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第276回目のラジオ配信。「王舎城(おうしゃじょう)の悲劇」がテーマです。(BGM:音楽素材MusMus)
かっけいの円龍寺ラジオ
これは香川県丸亀にいるお坊さん、私かっけいの音声配信です。
お経文には必ず聞き手、お釈迦様のお話を聞いている人がいます。お釈迦様の独り言じゃないんですね。
ある人がお釈迦様に悩み事・困っていることを相談し、それに応じてお釈迦様はその悩み苦しみを解決する方法をその人に対して話していきます。
お経文はその記録なんですね。
仏さまの教えが説かれる前に、どこで誰がどんな悩みを持ち、お釈迦様に救いを求めたのかがお経に書かれています。
それで今回のお話は王舎城の悲劇についてです。
浄土真宗とかが大切にしているお経、仏説観無量寿経に関係します。
今から2500年ほど昔、インドの王舎城で実際にあった悲しい出来事です。
この王舎城の悲劇はとても有名な出来事で、仏説観無量寿経だけでなく、他のお経文や伝承でも今に伝わっています。
観無量寿経に書かれていることを中心に、王舎城で起こった悲しい出来事、お釈迦様が観無量寿経のお話をするに至ったかを話しますね。
さてお話の舞台は王舎城です。
当時のインドは大小たくさんの国がありました。
王舎城があったのはマガダ国で、当時もっとも強大な国でした。王舎城はそのマガダ国でいわゆる大都会の場所でした。
お釈迦様はインド各地でお話をされているんですが、このマガダ国王舎城にある耆闍崛山でも多くの話しをしていました。
おそらく都に近く、かつ人もたくさん集まることができる便利な場所だったんでしょうね。
お釈迦さまは誰に対してもお話をしましたよ。
王さまにも説法を求められたらしていました。
さて王舎城の悲劇は王さまである頻婆娑羅王と、その妃韋提希夫人、そして頻婆娑羅と韋提希の息子、阿闍世が主な登場人物です。
ビンバシャラと韋提希はマガダ国をよく治めていましたが、二人の間には長くお子さんがいませんでした。
世継ぎがいない不安からか、占い師に占ってもらいます。
すると、占い師いわく、少し離れた山に仙人がいます。この人が亡くなると、その仙人があなたの子供として生れてくると予言しました。
それを聞いたビンバシャラと韋提希は子供を授かることができると安心するかと思いきやそうではありません。
次はいつ子供ができるか不安になりました。
それで山にいる仙人にいつまで生きるのかと尋ねると、まだ数年は生きられると思うと答えました。
しかし王や妃からすると数年も待てないわけです。すぐに世継ぎがほしいわけです。
それで仙人に早く死んでくれないかと脅迫すると、仙人は拒否します。それで仙人は殺されるわけです。
すると仙人は殺される時に、もし王の子供に生まれたら必ずあなたを殺すと言ったそうです。
しばらくして、お妃の韋提希は身ごもります。
しかしどうしても仙人の言い残した言葉が心に残り、ビンバシャラと韋提希は再び占いをさせます。
すると占い師はこの子供は王を殺す人物になると言うわけです。
ビンバシャラと韋提希は困りました。
世継ぎはほしいけども、この子供が自分たちを殺す人になるかもしれないと恐れたわけです。
しかし我が子を手にかけて殺すわけにはいきません。
それで恐ろしいことを考えます。
出産する時に、高いところから産み落とそうとするんですね。剣を上に向けて剣山に産み落とそうとしたとも伝わります。
生まれた子供は怪我こそしたけれど命は落としませんでした。
死んでほしいと一度は思ったけれども、やはり我が子を殺すことはできずに、二人は愛情を注いで育てます。
そして生れた子供アジャセは立派な王太子となります。
大きくなった王太子アジャセはあるとき、提婆達多という人物に自身の生まれの秘密を聞かされます。
提婆達多はお釈迦様のいとこであり野心家であったそうです。お釈迦様に代わってリーダーになりたかったそうです。
それでアジャセをそそのかして、王を殺しこの国を治めるように忠告するわけです。
もちろんアジャセは反対するんですが、自身の生まれの秘密を明かされ、証拠はあなたのその体の傷だと言われます。それを聞いてアジャセは実は両親から愛されていなかったと思い込んでしまいます。
王太子ですから、家臣たちも反対できなかったんでしょう。
アジャセは父ビンバシャラ王を牢獄に閉じ込めてしまいます。
今も王舎城の跡地には、おそらくこれがその牢獄だろうという跡が残っているそうです。
父を手にかけて殺すことはできないが、代わりに食べ物を与えずに飢え死にさせようとしたわけです。
お妃の韋提希は王が死なないように頑張りました。
