれているのは他の宗派の考え方が融合されたり、各地域ごとで独自に展開されてきた呼び名になります。
ここら辺では聞かないですが、他の地域ではお坊さんのことを「おっさん・ぼんさん・ぼんぼん」と呼んでいたのを耳にしたことがあります。個人的には違和感しか感じませんが。
まとめ
- お坊さんの呼び名は「僧侶」しかない。
- 後は登録名のみ。「住職・坊守・寺族」
- 呼び方は各地域で独自で展開されてきたもの。
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さいごに。結局はどう呼べばいいのか。
僧侶の呼び方は多種多様です。そして正解はありません。
無難なのはお坊さんやお寺さんです。
インターネット上では、ご住職はご院家さん、奥さんは坊守さん、息子さん(未成年)は新発意さん、息子さん(成人)は若院さんと紹介しているところもあります。
間違ってはいないですが、私の住んでいる所では坊守以外は滅多に使われていない呼び名です。
最終的にはお祖父さんお祖母さん・ご両親がどのように呼んでいたのかを注意しておくことですし、わからなくなった場合は地元の人や、頼っている檀那寺の僧侶や世話人に相談してみれば快く答えてくれるはずです。
何が丁寧であり、何が一般的なのかは地域や宗派によって異なります。ネット上の答えは参考程度にしておきましょうね。