体をきれいに洗い、麦をはちみつ等で練り、それを体に貼り付け、また瓔珞の首飾りにはブドウの飲み物を入れます。
それで手ぶらで王に会いに行きます。
見張り番はいますが、この国のお妃です。止めることはできませんよね。
ビンバシャラ王は韋提希がこっそりと持ってきた食べ物飲み物を口にして生きます。
またビンバシャラはお釈迦様のいる耆闍崛山の方に向いて、合掌し敬い、言います。
目連尊者から八戒を授けていただきたいと。
目連はお釈迦様の仏弟子で、ビンバシャラとも親しかったそうです。
それで牢に閉じ込められているビンバシャラは私のために心身を清らかに保つ戒律を授けてほしいと願います。
目連はすぐに王の元にいき八戒を授け、またお釈迦様は富楼那も送ります。
富楼那はお釈迦様の教団の中で特に説法、お話をするのに長けていた人だったそうです。
目連と富楼那がたびたびやってきてくれたことで、韋提希の届けてくれる食べ物と合わせて、ビンバシャラは三七の間、身も心も満たされて、とても穏やかに過ごすことができました。
さてアジャセは三七の間、だいたい一ヶ月もしたらもう王は死んだだろうと、門番に聞きます。
すると王はお顔が優れたままとのことです。
門番からは、王の奥様であり、王太子の母である韋提希さまを止めることはできません。また仏弟子は飛んできているので止められません。と言い訳されます。
その話を聞いたアジャセは怒ります。
アジャセは剣をとり、韋提希を斬り殺そうとします。
そのとき、二人の大臣が動きます。
月光大臣とぎば大臣です。
大きな国ですから大臣はたくさんいますが、この二人は特に優れた人物だったとされます。
月光とぎばは王さまに言います。
これまでの現在に至るまで、王位が欲しいからと父を殺した悪い王はたくさんいます。
しかし母を殺した人は一人もいません。
もし今、あなたが母を殺してしまえば、あなたの身分を汚してしまいます。
これは「栴陀羅(せんだら)」です。奴隷以下の人です。と
もしも母の韋提希を殺してしまえば、もうこの二人はアジャセを敬い支えることができなくなると、最後の忠告をしたんですね。
父を殺したひどい王はいるが、母だけは殺してはならないと。
その話しを聞き、アジャセは剣をすてます。
代わりにアジャセは母韋提希を王宮の奥に閉じ込めます。いわゆる軟禁・幽閉ですね。
韋提希はビンバシャラに会うこともできなくなり、また自身の子供からも殺されそうになりました。
それで悲しみやつれてしまいます。
韋提希は耆闍崛山の方を向き言います。
昔よく阿難尊者が慰問に来てくれましたよね。
私はお釈迦様にお会いすることはできないので、目連と阿難を遣わしてほしいと。
この願いを涙して遠くにいるお釈迦様に向かって敬って言いました。
この時、お釈迦様は耆闍崛山にて法華経をお話していたらしいです。
その法華経の話しを中断して、目連と阿難とともに韋提希の元に現れます。
私は法華経の内容を知らないんですが、お釈迦様が中座したので、内容・構成が途中から変わるらしいですね。
さてそれで耆闍崛山でお話していたお釈迦様が目連と阿難と共に、閉じ込められている韋提希の前に現れます。
お釈迦様の姿を見た韋提希は首飾りをすてて、身を投げつけて、大泣きしてお釈迦様に文句を言います。
私は何にも悪いことをしていない。何もしていない。なのにどうしてこんな悪い子供ができたのだろうか?それに息子アジャセをそそのかしたのは、あなたの親戚ではありませんか?
泣きわめき文句を言い放った韋提希は、お釈迦様に言います。私のために、憂いや悲しみのない世界を教えてほしいと。
この世界は濁った悪い世界、地獄のような餓鬼のような畜生のようなそういった者たちがあふれている世界ではない所がいいと。
韋提希から救いを求められたお釈迦様はあるゆる仏さまの浄土の世界を韋提希に見せます。
するとその中から韋提希は阿弥陀仏の極楽世界に生れたい、私に教えてほしいと願います。
この韋提希からの頼みを受け、お釈迦様は韋提希に無量寿仏・阿弥陀仏の世界を観察する(ただしく見る)話しを説いていきます。
これが王舎城で起こった悲しい出来事です。
観無量寿経をベースに話をしたので、テンポが悪かったですが、どんな事件だったかなんとなくわかりましたかね。
王舎城の悲劇は、占いを信じたことで、山で修行をしていた仙人を殺したことから王と妃が疑心・不安になったことから始まります。
父や母は子を愛しすくすくと育てましたが、すれちがい、子は父や母を殺めようとしてしまいます。
観無量寿経には書かれてませんが、ビンバシャラ王は結局亡くなったそうです。アジャセは取り返しのつかないことをしてしまったと嘆き苦しみます。
そしてアジャセ自身もお釈迦様に苦しみを伝え、すくわれる方法を求め、自身も仏法に帰依するようになりました。